広瀬すず×松坂桃李『流浪の月』インタビュー!“隠された感情”をどう演じた?『パラサイト』撮影監督から受けた刺激

広瀬すず×松坂桃李『流浪の月』インタビュー!“隠された感情”をどう演じた?『パラサイト』撮影監督から受けた刺激
広瀬すず 松坂桃李
凪良ゆうによる本屋大賞受賞作を李相日監督(『悪人』[2010年]『怒り』[2016年]ほか)が映画化した『流浪の月』が、2022年5月13日より劇場公開。共に過ごしていただけで誘拐事件の被害者と犯人に“された”女子小学生と男子大学生が、15年後に再会。ふたりの魂の彷徨を描く、骨太な力作だ。

過酷な運命を背負った更紗と文に扮したのは、広瀬すず松坂桃李。さらに、横浜流星多部未華子が、更紗と文の現在のパートナーに扮する。様々な事情や闇を抱えながらもがく人物たちを全身全霊で演じきった出演者たち。その稀代のパフォーマンスを引き出したのは、皆でとことん悩み抜いたという入念なリハーサルだった。今回BANGER!!!は、広瀬すずと松坂桃李にインタビュー。リハーサルの秘話を中心に、『パラサイト 半地下の家族』(2019年)の撮影監督であるホン・ギョンピョ、国内の映画美術の第一人者のひとりである種田陽平との協働についても語っていただいた。

■入念なリハーサルで、役と向き合い続けた日々

―『流浪の月』の原作は基本的に更紗や文のモノローグ形式で構成されていますが、映画ではダイアローグ形式です。対話では必ずしも本音を伝えるわけではないし、あえて言わないこともある。そういった意味では、役の心情表現に難しさがありますよね。松坂:自分の心情や思考をモノローグというセリフで表現するのではなく、ただただ実感の積み重ねでした。これが本当に難しかったです(笑)。文が更紗と離ればなれになって15年間どう過ごしていたかは断片的にしか描かれていませんし、どうやったら実感を得られるのか、とにかく考えて試行錯誤し続けた日々でした。広瀬:そうですね、映画の方が隠されている部分が多いから、どう自分から出していけばいいのかは模索しました。私は原作をずっと現場に持っていって、前日のシーンを自分が引きずりすぎてしまっているときなど、感情の整理のために読み返していました。考えすぎてわからなくなってしまったときに、更紗を理解するヒントを示してくれる道しるべのような存在でした。

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―撮影前もそうですし、撮影期間も出演者と監督でリハーサルを行う→スタッフが入って撮影する、といった過程を踏んだと伺いました。リハーサルは、例えば一つのシーンを通しでやってみるのか、都度都度止めて作っていくのか、どういった形式でしたか?松坂:通しでやってみて、そのあとディスカッションをして、また最初から通しでやる感じでした。部分的なリハーサルではなく、頭から終わりまでやってみて繰り返す形でした。広瀬:でも、「こうしよう」と決まりは作らないんです。松坂:うんうん。「何かを見ている」「歩いている」や点描以外、会話があるシーンは全てリハーサルを行ったんじゃないかな?

広瀬:亮くん(横浜流星)が更紗に暴力をふるうシーンに関しては、動きの確認だけでした。流星くんの運動神経が高すぎて、「動けない人」の蹴りを習得するのに時間がかかっていましたが(笑)。松坂:流星の身体のキレが良すぎて……。広瀬:まっすぐ綺麗なキックが出ちゃうと普段からスポーツをやっている人に見えちゃうから、突発的に出たように見せるための練習時間が一番長かったです(笑)。

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■自然と気持ちがざわついた広瀬・松坂・横浜の共演シーン

―お三方のシーンですと、更紗・文・亮がcalico(文が働くカフェ)で初めて対峙するシーンの緊迫感がすさまじかったです。松坂:あのシーン、怖いですよね。やっている最中、僕の心もざわざわしていました(笑)。ただ、やっぱり表には出せないので、ざわざわが出ないよう必死に自分の中でぐっと押さえながら演じました。―会計時の亮のお金の置き方もすごく……広瀬:嫌でしたね……(笑)。松坂:あれは、李さんが「こうやってみて」とリクエストされていました。

広瀬:実際に亮くんがお会計するところを見ていたら「ちょっとそれは……。文だぞ、やめてよ」って自然に思えました(笑)。松坂:(笑)。広瀬:あのシーンでは、流星くんがずっとこっちを見ている状況を作ろうと思っていました。だから撮影の合間も桃李さんとなるべく話そうとして。再会して初めて文の前で「更紗」という名前が出る重要なシーンでもありましたし、どこか自分の目が頭の後ろについているというか、視線や気配をすごく感じていました。

―いまお話しいただいた部分然り、シーンの内容はリハーサルの中で大きく変化したのか、それともじっくり煮詰めていく形だったのか、どういったものだったのでしょう?松坂:テンションは変わらなかったですね。広瀬:そうですね。一番リハーサルを重ねたのは、最後のシーンです。撮影後にみんなで残って、2日間くらいかけてじっくり作っていきました。それで、本番は一発OKだったんですよね。あれはびっくりしました。松坂:そうだったね。もちろん出し切ったけど、リハーサルを重ねたぶん「え、一発でOK!?」という感じで(笑)。うまくいったかどうかは、監督の李(相日)さんと撮影監督のホン(・ギョンピョ)さんだけが知っている(笑)。

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■『パラサイト』撮影監督から受けた刺激

―松坂さんは「ホンさんの撮影スタイルが非常にゆったりとしていて、焦らずに済んだ」とおっしゃっていましたね。松坂:ホンさんは非常にフレキシブルな方でした。文が10歳の更紗(白鳥玉季)と公園で出会ってアパートまで一緒に行くシーンの撮影日に台風が来ていて「これは中止だろうな」と思っていたら、「撮るよ!」って(笑)。粘って粘って一瞬雲が抜けた瞬間を捉えて「今日もOK!」と笑顔を見せていました。他にも撮り終えたシーンを「やっぱりもう一回撮りたい」と撮り直すこともありました。

スケジュールを組み立てる助監督さんは大変だったかと思いますが、それも全部見事に対応してくださって、現場自体がひとつの生き物のように連動していました。一度、テストが終わってこのまま本番に行くのかなと思ったら、本番前にカメラの位置がごっそり変わっていることもあって。どう撮られているかわからず、どういう完成形になるんだろう? と撮影時からワクワクしていました。実際に完成した作品を観たら、キャラクターそれぞれの細かい部分をちゃんと切り取られていて、このアングルだとこう伝わるんだ! という面白さもたくさんあって。この現場に入れて、本当に良かったです。

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―揺らぐカーテンのカットで更紗の現在と過去がつながったり、後半の家の中から庭を見つめるシーンが『パラサイト 半地下の家族』を想起させたり、映像面でも驚きがたくさんありました。広瀬:ホンさんは直感がすごく鋭い方だと感じました。現場を見ていて「違う」と思ったらすぐ言葉にされていましたし、“1日に30分くらいしかこの光の具合にならない”というものも何日もチャレンジして撮影されていて。作品や映画というもの自体に対して、すごく愛情を持っていることが伝わってくるんです。

―美術の種田陽平さんの空間づくりも素晴らしかったです。広瀬:種田さんとは『三度目の殺人』(2017年)でもご一緒したことがあるのですが、いつも肌なじみがすごくいい空間を作ってくださいます。calicoの床の踏むとキシキシ音が出る感じとか、すごく好きです。しかもその空間にいると、ちゃんと文がすべてを触っている感じが見えてくる。「これは更紗も来ちゃうよな」と素直に思えました。

取材・文:SYO撮影:落合由夏・広瀬すずヘアメイク:奥平正芳スタイリスト:丸山晃

■シューズ?148,500(Christian Louboutin (クリスチャン ルブタン)/Christian Louboutin Japan (クリスチャン ルブタン ジャパン)??03-6804-2855)、ピアス?9,680(片耳)(KONWHOW(ノウハウ)/KONWHOW juwelry(ノウハウ ジュエリー)??03-6892-0178)、その他スタイリスト私物

・松坂桃李ヘアメイク:AZUMA @ M Rep By Mondo Artistスタイリスト:丸山晃

■シューズ?74,800(JIMMY CHOO(ジミー チュウ)/JIMMY CHOO??0120-013-700)、その他スタイリスト私物

『流浪の月』は2022年5月13日(金)より全国公開

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