シュワとヴァーホーヴェンによる“幻の企画”とは!?『トータル・リコール』の山盛りトリビアを副音声で解説

シュワとヴァーホーヴェンによる“幻の企画”とは!?『トータル・リコール』の山盛りトリビアを副音声で解説
『トータル・リコール』©1990 STUDIOCANAL

■シュワ×ヴァーホーヴェンの金字塔SF映画

CS映画専門チャンネル ムービープラスで毎月1本、我々<映画木っ端微塵>クルーが、映画の裏話やトリビアを“副音声”として紹介させていただいている番組『副音声でムービー・トーク!』、2022年4月放送回のお題は『トータル・リコール』(1990年)である。フィリップ・K・ディックの短編を原作とした、アーノルド・シュワルツェネッガーポール・ヴァーホーヴェン監督の手によるSFアクションの金字塔だ。当番組では、今回もいろいろな裏話が明かされている。

やはり主演のシュワルツェネッガーのエピソードにはこと欠かない。もともと『トータル・リコール』の企画自体が「映画化不可能作品リスト」に入っていた代物で、物語を気に入ったシュワが映画会社カロルコに脚本を買わせ、自分のプロジェクトにした。オリジナル脚本は、もっと皮肉やダークなユーモアが多くディックの原作寄りだったが、脚本にはシュワ好みのアクション、SF要素が付け加わった。ヴァーホーヴェンの起用についても、元々は『ロボコップ』(1987年)を演じる予定があったがスーツの問題でダメだったシュワが、完成した映画を見て「この監督と仕事したい」と思っていたからである。実は『トータル・リコール』の脚本は40稿も存在した。様々なプラン、アイデアの中から、後に発展し別の映画として完成した映画作品も存在することが明かされる。また、続編『トータル・リコール2』の企画が最終的に『マイノリティ・リポート』(2002年)になるなど、ディック原作の他作品に発展していく源の作品だったこともわかってくる。
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■クローネンバーグのアイデアが息づく豪華スタッフ集結のSF大作

言うまでもなく『トータル・リコール』は当時の映画界の才能が結集した作品である。何せ元々はデヴィッド・クローネンバーグが監督するはずだった。ディックの描く世界のファンであったクローネンバーグは、大スターのアクション映画を作ろうとする製作側との方向性の違いから降板したが、彼は脚本にも数々手を入れていて、アイデアがそこかしこに残っている。

Total Recall (1990) Dir Paul Verhoeven.

David Cronenberg worked on the script for over a year with an eye for developing it for him to direct. Although uncredited in the final film the idea of mutants on mars originated with him. #FilmTwitter #film #PhilipKDick #scifi pic.twitter.com/JhByQDyvQr

— BJA Samuel (@bja_samuel) December 19, 2019
特殊メイクで高名なロブ・ボッティンも本作に参加しているが、『ロボコップ』でもヴァーホーヴェンとは仕事をしていた。そこでは口論が絶えなかった2人は、互いに「もう二度と仕事しない!」と反目しあっていた。しかし完成した作品を見てリスペクトしあい、ヴァーホーヴェンは『トータル・リコール』ではボッティンにミュータントのデザインなどを全て任せた。火星の住人たちが空気がなくて苦しむシーンの演出にも、息詰まるような酸素欠乏シーンのある潜水艦戦争映画の傑作『U・ボート』(1981年)で撮影監督を務めていたヨスト・ヴァカーノのアドバイスが生きている。一流の映画人が(たとえ最後にクレジットに名前は残っていなくても)才能の火花を散らした結果が、この『トータル・リコール』だったということである。1990年という特撮効果・CGの過渡期の作品であるため、CGと同時に大規模なミニチュアセットも多用されている。両方の技法を用いた、最後のハリウッドメジャー作品でもある。草創期のため、用意したCGがトラブルで使い物にならず、結局アニメーターが手描きしたシーンの苦労話なども飛び出す。また、メキシコでのロケでスタッフは水に当たり、食中毒に苦しんだが、シュワが平気だった驚きの理由とは? といった現場でのエピソードも明かされる。SF大作のためか、有名TV/映画シリーズの『新スター・トレック』(1987〜1994年)や『スター・トレック/ディープ・スペース・ナイン』(1993〜1999年)、ヴァーホーヴェンの戦争SFの傑作『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997年)などの役者が大挙して出演しているのも注目ポイントかもしれない。

■幻の成人指定版は存在するのか!? TBSラジオ「アトロク」でも副音声特集

『トータル・リコール』という作品は、映画内で起こっている事象が夢か現実かが絶えず論争になってきた。火星に渦巻く陰謀に立ち向かうシークレット・エージェントの物語なのか、それとも単なるプログラムの見せた夢物語なのか、長らく意見が分かれていた。その解釈が観客に委ねられているあたりが“SF版「オズの魔法使い」”と言われる所以でもある。製作側のヴァーホーヴェンとシュワの見解も夢と現実の2つの説で割れている(もちろんシュワは現実派)が、お互いが自説の根拠とした箇所についても副音声で解説。ちなみに、夢か現実かの境界線が露わになる重要なシーンの演出についてヴァーホーヴェンは、なんとアルフレッド・ヒッチコック作品のカメラアングルを参考にしていたという、そんな事実も明かされる。ヴァーホーヴェンは、本作におけるシャロン・ストーンの可愛らしさと悪魔的な二面性を持つ演技を見て、自身の次作『氷の微笑』(1992年)に推薦。シュワも本作以降、正体はスーパーエージェントの『トゥルーライズ』(1994年)、2人の自分が登場する『シックス・デイ』(2000年)などなど、「もう1人の自分」が存在する『トータル・リコール』のような映画を多く手がけ、主演している。そんな関係者のその後についても語られるが、シュワとヴァーホーヴェンが意気投合して企画し、脚本やセットなどもできていたという、幻の中世十字軍映画の企画の話題も飛び出す。これは是非見てみたかった……。
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“幻の”といえば、『トータル・リコール』は元々のレーティング審査では成人指定映画だったが、数々の残酷シーンなどをカットし上映することになった。それらのシーンが入ったバージョンが残っているのではないか? という都市伝説的な話題にも発展するが、ヴァーホーヴェンの出世作『ロボコップ』も後に削除シーンを追加したディレクターズ・カット版が発売された経緯があるのだから、こちらも期待したいところである。また、今回の『副音声でムービー・トーク!』はTBSラジオ「アフター6ジャンクション」の3月30日放送回の特集コーナー「魅惑の副音声の世界へようこそ!」でも紹介されている。番組ではフリーセッション的に副音声を収録している等、『ムービー・トーク!』の魅力をお伝えすると共に、映画ライターの飯塚克味氏、映画監督の三宅隆太氏と共にオススメの副音声も紹介している。名作の裏話、アニメなど意外なものの副音声から、お笑い芸人のコメンタリーまで様々紹介。ぜひラジオクラウドやSpotifyなどで聴いてみてほしい。なお今回の『トータル・リコール』回は、番組の冒頭10分をお試し的にYouTubeで公開中なので、こちらも是非。今後『副音声でムービー・トーク!』は、さらに「こんなのやっていいんですか?」的な大作や名作、はたまた意外な作品が続々と登場予定。乞うご期待である。文:多田遠志<副音声でムービー・トーク!『トータル・リコール』>はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2022年4月放送

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