『リトル・サブカル・ウォーズ 〜ヴィレヴァン!の逆襲〜』後藤監督&脚本・いながきさんインタビュー「名古屋だからこそ生まれた“愛すべきダサさ”」

映画版『リトル・サブカル・ウォーズ 〜ヴィレヴァン!の逆襲〜』が現在公開中です。名古屋が生んだ、遊べる本屋「ヴィレッジヴァンガード」。その個性を出し過ぎな、誰かの”好き“で溢れかえった本屋を舞台に、自称「空っぽ」の杉下とその仲間たちが過ごしたハチャメチャで刺激的な青春の日々を描いたドラマ「ヴィレヴァン!」。2019年5月14日から6月25日にメ〜テレのテレビドラマで放送され、深夜にも関わらず名古屋を中心としたサブカル戦士たちの熱いハートに火をつけ、カルト的人気を集めました。

本作の監督を務めたのは、テレビドラマ版から引き続き後藤庸介さん。脚本をいながききよたかさんが担当しています。超個性的な店員たち、奇想天外なお客さんとのやりとりなど、ドラマ版で描かれた出来事たちはなんと<ほぼ実話>! 映画版はそれをベースに大スペクタクルな展開が繰り広げられます。

後藤監督といながきさんの雑談からスタートしたという「ヴィレヴァン!」の企画。今回はお2人に本シリーズへの想いや、今後のカルチャーの行く先まで、色々とお話を伺いました!

名古屋だからこそ生まれた「愛すべきダサさ」に惹かれた

――本作大変楽しく拝見させていただきました! ドラマ版の企画はお2人の雑談からスタートされたそうですね?

いながき:別の仕事の打ち合わせの時に、雑談でヴィレッジヴァンガードの話になって、「僕働いてたんですよ」って言って色々と思い出話をしていたら監督が面白がってくれて。それがはじまりのはじまりですね。

後藤:その時色々と話を聞いたら、すごい変だったんですよね。昔の話ですから今は違いますけど、それこそみんなドラッグやっていたりとか。

いながき:いやいやいや、それは無いです!

後藤:道端で拾ったいらない物を店で売ったりだとか。

いながき:……それは本当なのかもしれません。定かではないです(笑)

後藤:それが面白かったんですよね。みんなが卒業していく前提の青春の場所というか。物語みたいな場所だなと思ったんです。後は僕の愛知県に対する印象。名古屋ってとにかく変な所だなあと常々思っていて、でもそれってタモリさんを筆頭に、少なく無い人が持っているイメージだと思うんですけど。

いながき:味噌とかエビフライとかね。

後藤:僕の奥さんも名古屋出身で変わっている人だったりして、そういう名古屋に対する「変わった場所だな」というイメージがヴィレッジヴァンガードと見事に結びついて。良く言えば、周りにどう見られているかとかを気にせずに、好きなもの・ことに邁進している人が多いなと思ったんです。食もそうじゃないですか?

いながき:美味いものに美味いものを重ねる文化なんですよね。カツ美味い、味噌美味い=味噌カツ!っていう。

後藤:モーニングとかもね。過剰なサービスと(お客さんへの)構い方。そういう愛すべき「ダサさ」みたいなものが元々気になっていて、ヴィレヴァンも名古屋だからこそ生まれたんだろうなと思ったんです。

いながき:ヴィレヴァンの創業者の菊地さんという方は北海道出身で、青山学院出身なのですが、新しい本屋の形態を思いついた時に「名古屋なら売れる」と思ったそうです。

後藤:天才じゃないですか! こういう感じでヴィレヴァンの話を色々する中でドラマの話が生まれていきました。普通ドラマの企画って「売れている漫画が原作」とか「旬のキャストを起用して」とか、そういう感じで進んでいく事が多いのですが、本作は「これは確実に面白い!」と思って企画書書いたんです。それで最初にヴィレヴァンの総務部に連絡して「御社のドラマ化って可能でしょうか?」と。「えっと、すみません何の話でしょうか」と困らせてしまったんですが(笑)。なので次に、絶対名古屋でドラマ化した方が良いと思っていたので、メ〜テレさんにお話を持っていって、実現していった流れなんです。

全国のヴィレヴァン店員にリサーチ「どうやったら売れるんだろう」って真剣に考えている

――お店も個性的なら、店員さんも個性的ですものね。

いながき:取材で聞いたんですが、アルバイトの採用基準も「変な奴からとれ!」なのだそうです。

後藤:マッチポンプなんですよね。変な人を採用するからトラブルが起きて、仕事が増えて、深夜まで作業するという。

――(笑)。そんな店員さん達をとても豪華なキャストの皆さんが演じられています。

後藤:色々なドラマ作っていますけど、ヴィレヴァンだけが唯一誰にも断られなかったんです。思った通りのキャストの皆さんに参加していただけて。岡山さんに主演をお願いしたのは「まさにヴィレヴァンにいそう」だったからなのですが、実際すごく漫画や音楽に詳しくて。岡山さんがファンだというので、バンド「忘れらんねえよ」を色々聴かせてもらったら主題歌にピッタリな曲があったり。そうしたら映画版に出ていただいた萩原聖人さんが「忘れらんねえよ」の大ファンで、自分は出ないのにMVの撮影行ったりしてるらしいんですよ。そういう感じで、サブカル好きの皆さんがいい感じに集まって、つながっていって。

いながき:安達祐実さんも最初の頃の雑談で話が出ていたんですよね。「安達祐実さんみたいな人が出てくれたらいいよね」って夢物語みたいな感じで。

後藤:まさかこの企画にあのお二人が出てくださるとは思わなかったので、本当に感謝です。

――本作を製作するにあたって、実際に店舗や店員さんの取材を行ったそうですね。

後藤:ドラマはほぼ実話で構成されています、全国のヴィレヴァン店員さんにリサーチをかけました。店長さんが何人も集まっている会議の中で、最後に社長がものすごく真面目に「いいか、俺たちが日本のサブカルを牽引していかないといけないんだ」って言っていて。嘘みたいなアツいセリフで、ビックリしたんですよね(笑)。

いながき:そんな人たち今時いないですよね。リサーチや取材の中でも、僕が働いている時と違ってすごいダメ人間な人はいなくて、とってもアツくて真面目な方が多かったですね。好きなものがたくさんあって、その中で「どうやったら売れるんだろう」って真剣に考えている。

――店員さんたちの熱意と真剣な想いがあの空間に魅力を与えてくれていますよね。ポップを見ているだけでも楽しいです。お2人はこれまでヴィレヴァンで買ったものとか、想いでに残っている作品などありますか?

後藤:ドラマの企画をたてる時には、必ずヴィレヴァン行くんですよ。企画の種探しというか。店員の誰かのものすごくアツい視点で推しているものと出会えるので。ヴィレヴァンのおかげで作れたドラマもいくつかあります。

いながき:僕は10代の時に知ったものの貯金で脚本を書いているなと思うことが多くて、その成分の5割くらいはヴィレヴァンにいた人に教えてもらったことです。滝藤さんが演じている川上店長は、僕が当時働いていたヴィレヴァンの店長をモデルにしているんです。誇張している部分はありますけれど、本当にあのまんまの人で。ジャズも本も漫画も、たくさんの事を教えていただいて、今でも敬愛していますね。

「自分が好きなものを作り、好きなものを叫ぶ。そして、誰かの好きなものも受け入れる」

――ありがとうございます。全国の企画に迷っている皆さん。ヴィレヴァンに行けば何かアイデアが生まれるかもしれませんよ! それでは、改めて、今回の映画化への想いを聞かせていただけますか?

後藤:この規模でよく映画化したな!としみじみ思いますね。「これをやったらウケるかも」、「こうした方が人入るかも」という計算などをせずに、予算と時間にかなり制約はあったものの、本当に自由にさせてもらったので楽しかったですね。

いながき:普段、脚本家というと、実は、御用聞きの役割が多いこともあるんです。この素材を上手く描いてくださいね、という感じで。今回は全くそういう事が無くて、監督とたくさん話をしながら自由な作品作りが出来たのでありがたかったです。めちゃくちゃ馬鹿馬鹿しい作品ですけれど、「面白い映画を作ろう」という部分だけを大切に作ったので、その辺は楽しんでいただけると思います。

後藤:「サブカルが終わる」というテーマだけ決めて企画を走らせていたら、こんな時代になりまして。より「すべてが監視され、コントロールされる世界」っていうのがドンピシャにはまってしまったというか。コロナ禍ではエンタメが不必要なのか、みたいな空気もありましたしね。

いながき:日本って自由な国ではあると思うのですが、秦の時代の「焚書坑儒」じゃないですけれど、なんかそういう抑圧を感じる事もあるというか。もう文化とかいらないんじゃない?みたいな空気を感じていたこともあって、それが映画に反映されている部分もあると思います。

後藤:ヴィレヴァンもそうですけど、僕らも今後どうなっていくんだ?みたいな気持ちがあって。抽象的ですけれど、「自分が好きなものを作り、好きなものを叫ぶ。そして、誰かの好きなものも受け入れる」そんな風にしてやっていく以外には無いんじゃないかなと。個人主義に走り、SNSで批判ばかりを繰り返していくと、今みたいな社会になってしまうし、もっとひどくなっていくのでは無いかと考えてしまうんですよね。

いながき:最近考えていたのが、<ずるい>という感情が世の中に蔓延している気がしていて。去年、定食屋チェーンの「ごはんおかわり無料」サービスが、おかわりしない人たちが「ずるい」と声をあげて有料になったというニュースがありました。

後藤:人が得してそうだとずるい!ってやつですよね。自分の熱意とか、好きだからやっていますというのが無くて、楽して良い思いをしたいという方向にどうしてもいってしまう。

いながき:<寂しい>もありますよね。すごく昔に村上龍さんが「日本には悲しみは無い。あるのは寂しさだ」とおっしゃっていて、悲しみ・悲しいって1人でその感情に向き合っている哲学があるのですが、寂しいって実はすごく浅はかなんですよね。誰かと会えば取り急ぎ満たされてしまう。深く自分と向き合う時間を持たずに消化されてしまっているから、どんどん軽く消費されていく感じがしちゃうんですよね。

昔って、例えばミスチルファンとニルヴァーナファンがいたら、「どういう所が好き?」とか「オススメの曲教えて」とか聞いたり話したりする機会が多かったと思うのですが、今って「ニルヴァーナが好き」とSNSに書いたら「いまさらニルヴァーナ?」なんて言われたり、全部「この意見に賛成?反対?」と急き立てられている感じがして。グラデーションが無いのって、カルチャーが育たない環境なんですよね。

後藤:昔だったらミスチルでもニルヴァーナでも、自分が好きなら周りに何を言われても関係無いし、周りの人が何を好きでも、「それいいね!」という余裕があった。だからちょっと極論ですけど、ヴィレヴァンが存在出来る世界が良いなと思うんですよね。店員さん=他人の好きなものをお客さんが受け止めるということですから。本作は楽しく観れるコメディなので、気負って欲しくは無いのですが、すごくタイミング的に合っているなって感じています。

――雑談から生まれた企画が人気を博して映画になって、そしてコロナ禍の今に考えさせられるメッセージもあって。ぜひたくさんの方に観ていただきたいと思います。今日は貴重なお話をどうもありがとうございました!

『リトル・サブカル・ウォーズ 〜ヴィレヴァン!の逆襲〜』公開中!

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