巨大ハンバーガーチェーン創業者が追う“真の成功”とは? 監督が語る映画『ファウンダー』

巨大ハンバーガーチェーン創業者が追う“真の成功”とは? 監督が語る映画『ファウンダー』

マイケル・キートン(写真右)とジョン・リー・ハンコック監督

本作の主人公レイは、映画の冒頭、ミキサーのセールスマンとしてスクリーンに登場する。アメリカの中西部を自動車でまわりながら、ミキサーを販売しているレイは、自分のオフィスもあり、自宅には優しい妻もいて、決して悪くはない日々を送っているが、彼はいつも自分はもっと成功できる。自分はまだまだ可能性があると信じている。ハンコック監督は「映画の序盤では観客に“レイの応援団”になってほしかった」という。「レイはとても勤勉で、今までそこそこの成功を収めてはきたけど、自分はもっと大きいことをするべき人間だと思い、より大きな成功のチャンスを伺っているんだ。とにかく勤勉だし、それほど良い目にもあっていない男だしね」

ところがある日、レイは1度に8台ものミキサーを発注した小さなドライブ・イン・レストランがあると報告を受け、実際に店まで足を運んで、ディック&マックのマクドナルド兄弟に出会う。彼らが営む小さなハンバーガー店は、合理的なシステムによって運営されていて、通常のレストランであれば注文しても延々と待たされるのに、ここではわずか30秒ほどでハンバーガーが出てくる。この仕組みに衝撃を受けたレイは、マクドナルド兄弟に店をフランチャイズ化することを提案。品質を重視するため渋る兄弟を説得したレイは、怒涛の勢いで、ビジネスを拡大していく。「レイが兄弟に出会ってチャンスを掴みかけた辺りでは、観客に“レイの共犯者”の気分になってほしかった。レイは、マクドナルド兄弟と違って発案者ではないかもしれないが、大きなビジョンや計画を思い描けることは才能のひとつで、彼なくしては、マクドナルドは大きくならなかったと思うよ」

監督が語る通り、レイは壮大な計画を次々にブチあげてはビジネスを拡大し、あのMの文字をかたどったロゴマーク“ゴールデン・アーチ”を広めていく。しかし、何よりも品質を重視する兄弟と交わした契約は、いつしかレイにとって邪魔な存在になっていき、彼は自身の野望を達成するため、“創業者”としてマクドナルド兄弟と対立するようになる。「映画を観ていくにしがたって、観客は次第に変化して“道義的にどうなの?”って思ったり、創業者だという“ウソ”が作り出されていく過程を観ることになるんだ」

この話だけ聞くと、レイは強欲で、資本主義の権化のように思えるし、実際、その側面があることは否定できない。しかし、ハンコック監督はレイの“底知れぬ欲望”をただ批判するのではなく、これまでの監督作と同様に“成功者の隠された欲望や哀しみ”を描きだそうとする。ハンコック監督の作品に登場する人物はいつも、“多くの人が考える成功”と“本人が幸福だと思う条件”がズレている。『しあわせの隠れ場所』の主人公はアメフトの世界で圧倒的な成功をおさめるが、彼が本当に求めていたのは自分の決断を尊重し、自身の存在を受け入れてくれる存在だった。『ウォルト・ディズニーの約束』に登場するパメラ・L・トラヴァースは、作家として大成功しているのに、自身の父親との関係や過去を幸福な記憶に塗り替えたいという想いが消えず、その想いが『メアリー・ポピンズ』に反映されていたことが明かされる。

ハンコック監督は「なぜだかはわからないけど、私は幸せを追求する人々や物語に惹かれるし、“これが自分を幸せにしてくれるに違いないと思っていたのに、必ずしもそうではなかった”という物語に惹かれる」という。「それから、人がものすごく努力する時に、その奥底に何があるのか掘り下げたい気持ちがあるんだと思う。レイはお金をたくさん稼ぎたいと思っていたのではなくて、ビジネスで何かを達成すれば自分は偉大な男になれると考えていたんじゃないかな。彼は成功者になりたかったのではなく、人として何かを成し遂げたいという想いがあるんだ」

圧倒的な成功を収め、現在では巨大企業の“創業者”として認知されているレイ・クロック。しかし、ハンコック監督は「彼は自身が創業者としてはニセモノであることをよくわかっていた」という。では、彼の本当の幸福は、彼がくぐる“幸せのアーチ”はどこにあるのか? その点に注目して映画を観ると、より深く作品が楽しめるはずだ。

『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』

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