怪獣の死体、どう処理する?『大怪獣のあとしまつ』はあらゆる意味で規格外! 絶対に無視できない「問題作」だ!!

怪獣の死体、どう処理する?『大怪獣のあとしまつ』はあらゆる意味で規格外! 絶対に無視できない「問題作」だ!!
『大怪獣のあとしまつ』(c)2022「大怪獣のあとしまつ」製作委員会

■2022年、最大の問題作!?

何もかもがブッ壊れてしまったこの時代に、さらにブッ壊れた映画の登場だ!『大怪獣のあとしまつ』は、2022年の映画界に投げ込まれた馬の死体ならぬ怪獣の死体……ハッキリ言ってかなりの「問題作」である。

『大怪獣のあとしまつ』(c)2022「大怪獣のあとしまつ」製作委員会

とてつもなく豪華な俳優陣を起用しての、とてつもなくシュールな映画体験。映画を観終わったあと、虚空を眺めながらニヤニヤしたり、地面を見ながら「何が起きたんだ……」とつぶやいたり、5分くらい整理がつかずに精神世界で迷子になった。

「感想どうですか?」と聞かれて、ハッと我に返り「とりあえず、めちゃくちゃキレる人はいますよね!」と朗らかに答えてしまった。ある意味、全方面の特撮作品に丁寧に喧嘩を売りまくりながら突き進む暴走パロディ機関車のような確信犯っぷり……。わりと真面目に「二度と見られないかもしれないタイプの映画」が生まれたことをお伝えしたい。

『大怪獣のあとしまつ』(c)2022「大怪獣のあとしまつ」製作委員会

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「怪獣供養」という概念

映画の主な内容は、絶命した巨大怪獣の死体をどう「あとしまつ=処理」するかという話なのだが、実はこの「怪獣の死体処理」というテーマ自体は、怪獣特撮の世界では決して珍しいものではない。個人的に特に印象に残っているのは、1996年『ウルトラマンティガ』(1996〜1997年)の1エピソード、海岸に怪獣の死体が流れ着く「怪獣が出てきた日」だ。

腐乱して悪臭を撒き散らす怪獣の死体に、近隣住民のクレームが爆発、防衛隊が死体を撤去しようと躍起になるのだが、なんと死体と思っていた怪獣が息を吹き返し……という話。ゾンビのような怪獣・シーリザーの、必要以上にリアルな腐敗表現もクールだった。

さらにグッと遡れば1966年の初代『ウルトラマン』の時代から、「死んだ怪獣はどうなるの?」というウルトラ丹波哲郎的なテーマは扱われており、お経を唱える坊さんと喪服姿の科学特捜隊の隊員たちが、倒した怪獣たちの遺影を並べて供養するという珍シーン“怪獣供養”や、死んだ怪獣たちが流れ着く宇宙の一角“怪獣墓場”なども登場する。ある意味、日本の特撮作品ではわりと伝統的なテーマだったりするのだ。

意外なハマり役も!? メインから端役まで振り切った超豪華キャスト

『大怪獣のあとしまつ』では、その巨大怪獣の死体処理と、それを巡って巻き起こる様々な事件や政治的陰謀を、三木聡監督独特のテイストでコメディとして描く。死体処理の責任者を任命されるのが、特務隊員・帯刀アラタ(山田涼介)。アラタの元恋人で、環境大臣の秘書官として政府側の協力者になるのが雨音ユキノ(土屋太鳳)。

『大怪獣のあとしまつ』(c)2022「大怪獣のあとしまつ」製作委員会

山田涼介さんは、圧倒的美形なのはもちろんのこと、この手の配役だと軍人のような立場なのに線が細くなってしまいがちなところを、意外にも骨太に特務隊員を演じきっていて、かなりのハマり役だと思った。ちなみに土屋太鳳さんは、プライベートでウルトラマンのイベントに参戦するほどのウルトラマン好きとして、ファンの間では有名だったりする。

『大怪獣のあとしまつ』(c)2022「大怪獣のあとしまつ」製作委員会

そこに加えて、内閣総理大臣・西大立目完(西田敏行)の秘書で、ユキノの夫である雨音正彦(濱田岳)の3人を中心にストーリーは進む。主要人物だけでなく、わりとどうでもいいチョイ役に至るまで、目を疑うほどの豪華な俳優陣がキャスティングされており、往年のオールスター映画を観ているような、圧倒的な大作感を味わうことができる(特に、染谷将太さんの役回りには度肝を抜かれた)。その点でも、中途半端には収まらない。振り切っている。

『大怪獣のあとしまつ』(c)2022「大怪獣のあとしまつ」製作委員会

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怪獣の死体に、希望を見出すか、絶望を見出すか

そう、とにかく、あらゆる意味で規格外。ラストシーンの後、キレるにせよ、喝采を送るにせよ、無視することができない。

と、ここまで書いていて、ふと気づいた。この無視できなさは、もはや『大怪獣のあとしまつ』という映画自体が、この現実世界にそびえたつ大怪獣の死体のようじゃないか。本作を見た視聴者は、劇中における政府と同じように、この映画にどう反応するのか、どう対処するのか、決断を迫られる。

『大怪獣のあとしまつ』(c)2022「大怪獣のあとしまつ」製作委員会

この死体に、希望を見出すか、絶望を見出すか。“『大怪獣のあとしまつ』のあとしまつ”は、客席の僕らの手でしなければならないようだ。

さぁ、2022年の映画界に投げ込まれたこの死体、どうする?

文:タカハシヒョウリ

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