「自分自身の夢を実現するためには戦わなければいけない」 映画『MISS ミス・フランスになりたい!』監督が作品に込めた想いとは

本物の「ミス・フランス実行委員会」と提携して撮影した映画『MISS ミス・フランスになりたい!』は、本当の自分を見つけ、殻を破って内面を磨くことが真の美しさへの一歩であることだと知り、きらびやかなコンテストの中で成長していく主人公の姿を描く一作です。ありのままの自分を勇気をもってさらけ出し、その自分を受け入れるという、現代に相応しい、可憐でボーダーレスな映画が誕生しました。

主演は、フランスで“ボーダーレスな美女男子モデル”として活躍しているアレクサンドル・ヴェテール。監督・脚本は、俳優、脚本家、監督と多彩な才能を発揮するルーヴェン・アヴェベス監督です。このほど本作の日本公開を前に、お話を聞くことができました。

https://missfrance.ayapro.ne.jp/ [リンク]

■ストーリー

学校で「自分の夢」を教室で発表した9歳の美少年アレックス。クラスメイトから冷やかされてその夢を封印。さらに両親を事故で失い自分を取り戻せなくなって青年になった彼は、夢を叶えた幼馴染のエリアスと偶然再会。エリアスに触発され、忘れかけていた自分の夢に向かって進むことを決意する。それは、男性であることを隠しながら「ミス・フランス」コンテストに臨む、という自分自身を取り戻すための挑戦でもあった…。

●この物語のテーマに惹かれた、個人的な理由はありますか?

幼なじみの友人が性転換をしたいとわたしに打ち明け、そのあと実際に性転換をする過程をずっと見てきました。それがきっかけになったことは確かです。男の子として育ってきたけれど自分の身体では居心地が悪く、結局女性になった友人がいるんです。自分自身が身体や魂で居心地を悪く感じるという、ジェンダーに関する問題ですね。しかしこの映画は、性転換について話している映画ではありません。自分自身への探求、アイデンティティーの問題に関する探求についての物語なのです。

この映画で見せているものは、他人に関して寛大であること。トレラウス(寛大さ)を持つということの需要性です。違っている人であっても、それを受け入れること。それが重要ではないのかと思います。別に違っていることが普通のことであって、この普通だとかノーマルだとかいう言い方も、実は好きではないのですが。

●主人公のような「殻を破りたい」気持ちになったことはありますか?

確かに毎日、いつも生まれた瞬間から自分の殻を破りたいと思い続けてきたと思います。完全に自由な状態にあって、何にも屈したくないように思っていて、生まれてからずっと戦い続けてきたように思います。わたしは勇気についての映画を作りましたが、それはある時、自分には十分な勇気がなかったからのように思います。

自分の思想にしても、わりとはっきりと物事を言うほうなのですが、意見を言う際に世界に対してもっと発言すべきだった、もっと自分の意見を言うべきだったと思うからこそ、勇気についての映画を作ったのかもしれません。こうしたことすべてが混ざっています。生まれた時からずっと、絶えず戦ってきました。

●その主人公を演じたアレクサンドル・ヴェテールさんが、とても素敵でしたが、彼の俳優としての魅力は何でしょうか?

俳優としてのアレクサンドル・ヴェテールですが、彼は本物であるということですね。そして、彼が光り輝く存在であるということです。わたしは彼に会った時、彼はダイアモンドの原石で、わたしはこのダイアモンドをカットしさえすればいいと思いました。

彼は感性の塊のようなもので、ほかの俳優と一緒に演技することに慣れていませんでした。すなわちモデルだったわけですから、写真を撮るにしても一人で動いていればよかったんです。ところが映画だと、ほかの人々とともに生きなければならない。それでも彼は本物であり続けました。モデルの場合は、少し大袈裟な部分があります。つまりファッションショーで歩く時など、何かの真似をして何かを演じています。

ところが映画の場合は、そのシークエンスを生きなければならなない。そこに存在しなければならないんです。彼はあまりにもその状況に入り込んでいるため、ほかの俳優が困っていました。あまりにも俳優として本当にそこにいるからです。本当にそれは圧倒されるほどでした。

アレクサンドル・ヴェテールの俳優としての魅力を言うならば、純粋さと優美さでしょう。それは信じられないことなんですが、これはダイアモンドの原石と一緒に仕事をするということ。重要な経験でした。

●長編2作目となりましたが、監督業の面白さについて教えてください。

監督業の面白いところは、自分の生きている社会・世界と関係、繋がりを持ち続けてやれることです。たとえSF映画や時代劇を作ったとしても、結局は人間と繋がっています。すなわちストーリーを語るということは人間と繋がっている、それが監督業の面白さで、これが第一の面白い点ではないでしょうか。

第二は人々との出会いがあるということです。映画で出会う人々は特別な人々で夢を見る人、そして、いつも自分の限界を越えようとしている人々です。そして俳優やプロデューサーとの出会いですが、とても好きです。いつも感情的なものを重視しています。そうした人々に出会うことによって、わたしたちなりの小さなレベルですが、社会を少しばかり変化させることができる、自分の進化に協力することができる、このように社会との関わりがあることが監督業の面白みでしょう。

●この映画を撮ってよかったことはなんですか?

この映画を撮ってよかったと思うことは、観客から最初に反応が来た時でした。たとえばある一人の母親から手紙をもらいました。わたしにお礼を言ってくれました。この映画のおかげでようやく自分の息子が理解できた、この映画を観て息子と素晴らしい話し合いをすることができた、こんなすごい話し合いをしたのは初めてだったということが手紙に書いてありました。ほかにもメッセージをもらい、この映画の制作に至るまでは簡単ではなかったのですが、戦ってこの映画を作ってよかったと思いました。

またほかにもさまざまな手紙で、この映画のおかげで力をもらった、自分自身が受け入れられるようになった、アレックスのおかげで明日仕事に行って学校に行って、自分は本当は誰なのか人に言う勇気が出た、自分の中のある部分を認める勇気が出たというふうに書いて送ってくれた人たちがいます。そうしたことは、この仕事をして、このような映画を作って、貰える最高のプレゼントだと思います。

また、アレクサンドル・ヴェテールがセザールの新人男優賞にノミネートされた時もうれしく思いました。それは、彼の仕事を人々が認めてくれたということです。アレクサンドル・ヴェテールが持っている才能、特殊性に誰よりも前に気がついて発見をしたのはわたしで、その特殊性を人々が認めてくれたという意味です。最初この映画、公開されて1週間でロックダウンになってしまったので、観ていた観客の数も多くなくて非常に大変でした。今ではVODとかDVDでもう少し人々が観られるようになっていますが、いいことが随分ありましたから、この映画を作ったこと、映画を作り続けてるということを、本当に幸運に思っています。

●日本の映画ファンに何を感じてほしいですか?

日本の観客のみなさんには、この映画の持っているメッセージを受け取ってほしいと思います。自分自身と調和した関係であること、自分自身を受け入れること、自分自身を受け入れる勇気を持つこと、そしてまた、クレージーなものに思われても自分自身の夢を実現するために戦わなければいけないということです。

それから自分の持っている違いは豊かさであるということ。人間を美しくするのは人間の差異であるから、違いを恐れてはなりません。

またもう一つ、この映画を通じて理解してほしいメッセージは、周りにいる人々のもたらす友愛や寛大さ、人類愛が重要だということです。そうした周りの人々がくれる愛や寛大さのおかげで前に進むことができる。そうした周りにいる人々、自分が作る家族からくる良いものが重要だということを感じてもらいたいと思います。

またもう一つ今日、SNSなどを通じて外見や見かけをあまりにも重視してしまう、そうした点は危険だと思いますから、それに注意を払ってほしいと思います。自分自身を受け入れること、自分自身を愛することが重要だという映画のメッセージをまず受け取ってほしいです。

特に日本の方々は感性が鋭くてエレガントで、デリケートなものがわかる方々だと思います。ですから、自分自身の中にある男性性・女性性、それを受け入れることもよくわかっている思いますし、日本の観客であればエレガンスがどれほど重要かということも理解していただいてるでしょう。この映画の主人公は女装をするのが好きで、それを通じて自分自身を受け入れ、自分の両性具有的なところを受け入れることができます。日本の観客の方々は、特に理解しやすいところではないでしょうか。

『MISS ミス・フランスになりたい!』

監督・原案・共同脚本:ルーベン・アウヴェス
撮影監督:ルノー・シャッサン、プロデューサー:レティシア・ガリツィン、ユーゴ・ジェラン
音楽:ランバート
出演:アレクサンドル・ヴェテール、イザベル・ナンティ、パスカル・アルビロ、ステフィ・セルマ

2020/フランス/フランス語/スコープサイズ/107分
(C) 2020 ZAZI FILMS ? CHAPKA FILMS ? FRANCE 2 CINEMA ? MARVELOUS PRODUCTIONS

2/26(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国ロードショー!

(執筆者: ときたたかし)