“映画通”齊藤工の本領発揮!長編デビュー作『blank13』の巧みな映画術

“映画通”齊藤工の本領発揮!長編デビュー作『blank13』の巧みな映画術

齊藤工の長編監督デビュー作『blank13』のレビューをお届け!

齊藤工がメガホンをとり、2017年に大ブレイクした俳優・高橋一生に、松岡茉優とリリー・フランキーらが出演して、スタッフ陣も錚々たるメンバーが集っている(福山雅治が製作に関わっているというサプライズも)にも関わらず、徹底してコンパクトなスケールの映画としてまとめあげられている点にひたすら驚かされる『blank13』。

齊藤工といえば、2014年に一世を風靡したテレビドラマ「昼顔」で注目を集め、今やCMや映画などにも引っ張りだこの生粋の二枚目俳優だ。その一方レンタルビデオ店の棚に並ぶ作品を端から順に制覇していったという逸話を持つほどの映画通として知られ、ブレイクする前からショートフィルムの監督としてその腕を磨き上げた彼の作風からは、随所に往年の名作へのリスペクトを感じられる。

まず長編デビュー作(厳密にいえば中編であるかもしれないが)で、人間の最後の晴れ舞台である“葬儀”を扱い、そこに集う人たちのユーモラスな姿で描き出すというプロット。これは伊丹十三のデビュー作『お葬式』(84)へのオマージュではないだろうか。

さらにポスターのデザインでも、父親であるリリー・フランキーの横顔の奥に重なるように正面を見つめる高橋一生の姿。これはスウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマンが『沈黙』(62)や『仮面ペルソナ』(67)などで使った、2人の登場人物が表裏一体であると示唆している場面を想起させられてしまう。

そういった“デ・ジャヴュ”的なショットが他にも数多く登場するのだが、そのどれもが嫌味なく織り込まれていくというのは、齊藤工という人物がカメラの前後両方に立つことができる人物だと証明している。観せ方と観られ方、その両方をしっかりと理解しきっていてこそできる技だ。

そこに幼少期の回想シーンでのじめじめとした空気感と、まったくもって食欲をそそられない食事のクローズアップ。静かに淡々と紡がれていく前半は、近年の日本映画のトレンドとも言える、生々しいリアリティへのこだわりがうかがえる。

ところがそう思って油断をしていると、映画のちょうど半分が経過したあたりで突然タイトルが挿入され、そこから先は急にテイストが一変。参列者が思い出を語り出す場面は多くのお笑い芸人や佐藤二朗らを登場させ、絶妙な空気感を演出して笑いを誘う。葬儀という限られた空間の中にいるにも関わらず、前半と比較しても画面の広さが増し、娯楽性を携えていく。

そしてついさっきまでジメッとしていた回想シーンでさえも、陽に照らされて爽やかな、美しい思い出として形を変える。1本の、しかも70分しかない非常に短い作品の中で、まったく雰囲気の異なる2本の映画を観た気分になる。

『blank13』は2月3日(土)からシネマート新宿にて公開されたのち、2月24日(土)から全国順次公開される。(Movie Walker・文/久保田和馬)

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