おとな向け映画ガイド 今週も、これは、という3本を選りすぐってオススメ。

おとな向け映画ガイド

今週も、これは、という3本を選りすぐってオススメ。

ぴあ編集部 坂口英明
20/7/05(日)

イラストレーション:高松啓二

今週末に公開の新作は17本(ライブビューイング、映画祭企画を除く)。うち全国100スクリーン以上で拡大公開される作品が『私がモテてどうすんだ』『透明人間』の2本、ミニシアター系の作品が15本です。その中から、これは、という3本をご紹介します。

『バルーン 奇蹟の脱出飛行』



成功するとわかっていてもドキドキする、スリリングなサスペンスタッチのドラマです。冷戦下に東ドイツから西ドイツへ、小さな子どももいるふたつの家族が、なんと手作りの気球に乗って国境を越えるという、破天荒な、でも実際にあった脱出行の映画化です。

1979年、ほんの40年前のできごとです。ベルリンの壁崩壊はその10年後。捕まったら銃殺覚悟の亡命が、まだその頃あったのです。主人公のひとりは、長髪でベルボトムのジーンズを履いています。東ドイツでも『チャーリーズ・エンジェル』が隠れた人気で、話題にでてきます。インターネットの時代ではありませんが、テレビ電波は越境していたわけで、西側の生活を垣間見ることができたはず。それと比べるとかなり過酷な、息詰まる日常があったのでしょう。

気球の故障で一度失敗。秘密警察に追われる中、家族のひとりが兵役を6週間後に控えている、そういった差し迫った状況での再チャレンジ。高さ32メートル、面積1,245平方メールもの気球用布地の調達と縫製、近所の目をしのぶ密かな準備、10代の子どもたちは秘密を守れるか……。いくつものハードルを劇的に飛び越える姿は圧巻です。

この事件は1982年にディズニーが『気球の8人』として一度映画化。36年の時を経て、本国ドイツで作られました。今年2020年は統一から丁度20年です。

『透明人間』



日本統治下の朝鮮半島。日本語を強要され、名前さえ日本式に変えさせられた時代に、母国語を守ろうと、”マルモイ(ことばあつめ)”を続け、辞書を作ろうとした人たちがいた、という史実をもとにできた韓国映画です。

物語は、辞書作りのリーダーで小さな出版社を営むジョンファン(ユン・ゲサン)と、街で彼のバッグをひったくろうとしたことからつながり、やがて同士として活躍するお調子者のパンス(ユ・ヘジン)を軸に進みます。パンスは学校に通ったことがなく、読み書きを知らない、逃げ足とムショ仲間の人脈は強く、喜怒哀楽豊かな、愛すべきキャラクターです。演じているユ・ヘジンは、韓国映画の庶民派スター。日本でいうと、『男はつらいよ』以前の渥美清さんのような感じ。

40歳をすぎた彼が、辞書製作に関わりながら、文字を覚えていきます。ハングルを読めるようになると、街の看板もわくわくする楽しみに変わります。そして、初めて小説を読んで涙し、子供たちに手紙を書くのです。映画のなかでは、いくつかの韓国のことばの語源が象徴的に使われます。「言葉は民族の精神を持った器」、抑圧された時代のなかで、ことばが市井の人々をひとつにまとめていく、感動のドラマです。

『タクシー運転手 約束は海を越えて』の脚本を担当したオム・ユナの監督作品。出演のユ・ヘジンや同作のプロデューサーが名を連ねています。

首都圏は、7/10(金)からシネマート新宿他で公開。中部は、7/10(金)からイオンシネマ鈴鹿、7/25(土)から名古屋シネマテークで公開。関西は、7/10(金)からシネマート心斎橋他で公開。

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