ナチスドイツ VS ソ連! 戦車を徹底解説!!『T-34 レジェンド・オブ・ウォー[ダイナミック完全版]』26分追加版TV初

ナチスドイツ VS ソ連! 戦車を徹底解説!!『T-34 レジェンド・オブ・ウォー[ダイナミック完全版]』26分追加版TV初
『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』(c) Mars Media Entertainment, Amedia, Russia One, Trite Studio 2018

■戦争映画の快作にして戦車映画の快作

凄まじい破壊と暴力の嵐が吹き荒れた、ナチス・ドイツとソビエト連邦の戦い「独ソ戦(ソ連側呼称は「大祖国戦争」)」のさなか、4人のソ連戦車兵捕虜が6発の砲弾だけを積んだT-34-85を駆って収容所を脱走、ドイツ戦車と激闘を繰り広げる――。

『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』(2018年)は、巧みに再現されたドイツ戦車とソ連戦車のメカ的なリアル要素と、魅力的なキャラ設定、迫力重視の戦闘シーンなどのエンタメ要素が見事に融合された大活劇です。劇場公開時にミリタリーファンを越えて多くの観客を熱狂させたのも納得で、筆者も砲弾が命中した時の強烈な音と衝撃の描写に、文字通りに痺れたものです。

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(c) Mars Media Entertainment, Amedia, Russia One, Trite Studio 2018

今回CS映画専門チャンネル ムービープラスで放送されるのは、計26分のシーンが追加された『T-34 レジェンド・オブ・ウォー[ダイナミック完全版]』です。この追加によって、宿敵と言えるソ連戦車兵イヴシュキンとドイツ戦車兵イェーガーの奇妙な関係が、さらに炙り出されたりします。

通常版公開時にもBANGER!!!にて紹介しましたが、今回はもっとメカ的に突っ込んだ解説をしてみたいと思います。

こんな贅沢な戦車戦映画があっていいのか? T-34-76対V号戦車、T-34-85対パンターが描かれる『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』

『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』(c) Mars Media Entertainment, Amedia, Russia One, Trite Studio 2018

「V号戦車」vs「T-34-76」

イヴシュキンとイェーガーの初対決はモスクワ攻防戦です。ここではイヴシュキンはT-34-76初期型(「76」は76o砲搭載の意)を、イェーガーはV号戦車長砲身型を指揮してますが、実はT-34-76とV号戦車には不思議な因縁があります。

T-34-76は当時のすべてのドイツ戦車を一撃で撃破できる強力な76.2o砲、ドイツ軍の砲弾を跳ね返す厚い傾斜装甲、そして高出力のディーゼル・エンジンによる快速を誇る、画期的な戦車でした。

『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』(c) Mars Media Entertainment, Amedia, Russia One, Trite Studio 2018

一方で、居住性・操作性の悪さやエンジンやトランスミッションの不具合が指摘されていて、1940年初頭に独ソ秘密協定によってV号戦車を入手したソ連軍は、数字的な性能よりも、メカニズムの信頼性と精巧さ、なにより“人間が操作する兵器”としての優秀さから、V号戦車に軍配を上げていました。

もし1941年6月に独ソ戦が始まっていなければ、T-34は“試作戦車のひとつ”として終わっていた可能性があるのです! ですが独ソ開戦により、ソ連軍は、生産ラインが稼働し始めていたT-34を量産し続けることになったのです。

ちなみに、劇中での主砲発射シーンでは撃針が雷管を叩く様子がCGで描写されますが、ドイツの戦車砲弾の雷管はすべて電気式です。ギアやスプリングを介した撃針で雷管を叩くソ連の戦車砲に対し、発射装置を作動させた瞬間に通電して発砲できるドイツの戦車砲はより実戦的で命中精度も高かったのです。まぁ、ここはエンタメ的演出ということで。

『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』(c) Mars Media Entertainment, Amedia, Russia One, Trite Studio 2018

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「パンター」vs「T-34-85」

とは言え、やはりT-34の性能は脅威であり、ドイツが「打倒T-34」を旗印に開発し、1943年夏に実戦投入したのがX号戦車パンター(豹)です。機械的信頼性の低さ=故障の多さに悩まされたパンターでしたが、その火力と前面装甲防御力は圧倒的で、連携のとれたパンター部隊に正面から戦いを挑むことは、ソ連軍や連合軍の戦車部隊にとって自殺行為に等しいものでした。

『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』(c) Mars Media Entertainment, Amedia, Russia One, Trite Studio 2018

『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』では大戦後のT-55戦車をベースにした、良い仕上がりのパンターが登場します。特徴ある機関室上面のパネル構造や、砲塔上面右前方のベンチレーターも、ちゃ〜んと再現されています。おまけに、赤外線を照射してサイトで対象を捉える、戦車用暗視装置FG1250まで出てきたのには(良い意味で)仰天しました。

一方、対するソ連軍も装甲と火力を強化したドイツ軍戦車が登場してくることに脅威を感じていました。そこで1944年1月、新型砲塔に85o砲を搭載したT-34-85を実戦に投入します。ちなみに、T-34-85にもベンチレーターがあって、砲塔後部上面の達磨状のふくらみがその装甲カバーです。

このT-34-85で収容所から脱走するイヴシュキン、それをパンターで追うイェーガー。ドイツとソ連の戦車開発のエスカレーションが、2人の私闘のエスカレーションにまんまシンクロするという素晴らしい(?)構造なのです。こんな映画が他にあるでしょうか(笑)。

『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』(c) Mars Media Entertainment, Amedia, Russia One, Trite Studio 2018

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さて、『〜ダイナミック完全版』のラストでは「イヴシュキンたちのその後」が追加されています。これが大団円な、いかにもエンタメに相応しいラストであると同時に、これまでの独ソ戦を描いたソ連/ロシア映画の悲痛さ――例えば筆者も好きな『誓いの休暇』(1959年)や『3デイズ・イン・トレンチ 砲撃戦線』(2011年)――を振り切った感があります。

それは「戦争映画の悲劇的ラストには飽きた」と語るアレクセイ・シドロフ監督(脚本も)ならでは、と言えるでしょう。

『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』(c) Mars Media Entertainment, Amedia, Russia One, Trite Studio 2018

文:大久保義信

『T-34 レジェンド・オブ・ウォー[ダイナミック完全版]』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年11月放送

12月には、通常版に加え、ダイナミック完全版よりさらに67分長い[最強ディレクターズ・カット版]をTV初放送

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