パク・ヒョンシク&ハン・ジミン共演! 視覚障碍者同士の恋を描く短編『二つの光』ホ・ジノ監督インタビュー

パク・ヒョンシク&ハン・ジミン共演! 視覚障碍者同士の恋を描く短編『二つの光』ホ・ジノ監督インタビュー
『二つの光』©Ho Film Co.,Ltd

■パク・ヒョンシク、ハン・ジミン共演の短編

視覚障碍を持つピアノ調律師インス(パク・ヒョンシク)とアロマセラピストのスヨン(ハン・ジミン)。年の差のある2人が、穏やかに恋を育む様を描くホ・ジノ監督の短編映画『二つの光』。

ハン・ソッキュとシム・ウナ主演の切なく静かな恋物語『八月のクリスマス』(1998年)や、ペ・ヨンジュン、ソン・イェジン主演の運命に翻弄される2人の悲恋もの『四月の雪』(2005年)で一世を風靡したラブストーリーの名手ホ・ジノ監督による、『世宗大王 星を追う者たち』(2019年)以来の日本公開作品だ。ホ・ジノ監督に、視覚障碍者の2人の恋を描こうと思ったきっかけについて、短編を撮られたいきさつなどを伺った。

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■「始まりは“視覚障碍者のための補助装置”のPR」

―2017年に撮られた本作。光、音、香りをモチーフに視覚に障碍のある2人の恋を描く、短編映画を撮られた経緯から教えてください。そもそもはテクノロジー企業、サムスン電子からの依頼です。<リルミノ>という視覚障碍者のためのゴーグル型の補助装置を開発したので、それを皆さんに知っていただけるような短い映像を撮ってもらえないかという依頼をいただきました。実際にリルミノ開発者の方にお会いしてお話を伺ったり、補助装置を使うところも見せていただきました。でもサムスン電子としては、宣伝というより、映画によって視覚障碍者の方にこの補助装置の存在が伝わり、実生活に活かしていただければいいという依頼内容でした。―日本公開までに時間が空いたのは、企業からの依頼作品ということもあって、日本など海外での配給を積極的に探さなかったということでしょうか?そうですね。まさかこの作品が映画として日本で公開していただけるとは、想像もしていませんでした。―モチーフが音や光であるところは、リルミノのための作品だとしてもとてもホ・ジノ監督らしいと思いました。ありがとうございます。

―主人公のお2人は、女性はアロマセラピスト、男性は調律師。それぞれ香りと音を職業にしています。この設定にされた理由を教えてください。ストーリーを考えるとき、職業についてはかなり悩みました。映画にも出てくる視覚障碍者の方々の写真同好会や集まりを取材させていただき、いろいろお話を伺いました。そんな中で男性主人公のインスは、ピアニストを目指していた設定にするのはどうだろうと思いついたんです。視覚障碍者といいますと、マッサージ施術師の資格を持つ方がほとんどなんですが、あまりにも多い。他の仕事はないかと探してみたところ、多くはありませんがピアノ調律師の方がいて、お話を伺ったうえでインスの仕事に決めました。女性主人公のスヨンの職業も、多くはありませんがアロマセラピストを仕事とする方がいらっしゃった。視覚障碍者の方は、五感のうちの視覚が弱い代わりに、聴覚や嗅覚がより敏感になると言います。できる職業が限られるなか、アロマセラピストは個性的で、なおかつスキルを活かした仕事だと思って決めました。―アロマセラピストも調律師も、自分だけの香り、音を感じる取ることに秀でた方。その繊細さにそこはかとないエロスを感じました。面白いですね。そういう意図はありませんでしたが、今のお話を聞いて、そういう解釈もいいかなと思いました。今回は短編映画ということもあり、できるだけ明るい物語にしたかった。そういう点でも職業の選択はかなり慎重に行いました。

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■「主人公2人の職業と年齢差が物語をさらに興味深いものにしている」

―監督のラブストーリーは必ずしもハッピーエンドではありません。でも今回に関しては、前を向き2人で未来を描いていくだろうと思う終わり方。そう感じられるのも、この職業であることの功績なのかなと思いました。おっしゃる通りです。香りや音を扱う職業を選ぶことによって、明るいストーリーが描けるのではと思いました。―特に香り。音や光はスクリーンを通して私たちも味わうことができますが、香りはスクリーンでは体験できません。でも分からないからこそ、あの一瞬の香りとはどういうものだったのか、スヨンはどういう香りを作り出したのか、興味をそそられます。アロマセラピストという仕事が、演じたハン・ジミンさんにとても合っていたことも、そんな空気を創ったのかもしれません。

―ハン・ジミンさんとパク・ヒョンシクさんを起用した理由は?ハン・ジミンさんは、『密偵』(2017年)という映画でも非常に印象的で、私は以前から関心を持っていました。彼女は、俳優として多様な魅力を持っています。強烈な個性を持つ強い印象の役から、繊細な役まで幅広い役を演じることができる。今回のアロマセラピストという役にも合いそうだなと思ってお願いしたところ、出演を決めてくれました。パク・ヒョンシクさんは、テレビドラマ『花郎』(2016年)、『SUITS/スーツ〜運命の選択〜』(2018年)で知られていますが、映画への出演経験はあまりありませんでした。実際に会ってみると、とても清らかな印象。見ているだけでこちらが幸せな気持ちになるような善良さが魅力的だと思い、お願いしました。実際にもその印象のとおりの方で、彼がいるだけで撮影現場の雰囲気がとても良かったです。

―そんなハン・ジミンさんとパク・ヒョンシクさんの実年齢は9つくらい離れていますよね。実際に映画も、年上の女性と年下の男性のラブストーリーとして描かれているのかなと思いました。どんな意図から年齢に差をつけられたのでしょうか?もとの台本ではほとんど年齢差のない、同じ世代の2人を考えていました。しかし、最初にハン・ジミンさんが台本を読んで気に入ってくれたので、ちょっと設定を変えたんです。年齢差のあるカップルに設定を変えてみたところ、さらに面白くなったかと思います。―ハン・ジミンさんは当時34歳。その年齢を活かすとすれば、演じるスヨンは自分の置かれている状況を鑑み、人生をどう生きていくか深く考えている年ごろ。その上で彼との恋を前向きに意識する。その意味が、年齢差によって強調されたように感じました。

ハン・ジミンさんはとてもいい演技をしてくれたと思います。
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■「視覚障害者の方から頂いたアドバイスを演技のディテールに反映した」

―この作品で、ラブストーリーの要素として一番強く出そうと考えられたのはどこでしたか?この作品は私にとって久々のラブストーリー。ですので、明るく、そして可愛らしい作品にしたいと思っていました。とはいえ実際には、視覚障碍者の方特有の苦しみや悲しみもあるわけです。でも話を伺うと皆さん思っていた以上に明るく、考え方も前向きでした。そんな皆さんの日常を知ってもらう意味でも、この物語を明るいラブストーリーにしようと決めました。―映画の中で、手を振り合うショットを写真に収めるシーンがあります。見えにくい2人が互いに手を振り合う行為には、どういう意味を意図されたのでしょうか?主人公の2人は徐々に見えなくなっていく設定で、まだ大きな動作であれば認識できる状態でしたので、手を振ることで相手の存在を感じてもらった次第です。その後、リルミノを使うシーンがあるわけですが、その対比にもなればと思いました。

―2人の演技は、表情も含めて一瞬本当に視覚障碍であるように見えるほどでした。どのように演出されたのでしょうか?視覚障碍者の演出は、私たちの想像で出来るものではありません。今回はハン・ジミンさんとパク・ヒョンシクさんに、視覚障碍者の方をインタビューしたときにお会いした、恋愛結婚をされたご夫婦に会ってもらいました。私が途中退席した後も、2人は残ってかなり長い時間、ご夫婦とお話したようです。そのように演技のディテールについては実際に視覚障害者の方からアドバイスいただきました。―一方で実際の視覚障碍を持つ方もキャスティングされていますね?はい。何人かの方に出演していただきました。特に主人公の2人が写真同好会で初めて自己紹介する場面では、多くの視覚障碍者の方に出演していただいています。「まだ視神経が残っているので、昼と夜の区別ができて幸せです」と話された方もそうです。皆さんに自己紹介をお願いしたときにおっしゃった言葉なのですが、すごく気に入ってしまい、そのまま映画に取り入れました。この映画ではそういったリアルさを活かすようにしました。

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―監督はテイクを重ねられることで有名ですが、この作品ではいかがでしたか?短編の場合、撮影期間が非常に短く、テイクを重ねたり、その場でのリハーサル時間を取る余裕がないので無理でした(笑)。でも幸い視覚障碍者の方への取材や、ゲーム好きなハン・ジミンさんと一緒にプレイする中で、主人公の2人が親しくなってくれていたので、撮影はとてもスムーズに進行しました。また、撮影前に一日時間をとってリハーサルしたことも効果的でした。その中で俳優さんたちから台詞のアイデアが出て、状況に応じて変えた部分も結構あります。このリハーサルによってテイクを減らすことができたと思います。

―映画は少し時間が空いてしまいましたが、新作も準備されているのでしょうか?はい。少し前にテレビドラマ『人間失格』(2021年)の撮影が終わって、今また新しい映画を準備しています。―『人間失格』はチョン・ドヨンとリュ・ジュニョルが主演したJTBC10周年特別企画でしたね。新作映画、楽しみにしています。

取材・文:関口裕子『二つの光』は2022年5月13日(金)よりシネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町、 ヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート心斎橋にて公開

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