綾野剛の“パンクな部分”「人間という存在がそもそもパンクなのではないか」

綾野剛の“パンクな部分”「人間という存在がそもそもパンクなのではないか」

映画「パンク侍、斬られて候」で主演を務める綾野剛とヒロイン役の北川景子

■ 映像化不可能と言われた作品がついに公開!

芥川賞作家・町田康の同名小説を実写化した映画「パンク侍、斬られて候」(6月30日[土]公開)は、まさにパンクでアナーキーな世界観が楽しい前代未聞のエンターテインメント。綾野剛扮(ふん)する主人公の掛十之進(かけ・じゅうのしん)をはじめ、個性が豊か過ぎるハチャメチャなキャラクターたちによる“世紀のハッタリ合戦”が展開される。宮藤官九郎が脚本を担当し、「狂い咲きサンダーロード」などで知られる石井岳龍監督がメガホンを取った壮絶なパンクワールドは、見る者の五感を激しく刺激すること間違いなし!

超人的刺客でプータローという超テキトーな男を見事に体現した綾野剛と、ミステリアスな美女・ろん役で圧倒的な存在感を示した北川景子のインタビューをお届け! 石井組でパンクな世界にどっぷりつかった2人が、破壊力満点の作品の魅力と、意外と知られていない自身のアナーキーな一面について語ってくれた。

――とてもぶっ飛んだ、本当にパンクな世界観が楽しい作品ですけど、最初に脚本を読んだ時の印象は?

綾野:町田康さんの映像化が不可能だと言われていた原作に、宮藤官九郎さんのエッセンスが入ったことにより難題な部分と、よりエンターテインメント性が増したところがあり、非常に楽しく読ませていただきました。ただ、どんな映画になるのか分からなかったので、頭の中で出来上がりきっていないことに挑む“挑戦心”も湧きました。

――読んだ脚本は決定稿だったんですか?

綾野:準備稿の前の段階の稿です。北川さんも同じものだと思います。

北川:そうですね。でも、ほとんど出来上がっていましたよね。

綾野:結構ボリュームがあって、その時点ではおそらく3時間ぐらいの長さ。あまり削ってほしくないなと思っていました。

北川:私は、石井(岳龍)さんもそうですけど、宮藤(官九郎)さんとも今回が初めて。すごいものを読んでしまったという感じでした(笑)。私が演じたろんは、他の作品では出せないようなアナーキーな部分を持った役柄ということもあって、自分の中にあるそういう精神をこの映画にぶつけられたらいいなと。物語全体としては、途中で人間と猿が戦ったりして、よく分からないところもあったりするんですけど(笑)、一つ一つのシーンの会話はとても日常的でリアルな感じが楽しかったです。

■ 綾野&北川が作品の魅力を語る!

――完成した作品を見た感想は?

綾野:何よりも、12人いる登場人物たちがちゃんと個として立っていることが素晴らしくて。誰が主役とかではなくて、みんなが魅力的。物語だけで言えば、僕が演じた掛という男がハッタリをおこし、そのハッタリが本当になってしまい大変なことになったから、それを収めようとしたらとんでもない展開に。でも、その中で官九郎さんが、それぞれの人生を生きさせてくれたんです。だからこそ、目の前を電気が走ったりとか、猿がしゃべっていたりという、ありえないようなことが当たり前に感じられる。要するにカオスですし、脳内破壊映画です(笑)。

北川:自分が出ていないシーンはどうなっていたのか分からなかったんですけど、お腹を抱えて笑うくらい面白くて。アクションもすごかったですし、見終わった後に、何だかスッキリしました。

綾野:あの浄化される感じはなんだろうね。

北川:最後に「無」になった感じ。

綾野:確かに。

北川:ろんはものすごく生きることに執着していて、自分が正しいと思っているはっきりしたところが好き。自分で“腹踊り”をさせておきながら「この人たちばかじゃないの」って冷めた目で見ているようなところも、そういう感情は私も持っているかもしれないなって。熱い部分と冷めた部分の両方を出せる作品だったからすっきりしたのかもしれません。

綾野:今の話を聞いて、すごくすっきりしました。ろん以外は誰も生きることに執着していないんです。だから、ろんに希望がある。きっと、みんなが北川さんの手のひらで転がされているような映画なんでしょうね。

――パンクな世界を彩る個性豊かな俳優陣との共演シーンでは、いろんな“化学反応”が見られそうですね。

綾野:みんな好き勝手やっていました。ある種、ろんがしっかりと真ん中に立ってくれていたので、周りが「うわーっ」とはしゃげたんだと思います。本能の赴くままと言いますか、出てくるキャラクター全員脳みそがない人たちばかりでしたから。東出(昌大)さんが演じた殿なんて、愛すべき残念なキャラ。石が頭に当たるシーンは、ジワジワ込み上げて、結果、爆笑していました。内藤(豊川悦司)はいつの間にかマイノリティーっぽくなっているし(笑)。

――台本にはない設定だったんですか?

綾野:書かれてないです(笑)。

北川:勝手にやってたんだ(笑)。ウインクがやばかったですよね?

綾野:やばかった(笑)

――掛が、家臣の大浦(國村隼)に向かってお尻を突き出すシーンは?

綾野:あれは、僕のアイデアです。“合法的”に國村さんに対してあんなことができるんだったら、やってみたいじゃないですか(笑)。カットが掛かった瞬間、すぐに「失礼しました」って謝りました。

――あの掛の突飛な行動は、まさにパンクでした。

綾野:内藤からひと余興やってくれと言われてやってみたけど、殿の前で家臣に向かって尻を出すなんて一生できないぞって思いついて。今だったら内藤さんが絶対守ってくれるはずだから斬られる心配もないし、切腹もないだろうと。人生一度しかないんだから、やっちゃえっていう掛の浅はかさですよね。でも、あのシーンは國村さんがしっかりと受け止めてくださったので、本当に感謝です。

北川:今回、私は受けの芝居が多かったので、みんなのハチャメチャ感がうらやましかったです。今度、石井さんとご一緒する機会があったら、好き勝手やって大暴れしたいです(笑)。

■ 同作を手掛けた石井監督とは!?

――撮影現場での石井監督は、どんな感じなんですか?

北川:すごく常識人。映画は、こんなにパンクですけど(笑)。

綾野:ほんとそうですね。

北川:現場では、いろんなところに配慮して控えめな方という印象です。

綾野:とにかく俳優部だけではなく、各部署に思いやりがある人。

北川:優しいですよね。

綾野:どんな時も寄り添ってくれるし、決して自分がやりたいようにやる人ではない。映画になった時にパンクであればいいと思っている。

北川:現場では全然パンクじゃなかったですね。

綾野:石井監督はとてもシャイなんです。北川さんを撮っている時に、僕は石井監督の隣にいましたが、カットを掛けた後「いや〜、素晴らしい」と仰っていたので「北川さんに伝えてあげてください」って言ったら「そういうのは恥ずかしい」って(笑)。そういう方なんですよ、石井監督は。今回は、誰よりもろんに集中し、研ぎ澄ましていました。

――自分の中にパンクな部分はありますか?

北川:私は元来、結構パンクなんだと思います。すごく品行方正であらなければいけないと思うから、ちゃんと人としてきちんと公の場に出ようとしていますけど、音楽はうるさい感じのものが好きだったり、アナーキーな部分をつねに持っているような気がして。そういう精神というか、ちょっとした反抗心みたいなものがあるという点が、この仕事に向いているところなのかなと。全部他人に巻かれるわけではなくて「それは違うと思うけど」って思いながらも「は〜い」って言いながらやることはあります。

綾野:その「ん?」って思いながらも「はい」って言いながらやるっていうことは、決して打算的なわけじゃないんです。その「はい」の中には、自分に折り合いをつけようとしているところがあるんだと思います。

北川:そうですね、折り合いをつけている感じですね。

綾野:だからうそがないというか、白黒はっきりしている。グレーじゃないんです。

北川:そういうはっきりしているところはパンクかもしれない。決してフワッとはしていないです。

――それは、経験を積んできたからこそなんですか?

北川:たぶん、子供の頃から団体行動をしていくうちに、生きていく上で大切なことを学んだのかもしれません。

綾野:大人の階段を上っちゃったんだね(笑)。

北川:そうかも(笑)。

綾野:人間が生きようとするというか、人間という存在がそもそもパンクなのではないかと思ったりするんです。もちろん、全員が全員そうだとは思わない。でも、僕はそういうパンク的なところが好き。だから、そんな精神を持っている北川さんに魅力を感じるのかもしれないですね。(ザテレビジョン・月山武桜)

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