王道ロマコメは何度でも観たくなる! ヒュー・グラントの魅力がたっぷり詰まった『ノッティングヒルの恋人』
2022年06月10日 11時30分 BANGER!!!
■ヒュー・グラントLOVE
この世の中にはヒュー・グラントにしか演じられないヒュー・グラント役というものがあると私は思う。ちょっと気弱で優柔不断、だけど正直で愛すべきいい奴、しかもハンサム。彼はもとより、両作の脚本を担当した、『ミスター・ビーン』シリーズ(1997年ほか)のクリエーターでもあるリチャード・カーティスの生み出す世界と、その登場人物たちが大好きなのだから仕方がない。■“出会い”のお手本はコメディの名手ビリー・ワイルダー?
ロマンチック・コメディで最も大切なのは“出会い”である。『お熱いのがお好き』(1959年)などで知られるコメディの名手ビリー・ワイルダーに、こんなエピソードがある。ワイルダーはナチスの台頭でオーストリアからアメリカに逃れた人だが、ハリウッドで頭角を現するきっかけが、大監督エルンスト・ルビッチの『青髭八人目の妻』(1938年)で、男女の出会いに卓抜なアイデアを出したことだった。それは、とあるデパートで男が店員に「パジャマの下だけ買いたい」と押し問答をしていると、「パジャマの上だけ買いたい」という娘が現れ、二人が仲良くパジャマの上下を買い分けることになる、というものだ。パジャマという、ちょっとエロチックなアイテムを出会いの鍵にしたところが秀逸である。それに比べると『ノッティングヒルの恋人』の出会いはパンチに欠けるが、それはヒュー・グラント演じるウィリアムのパーソナリティに合わせたからだと私は思う。それは、こんな風に行われる。ウィリアムの店に入ってきたアナがトルコの旅行書を物色していると、正直者のウィリアムは、彼女が見ている本よりも優れていると思われる本を薦める(実は彼女が見ている本には著者のサインが入っていて、ウィリアムの知り合いが著者だったという落ちがある)と、店内の防犯カメラに万引き犯が映っているのに気づき、注意に行く。このときの彼の台詞が、ウィリアムの誠実さとユーモラスな性格が滲み出た、さすがリチャード・カーティスという台詞で、アナが彼に好意を持つきっかけとなる。■よく出来たロマンチック・コメディは何度見ても楽しい
さて、主人公たちが恋に落ちるには1度出会っただけではダメ、必ず2度目が必要だ。『ノッティングヒルの恋人』の場合、それは数分後に訪れる。書店の経営が赤字で、お金がないために1杯のカプチーノを店員のマーティンと半分ずつ飲むことにしたウィリアム。当然のことながら物足りないのでオレンジジュースを買いに行き、通りの角でアナにぶつかってジュースを彼女の胸にぶちまけてしまうことになる。
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