記録尽くめの川崎フロンターレはどこまで行く? 記憶にも残る特別な明治安田J1がいよいよ最終節

いよいよ、『2020明治安田生命J1リーグ』が最終節を迎えようとしている。今週末、コロナ禍の特別なシーズンが終わろうとしているのだ。

シャーレの行方は決している。ご存じのように11月25日、すでに川崎フロンターレがJ1史上最速優勝を決めている。『天皇杯』出場権を手にする2位も12月16日にガンバ大阪で確定した。新型コロナウイルスによって公平性が担保できないため、J2降格はない。ヒリヒリした緊張感がスタジアムを包むJ1残留の崖っぷちの戦いはない。言わば今季の『明治安田J1』最終戦は無風である。

上田綺世(鹿島アントラーズ)(c)J.LEAGUE

無風だが、12月19日(土)の話題は尽きない。勝点60の3位・名古屋グランパスは8位に位置するサンフレッチェ広島と豊田スタジアムで対峙し、勝点58の5位・鹿島アントラーズは勝点59の4位・セレッソ大阪を茨城県立カシマサッカースタジアムで迎え撃つ。『ACL 2021』の出場枠は3位まで。順当に川崎F、G大阪の『天皇杯』優勝、逆にJ1相当ではないクラブがジャイアントキリングを起こせば、アジアへの道は4位まで広がる。名古屋とC大阪か、名古屋と鹿島か、はたまた『明治安田J1』3位と『明治安田J2』優勝か。答えは早くて12月27日(日)、遅くとも元日に出る。

味の素スタジアムでは『ACL 2020』ラウンド16のFC東京とベスト4のヴィッセル神戸が激突し、ニッパツ三ツ沢球技場では横浜FCと横浜F・マリノスの横浜ダービーが実現する。ダービーと言えば、駅前不動産スタジアムではサガン鳥栖×大分トリニータの九州ダービーがキックオフ。

西澤健太(清水エスパルス)(c)J.LEAGUE

J2降格がないとは言え、17位、ましてや最下位に沈むのはご免である。ユアテックスタジアム仙台で勝点27の16位・ベガルタ仙台と勝点26の17位・湘南ベルマーレが直接対決、勝点25の18位・清水エスパルスは『天皇杯』を睨むG大阪の本拠地パナソニック スタジアム 吹田へ乗り込む。埼玉スタジアム2002で顔を合わせる浦和レッズと北海道コンサドーレ札幌もシーズン最後の戦いを白星で締め括ろうとしている。

そして、三協フロンテア柏スタジアムで行われる柏レイソル×川崎フロンターレである。川崎Fがどこまで記録を伸ばすのかに注目される。

G大阪を5−0で粉砕し、2年ぶり3度目の『明治安田J1』制覇を果たした川崎Fだが、第31節は清水に2−2、第32節も鳥栖に1−1と下位を相手に足踏みを余儀なくされた。だが、このままズルズルと後退しないのは、さすがチャンピオン。12月16日・等々力陸上競技場でのホーム最終戦で本来の姿を取り戻した。

興梠慎三(浦和レッズ)(c)J.LEAGUE

11分にPKを興梠慎三に決められ浦和レッズに先制を許すも、試合は完全な川崎Fペース。ボールを握り、隙を伺い、ゴールに迫る。相手ボールになってもすぐさま奪い返し、攻撃を作り直す。

決定機も次々と生まれる。31分にMF中村憲剛のコーナーキック(CK)をCBジェジエウがヘッドで叩き込むもポストに嫌われ、43分にはウイング三苫薫のシュートをGK西川周作がはじき、FW小林悠が詰め同点と思われたが、エースのシュートは倒れ込んだCB岩波拓也に当たってしまう。

前半45分で川崎Fのシュートは打ちも打ったり14本、対する浦和はPKの1本のみ。川崎Fはゲームを支配しながら0−1で折り返した。

守田英正(川崎フロンターレ)(c)J.LEAGUE

後半に入っても攻める川崎F、耐える浦和の構図は変わらない。そんな中、ついに川崎Fが追い付く。53分、アンカーの守田英正が見事にコントロールされたミドルシュート一閃。

中村憲剛(川崎フロンターレ)(c)J.LEAGUE

王者はここから一気に畳み掛ける。前節、決定機でヘディングシュートを外し悔しい思いをした三笘が59分、右SB山根視来のクロスをきっちり頭で合わせて逆転。61分には流れるようなパスワークから中村のノールッククロスに小林が反応、走り込みながら右ボレーをズバリ。試合後、鬼木達監督が「分かり合っているふたりでしかなかなかできない得点。長年やっている研ぎ澄まされた部分が出た。クロスを上げた憲剛もそうだし、あそこのタイミングで入っていった悠もそう。試合の中で互いに感じてやれたのは素晴らしいこと」と絶賛する一撃だった。

三笘薫(川崎フロンターレ)(c)J.LEAGUE

ベテランだけではない。若きスコアラーたちのコメントも、今季の川崎Fの強さを雄弁に語っていた。3年目にしてうれしいプロ初ゴールを決めた守田が「ずっと取りたかったけど、なかなか取れないで来てしまった。やっと数字でチームに貢献できた」と安堵の表情を見せれば、J1新人最多得点記録に並ぶ13ゴールをマークした三笘も「前戦(のヘディングシュート)では上へ行ってしまったので、当てるところを気を付けた」と前戦の反省を口にした。これまでチームになくてはならない活躍をしているふたりであっても、活躍し続けなければポジションを奪われる危機感を抱えているのだ。だからこそ、川崎Fは最多25勝を挙げ、最多勝点80をマークし、最多85ゴールを叩き出してなお、上を目指すのだ。

最多記録を更新した直後の指揮官は「優勝したあとに記録を作ろうと選手に言ってきた中、超えられてよかった。選手たちがもう一度記録というものにチャレンジしてくれたことをうれしく思う。ただ、まだもう1試合あるので、もっといい記録を作りたい」とキッパリ。

もちろん、ホームの柏も勝点3を譲るつもりはさらさらない。27ゴールと得点ランキングを独走するオルンガがチームを勝利へ導くシュートを虎視眈々と狙う。1月4日(火)には国立競技場での『JリーグYBCルヴァンカップ』決勝が控える。FC東京との決勝を前に、王者相手であっても下手な試合はできない。

7月4日、無観客で再開した2020明治安田生命J1リーグ(c)J.LEAGUE

コロナ禍の特別なシーズンは、サッカーに関わる全ての人々の尽力なくして、この週末を迎えられなかったのではないだろうか。選手・監督・コーチとその家族はもちろん、Jリーグやクラブ、レフェリーやスタジアム関係者、ファン・サポーターにボランティア、スポンサー、マスコミ、ホームタウンの地方自治体とその住民などなど、それぞれが試行錯誤に紆余曲折、トライ&エラーを繰り返しながらも、初めて尽くしの特別なシーズンを完走しようとしているのだ。言わば、サッカー界の勝利である。12月19日(土)はそれぞれが勝利の味を噛み締めつつ、『明治安田J1リーグ』を見届けてはいかがだろうか?

文:碧山緒里摩(ぴあ)

チケット情報
https://t.pia.jp/pia/events/jleague2020/

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