暴走するYouTuberの末路は? ジア・コッポラ監督が語る『メインストリーム』 アンドリュー・ガーフィールド主演

暴走するYouTuberの末路は? ジア・コッポラ監督が語る『メインストリーム』 アンドリュー・ガーフィールド主演
『メインストリーム』(c) 2020 Eat Art, LLC All rights reserved.

■コッポラ家の秘蔵っ子、長編二作目

『メインストリーム』の日本公開を2021年10月8日(金)に控えるジア・コッポラ監督。フランシス・フォード・コッポラを祖父に、ソフィア・コッポラを叔母にもつ彼女が新作で描いたのは、SNSで成功する若者たちだ。

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映画界での成功を夢見ながら動画を投稿していたフランキー(マヤ・ホーク)は、カリスマ性があるのに浮浪者のように暮らしている男リンク(アンドリュー・ガーフィールド)に出会う。彼の動画を投稿すると瞬く間にスターになるが、暴走しはじめ……というストーリー。ジア・コッポラ監督に本作への想いを聞いた。

ジア・コッポラ監督

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「お説教っぽくなく、多くの人に話し合ってもらえる映画にしたかった」

―『1984』(1956年)のビッグブラザー的にガーフィールドが描かれている映像もあって、失言や侮辱が多かったアメリカ前大統領がどうしても思い出されます。オープン・エンディングにしたのは現在も起こっていること、現実の話だという意味が込められているんでしょうか。

そうですね。もちろん現実に起こっていることです。 1950年代の映画にインスパイアされてこの映画を撮ったんですが、ある部分はやっぱり現在進行形で起こっていることで、私たちがそこにばかりに気を取られるエゴの世界で、まさにいま抱かれている疑問だと思います。おそらくは教育が行き渡っていなかったり、コマーシャリズムと私たちの生活が結びつきすぎていることも理由で、SNSが私たちの信条にますます関わってきている……。

この映画で描きたかったのは、何が良い・何が悪いとかSNSに反対するということではなく、本当に人生で重要なのは何か? ということ。愛とか家族とか友だちとか、幸せとか自然とか人とのつながりが重要なんじゃないかと、オープンエンディング(※様々な解釈ができる結末)にしました。でもこの映画を作りたかったのは、自分の中で答えを見つけたかったからという理由もあるかもしれません。

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―エリア・カザンの『群衆の中の一つの顔』(1957年)にインスパイアされたということですよね。カザン監督の映画とのもっとも大きな違いは、本作がコメディだということでしょうか。

『群衆の中の一つの顔』も1950年代にはコメディだったし、ユーモアがテーマでした。でも、この映画はお説教っぽくなく、面白く撮りたかったのでよかったです。多くの人にこのことを話し合ってもらいたくて。

『メインストリーム』メイキング写真(c) 2020 Eat Art, LLC All rights reserved.

―ガーフィールド演じるリンクの演説やキャッチフレーズに、民衆が簡単に乗せられてしまいます。『メインストリーム』というタイトルはSNSだけでなく、人気など大衆心理そのものを動かすことを表しているように思えます。

その通りです。ストーリーはSNSについてですが、こういう感情はどんなプラットフォームでも起こりえますよね。これは昔からある話で、集団として私たちがどこに価値を見出すのか、どんなことが起こるのか、有名人になるというのがどういうことなのか、そこにどんな理由があるのかを示しています。スターとファン、有名になるということ、たった一人の崇拝されるスターの後ろに多くの犠牲者がいるカルチャーがあることが興味深いと思うんです。誰にでもスターダム/ファンダムがあって、そこで何かが起こる、ということが。

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「大人になるまで祖父の映画は見ていなかった」

―『群衆の中の一つの顔』は1957年の映画ですが、昔の映画はよくご覧になるのですか?

昔の映画は大好きですし、大作シリーズものも大好きです。でもクラシック映画ファンというよりは、過去の映画を栄養にしているんだと思います。試みられているテクニックとか、ストーリーがどう展開するかに興味を惹かれるんです。

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―『メインストリーム』を撮るにあたって、ほかにインスパイアされた作品はありますか?

『ネットワーク』(1976年)はもちろん、『ブロードキャスト・ニュース』(1987年)はホリー・ハンターの複雑な女性像も好きだし、恋愛関係が入っているのも好きです。大きな影響を受けたのはこの2本ですね。

―昔の映画をよく見ることには、ご家族の影響があると思いますか?

そうですね。家族の映画は好きだし、家族ということに関係なく昔の映画のリストを見ると、いつも入っていたから……。例えば『ヴァージン・スーサイズ』(1999年:ソフィア・コッポラ監督)はティーンの女の子なら、みんな見るでしょう? 私もその大勢の一人というだけで。

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―お祖父さまの映画についてはいかがですか?

それは大人になるまで見ていなかったんです。だって、(ソフィアの作品と比べて)より暴力的でしょ。それで私が大人になったら、家族は過去に何度も見ているものから、もう見る機会がなかったんですよね。友だちは「ちゃんと自覚しろよ」と思っているだろうけど、いま改めて見たら視点も変わっているから価値もわかるし、どれだけすごい仕事なのかは理解できます。

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「アンドリューが演じることで、何か違うものが見られるはずだとワクワクしていた」

―キャスティングについてうかがいます。アンドリュー・ガーフィールドは信念を持った善人の役を多くやってきましたが、信念というものは一歩間違えると狂信にもなりえますよね。そうした狂気に注目されたのでしょうか。

アンドリューとはずっと一緒に仕事をしたいと思っていました。彼は素晴らしい俳優だし、リンクが類型的なヒーロータイプじゃない役というアイディアが気に入ってもいたんです。観客が絶対に好きにならないような役。でも彼のハートのレベルを感じて、みんな映画を見ちゃうんです。リンクというキャラクターは複雑で、大物になってスキルを得ていく過程で、誰もがSNSで見かける犠牲者にもなる。

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人間関係が良くなく、自分を守ってくれるツールがないときに何が起こるか? もちろんアンドリューが過去に演じたキャラクターも複雑ではあったけれど、彼が役にハマるようみんなで結束して、危ないことになるかもしれなかったけれど、何か違うものが見られるはずだとワクワクしていたし、すごく面白くなると思っていました。

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―マヤ・ホークは現実にはスターのお嬢さんですが(※両親はユマ・サーマンとイーサン・ホーク)、やりたいことがわからなくて動画を投稿している平凡な女子という役どころでした。マヤ本人にそのような雰囲気があったのでしょうか。

いいえ、全然(笑)。マヤが、あの不安そうな役をやったら面白いだろうと思ったんです。マヤは自信家ですよ。どんな映画監督も、あの年代の女性にはインスパイアされるけれど……。私もあの年ごろは自信がありましたが、彼女はミュージシャンで、すごく美しいシンガーだし、子どものころから褒められていたと思います。だから彼女にとっては、あの役をどう演じるかがチャレンジだったんです。

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―エージェント役のジェイソン・シュワルツマンの台詞がとても面白かったのですが、アドリブなどはあったのでしょうか。

ええ、ジェイソンは天才ですから。私が知っている、いちばん面白い人。あの即興の天才がいたから、私にもコメディが書けたんです。即興はジェイソンの特別なスキルで、誰もあんなふうにはできません。YouTubeがどんなものか、SNSがどんなものなのかを彼みたいに理解しようとして、彼が前向きに仕事をしているこの世界を初めて知ったんです。

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―ジェイソン・シュワルツマンとはいとこ同士ですが、どんな影響を与え合っていますか。

いとこであり、高校に車で送ってくれた人です。当時ジェイソンはニルヴァーナばかり聴いていました。音楽が好きで、私もそのとき聴いていた新しい音楽とかカルチャーとかについて、よく話しました。私は若かったし、世代が違う彼が自分とは違うコネクションや、違うものの見方を持っていたことに夢中になっていたと思います。

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「この映画がネットで話題になるのは皮肉」

―どんな思いを込めてこの映画を作りましたか?

何が良くて何が悪い、ということを言いたいのではないと強調しておきたいです。この新しい世界を私たちはまだよくわかっていなくて、わかろうとしているところだから。この物語のゴールはフランキーが最後に手に入れるものであり……これらはどういうことなのか、私たちはどう行動するべきなのか、会話してほしいと思っています。

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―最後に、観客へメッセージをお願いします。

この映画を見て笑って、面白がって楽しんでほしいです。願わくば、この映画が何を意味しているのか、人のつながりとはなんなのか、SNSとはなんなのか、見た方たちで会話してほしいです。でも、これはカミング・オブ・エイジ(※若者が大人へと成長していく)の恋愛映画でもあって、授業じゃないんです。だから心配しないで。

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―そしてSNSに投稿もしてね、と?

もちろん! これがネットで話題になるのは皮肉ね。

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取材・文:遠藤京子

『メインストリーム』は2021年10月8日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開

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