「兵士と一緒に戦争を“体験”する映画」、サム・メンデス監督が“全編ワンカット”の『1917 命をかけた伝令』を語る

「兵士と一緒に戦争を“体験”する映画」、サム・メンデス監督が“全編ワンカット”の『1917 命をかけた伝令』を語る

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第一次大戦中の1971年、イギリス軍のふたりの若き兵士は1600名の同胞を救うための伝言を託される。だが、それを次の日の夜明けまでに届けるためには敵陣を突破しなくてはいけなかった――。

『1917 命をかけた伝令』は、今年のアカデミー賞で作品賞・監督賞をはじめ10部門にノミネートされ、撮影賞・録音賞・視覚効果賞に輝いた、今最もホットな作品だ。

メガホンを取ったのは『007 スカイフォール』のサム・メンデス。彼が選んだ撮影方法は前代未聞の全編ワンカット映像。つまり本作は、流麗な“撮影”と、ワンカットに見せるための“視覚効果”、そして観客を、あたかも戦場にいるかのように錯覚させる臨場感いっぱいの“録音”、それらが相まって生まれた“体験する戦争映画”なのだ。

「第一次大戦について知らない人もたくさんいるだろう。が、そういう知識は何も必要じゃない。この映画は没入できるように作られているから、観終わったときには、まさにふたりの兵士たちと一緒に戦争を“体験”したかのように感じられるはずだ。他の映画ならば戦争について“知る”が、本作の場合は“体験する”。私がこだわったのはその点なんだ」

サム・メンデスが戦争映画を手がけるのはこれで2本目。最初の『ジャーヘッド』(05)では湾岸戦争を描きつつ、戦闘シーンもなく敵の姿も見せないという異色っぷりだった。考えてみれば『スカイフォール』も、007シリーズの中では異彩を放っている。

「きっと私は、そのジャンルの中で同じような表現を繰り返したくはないんだろうね(笑)。ジャンル全体に自分が貢献したいから、常に新しいアプローチを試したいと考えている。それによってそのジャンルが活性化することがうれしいんだよ」

その試みに大きく貢献したのは『ジャーヘッド』からのつきあいになる名カメラマン、ロジャー・ディーキンス。ワンカット映像が実現したのも、彼の才能が大きくものを言っている。本作で2度目のオスカーに輝いたのも当然だ。

「私がロジャーに頼んだのは、カメラを3人目のキャラクターにすることだった。ふたりの兵士のあとを常に追いかけていき、決して邪魔しない存在。もし、カメラをブンブン振り回したりしたら、それこそストーリーや兵士たちの邪魔になっただろう。観客にはワンカットの映像であることも忘れて、彼らの旅に同行してもらうことが私たちの目的だ。ロジャーは見事、そういう映像にしてくれたよ」

その危険だらけの旅の途中で出会い、ふたりの新兵を助けるのはベテラン兵たち。彼らのひとときのふれあいが物語をより豊かにしている。しかも、ベテランを演じているのは実際にベテランのコリン・ファースやベネディクト・カンバーバッチら、日本でも人気の高い英国男優たちだ。

「私は自分の直感を信じる方なのかもしれない(笑)。というのも主人公を演じるジョージ(・マッケイ)とディーン(=チャールズ・チャップマン)はオーディションでひと目見たときにピンときて決めたんだ。そして、ベテランたちの配置もやっぱり直感だった。コリン(・ファース)だけは脚本を当て書きしていたけど、あとのマーク・ストロングやベネディクト、アンドリュー・スコットたちは直感だよ。撮影していて、我ながらなかなか上手いキャスティングだと思ったくらい、気に入っている(笑)」

撮影方法や映像が取りざたされる映画だが、実はキャスティングも絶妙。彼らが織り成すドラマも感動的なのだ。

「この物語は私の祖父から聞いた話をベースにしている。祖父は第一次大戦に従軍し伝令係を務めていたんだ。その話には人間の物語があり、体験があり、兄弟や友人、戦友に対する想いがあった。そして、故郷に想いを馳せる切なさも、だ。10歳の頃にその話を聞いた私は、映画監督の道を選んだときから、いつか絶対映画化すると決めていた。この物語を是非とも語りたかったんだ」

ちなみに今回のアカデミー賞ではメンデス自身、オリジナル脚本賞にもノミネートされていた。映像だけではなく、物語も美しいということだ。

取材・文:渡辺麻紀

『1917 命をかけた伝令』
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