矢野聖人「王道イケメンも演じてみたかった(笑)」人気ドラマの映画化『劇場版ラジエーションハウス』で意識した“変化”とは

矢野聖人「王道イケメンも演じてみたかった(笑)」人気ドラマの映画化『劇場版ラジエーションハウス』で意識した“変化”とは
矢野聖人
窪田正孝主演のフジテレビ系ドラマ『ラジエーションハウス〜放射線科の診断レポート〜』(2019年)と『ラジエーションハウスU〜放射線科の診断レポート〜』(2021年)の映画化作品『劇場版ラジエーションハウス』が、2022年4月29日(金)より全国公開される。

今回は、『ラジエーションハウスU』放送時に同局同クールのドラマ『SUPER RICH』(2021年)へ出演したことも話題となった、矢野聖人にインタビューを敢行。過酷な医療現場で働く放射線技師という仕事や、劇場版ならではの見どころを聞いた。

■「ドラマからの勢いのままに撮影ができた」

―ドラマ版に続き、劇場版に出演されていかがでしたか?『ラジエーションハウス』と『ラジエーションハウスU』の2本のドラマ作品があって、こんなにすぐ映画化されるのかと、そのスピード感に驚きました。しかもドラマと映画の撮影期間がほぼ一緒だったので、ドラマからの勢いのままに撮影ができました。―劇場版の撮影は、ドラマ版の延長線上だったわけですね?そうですね。スタッフさんは変わってしまうんですが、キャストメンバーは一緒です。ひさしぶりの再集合だと役作りに時間がかかりますが、今回はスムースに演じられました。照明が映画仕様になったことで、いつもの『ラジエーションハウス』のセットとはまた少し違った側面が見え、新鮮でした。映画ならではの緊張感もありました。

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■「台本を読んだときに、自分でも“悠木、どうした?”って(笑)」

―矢野さんが演じる技師の悠木は、機械オタクというキャラです。ドラマ版では徐々に無愛想な悠木の態度がほぐれていきましたが、劇場版で再び悠木を演じて、改めてどんなキャラクターだと思いましたか?『ラジエーションハウス』ではずっと不器用な感じでしたが、『ラジエーションハウスU』でようやく笑うことを覚えますよね。“ロボット悠木”が人間になるんです(笑)。劇場版では、ドラマのファンの方も悠木がさらに人間らしくなっていること、キャラクターの成長を分かってもらえるように演じました。―ドラマと映画では相当表情が変わっていましたが、変化のメリハリはどんなふうに役作りされたんですか?役作りとしては、『ラジエーションハウスU』で悠木のメイン回があったときに、表情を意図的に柔らかくしたり、できるかぎりくだけたアドリブを入れて、もっと悠木の人間の部分が垣間見えるように意識しました。そしてドラマから映画にかけて、そういう部分を周りが受け入れていくようになって、徐々に周りからいじられたり、つっこまれたりするキャラクターに変化していったんだと思います。

―島での治療では防護服を着て大活躍し、他の技師から「どうした?」と言われるほど張り切る姿がありましたね。そうですね(笑)。みなさんのリアクションを受けて僕もそれに反応するように役を作り込み、そのリアクションとしてキャラクターを形成できていると思います。―あの場面では機械オタクの悠木らしさが出た見せ場でしたが、どのように意識して演じていきましたか?台本を読んだときに、僕も「悠木どうした?」ってなりました(笑)。そういう“おいしい”場面を作ってくださったので、純粋に嬉しかったですね。―みんなが防護服を脱いでしまうと、非常に悲しい佇まいでした。そうそう、いつまで着てるんだ? という(笑)。撮影現場では『アルマゲドン』(1998年)の曲をバックに「ゆっくり歩いてみて」とみんなにいじられてました(笑)。でも、そうやって悠木を立たせてくれたことはとても有難いです。

―もしかしたら悠木は、宇宙服を想像していたのかも? と思いました。SFオタクというわけではないのでしょうか?機械パーツが好きだから、SFオタク設定があってもおかしくはないですよね。―山崎育三郎さん演じる圭介が妻に必死で声をかける場面、固唾をのんで見守る悠木がインサートされますが、素晴らしい表情でした。非常に重要なこの場面では、どんなことを意識されていましたか?あのワンショットは、育三郎さんのお芝居に全部持っていっていただいたものです。相手の俳優さんのお芝居が素晴らしいと、こちらもそれに反応できるので、悠木としてどう反応するのか、ということを頭に置いて演じています。―あの場面はまさに、俳優・矢野聖人と悠木が一体化して浮き出したワンショットだったわけですね?そうですね。リアルさを感じていただけたら嬉しいです。

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■「放射線技師の役目を伝えなくては」

―遠藤さん演じる小野寺技師長の「目の前にいる患者に向き合うだけ」という台詞が印象的だったんですが、劇場版では生と死のコントラストがより強調されていますね。印象的な台詞です。お腹の中に子どもがいる人だから助けるのではなくて、その場で何を一番優先しなければならないのか、ということが問われますから。技師の人たちもはがゆさを感じていますが、それを表に出せない職業です。感情が見えないように努め、たとえそれを観た方から冷たいと思われても、それが現実だと伝えることが大事だと思います。

―助からない者と残された者の関係性について、どう思いますか?医療従事者は様々な経験をされて、多くの人の最期を看取ることにもなります。仕事だと割り切ってやらなけばならないこともあるでしょう。僕はお芝居を通して感じているわけですが、こういう仕事を生業としている者として、少しでも多くの方に放射線技師の存在を伝えていかなくてはと感じました。―放射線技師に対するイメージは変わりましたか?最初は放射線技師という職業も、具体的に何をするのかも、どういう資格なのかも全く分かりませんでした。僕と同い年で放射線技師をされている方と対談させていただいたんですが、人を「助けたい」という思いから放射線技師を目指したとを仰っていました。患者さんに寄り添う仕事なんですが、悠木は自分の得意なことを活かす仕事が、たまたま放射線技師だった。だけど、ほんとうはもっと人と関わっていかなきゃいけない仕事だと気がついていくわけです。

―『ラジエーションハウスU』冒頭では、転属先の大学病院から帰ってきますね。でも彼がプライベートで行くのは、ロボットが接客するバーです。相変わらず「極力、人と関わりたくない」という性格が出ていますよね。うまいこと表現するなと思いました。ただそこからしばらく時が経って、劇場版の悠木は、だいぶ人間性が変わっていると思います。―悠木役を演じて、ご自身の価値観が変わった部分はありますか?もう少し、笑顔を作ることですかね。それは意図的でもよくて、仕事をする上でも、普段生きていく上でも、何かと大事なことなんじゃないかなと思うようになりました。悠木みたいな仏頂面よりも、やっぱり笑っている方が、みんな助けてくれる気がします。笑っている人の周りには絶対に人が集まるじゃないですか。逆に言えば、人がいないことがないと思うんです。

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■「小栗旬さんとの共演が、役者としての自分を実感させてくれた」

―別の作品についてもお聞きしたいのですが、『シャーロック アントールドストーリーズ』(2019年:第4話)でのボクサー役、『SUPER RICH』での若手社長役など、話題のテレビドラマ作品での演技が印象的でした。矢野さんの演技には、何か芯の強さのようなものが一貫して感じられるのですが、演じる上で一番大切にされていることはなんですか?ひとつだけ心掛けていることがあります。それが芯の強いイメージに結びついているのかもしれませんが、演じるときに“まばたき”をしないこと。寄りのカットになったときや、真剣なシーンや人が泣いているシーンのリアクションを撮っているときに瞬きが多いと、見ている人の心が離れてしまうと聞いたことがあって。―確かに目力が強いですね。まばたきをしないと言えば、アル・パチーノを思い出します。ぼくは市村正親さんですね。昔なにかの番組で、CM中にまばたきをしないトレーニングをしていると仰っていて、僕も始めました。

―俳優を目指したのは、いつ頃だったんですか?正直に言うと、元々は俳優を目指していたわけではないんです。色々と模索している中で、ひとつのチャレンジとしてお芝居というジャンルにトライしました。そこで様々なご縁があって続けられているんですが、これが自分に合っているのか、いまだに分かってはいないんです。―このあたりから“自分は俳優だな”という実感が湧いた、という作品はありますか?今でもすごく覚えている体験で、『BORDER 警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係』(2014年:テレビ朝日系)というドラマ作品の第7話にゲスト出演させていただいたんですが、主演の小栗旬さんと一対一で言い合うシーンを演じたとき、そう感じました。小栗さんが刑事役で、僕は生意気な大学生役。小栗さんと面と向かっても、ひるまず堂々と芝居ができたんです。そこでまだ伸びるところがあることができると思えましたし、役者としてもっともっと成長したいと思えたんです。

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■「殺す役も死ぬ役もやってきたから、次は宇宙人とか(笑)」

―今後、どのような役柄に挑戦してみたいですか?最近は諦めているところもあるんですが(笑)、ずっと「花より男子」の花沢類みたいなキャラクターを演じてみたいと言っていました。でも30歳になりましたし、もういいかなと。戦略的なところで、新たなファンの方を獲得できたらいいなとは思っています(笑)。犯人役やサイコパスの役は、だいたい演じてきましたから(笑)。むしろ“王道”をあんまり演じていなくて。―エキセントリックなキャラクターは、ほとんど演じられてきたんですね。人を殺める役も、死ぬ役もやってます(笑)。コメディも多いですし、時代劇も経験があります。ないとしたら人間じゃない……宇宙人の役なんていいんじゃないですか(笑)。―では最後に、映画の見どころと読者へ向けてメッセージをお願いします。ラジエーションハウスを飛び出し、劇場版ならではの事件が起こります。内容はとにかく盛り沢山なので、観た方のお楽しみにして頂きたいんですが……。こういう時代だからこそ、医療現場に対して私たちが身近に感じられるようになったこともたくさんあると思っていて、観てくださった方々は、何か心に残して帰ってもらえると思います。ぜひ劇場でご覧ください。

取材・文:加賀谷健撮影:町田千秋ヘアメイク:阿倍孝介(traffic)スタイリスト:徳永貴士『劇場版ラジエーションハウス』は2022年4月29日(金・祝)より全国公開

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