磯村勇斗が初主演映画『ビリーバーズ』撮影秘話を語る!「主演に挑戦するなら“変で面白い”作品がいい」【前編】

磯村勇斗が初主演映画『ビリーバーズ』撮影秘話を語る!「主演に挑戦するなら“変で面白い”作品がいい」【前編】
磯村勇斗

■磯村勇斗、初主演映画を語る

2022年に『ヤクザと家族 The Family』、劇場版『きのう何食べた?』の2作品で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した俳優・磯村勇斗。その評価に偽りなし、2021年は年間17作品もの映画やドラマに出演し、その勢いは止まるところを知らない。さらには短編映画『アクターズ・ショート・フィルム』(2021年)の一篇「機械仕掛けの君」で監督にも挑戦し、撮られる側から撮る側へと精力的に活動の幅を広げている。 抜群の演技力とビジュアルを兼ね備え、今や日本映画界に欠かせない存在の磯村だが、2022年7月8日(金)に公開される『ビリーバーズ』(監督:城定秀夫)が意外なことに映画初主演だという。

1999年にビッグコミックスピリッツ(小学館)で連載された山本直樹による同名漫画を原作とする本作は、あるカルト集団に所属する「オペレーター」「議長」「副議長」の3人が、無人島での精神修行実験によって精神が崩壊し、性への暴走がはじまる……という本能的欲望と人間性に切り込んだ衝撃作。磯村は「オペレーター」に扮し、純粋な信仰心と抑えきれない欲望の間で揺れ動くという混沌とした人物を見事に演じてみせた。 バイオレンス味あふれる『ビリーバーズ』で初主演を努めた想いや、映画人生の始まりとなった自主監督作品について、そしてハマり続けているというゾンビ映画への愛などを前後半にわたってお届けする。

■「手探りの撮影が熱量に変換された」

―『ビリーバーズ』は相当振り切った内容だったと思いますが、オファーを受けた時の気持ちを教えてください。 最初はビックリしました。お話をいただいてから原作を読んだのですが、これはどうやって映像化するのだろうと正直不安でしたね。でもそれ以上に初めて主演に挑戦するなら、変わっていて面白いものがいいなという単純な好奇心があって。

撮影をしたのが去年の夏頃だったのですが、自分の中にあった気持ちのモヤモヤがちょうど突き抜けた後で、主演作に挑むのにとてもいいタイミングだなと感じました。その当時は色々な作品が重なったり、次々に色々なことに挑戦させていただいていたので、あっという間に日々が過ぎていたんです。そうして走ってきたおかげでいい作品や、いい監督との巡り合わせがあったり、ガムシャラにやってよかったなという時期でしたが、そのぶん自分は何をしたいんだろう? と見失う瞬間もありました。消費されていく感じというか、やりたいけれど自分自身が追いついていかないような感じで。とにかくアウトプットをするだけの作業みたいになっていたんです。そんなクエスチョンが大きくなり俳優という仕事を見つめ直していた中で、『ビリーバーズ』は自分自身も演じることを楽しみにしていたので、切り替えてやっていこう! という思いで臨みました。

―原作の無人島に近いシチュエーションで撮影されたとのことですが、ハードな部分も多かったのではないですか? そうですね、環境的な部分ではずっと雨が続いたことが厳しかったです。舗装されていない道がドロドロになって予定通りの撮影ができず、どうやってその道を映さないようにしようかとか、水捌けをよくするために工夫したり、とにかく撮影チームのみんなで色々と試しながら作っていました。でもその手探りな感じが、一本の映画をみんなで作っているという熱量になっていたように思います。とにかく時間がなかった中で、城定監督の撮るスピードや選択の速さが、やっぱりすごいなと。監督は、こういう風にすればいいという画が見えているので、基本的には一発撮りが多かったですね。本番に賭ける、みたいな緊張感が作品にも繋がっているんだと思います。 作品の内容もカルト集団を扱っていて、ほとんど3人しか出てこないので、どうやって共演する2人との距離感を作っていくかを考えました。撮影に入ると、議長役の宇野(祥平)さん、副議長役の北村(優衣)さんとの組み合わせの相性がよくて、すごく仲よくなったんです。この3人じゃなかったら出来ていなかったと改めて思いますね。それくらいお互いに手を取り合い、楽しみながらこの作品に取り組んでいました。肉体的には大変なことが多かったですが、みんなで面白がって撮影していました。

■「いい選択をするために一歩引いた目を持っていたい」

―3人の距離感も近く、最近の日本映画にはあまりない攻めた絡みが多かったですが、それは城定監督が意識されたことだったんですか? おそらく監督も制作チームも含めて、今まで作ったことのないところに踏み込みたいという気持ちがあったと思います。でも山本直樹さんのしっかりとした原作があるので、その世界観を壊さず、根強いファンの方たちを裏切らないようなシーン作りや演出を考えていたのではないでしょうか。結果的にはR15なのですが、R18になってもいい! くらいの気持ちでハードなシーンに臨んでいました。共演した北村(優衣)さんも撮影前から覚悟が全然違っていて、変に気を遣わずに演じられました。やはり出演者の中では、女性がほぼひとりなのでしっかりケアをしなければと思っていたのですが、彼女の根っこにある「芝居してやる!」という強さにむしろ助けられました。

―本作が映画初主演とのことですが、普段の現場との感覚の違いはありましたか? 本来ならば座長として先頭に立つということなのかもしれませんが、俯瞰している時の景色はまったく同じでした。僕は「一歩引いて見る」ということを大事にしているので、どんなポジションであっても「自分の視点」と「引いた視点」を常に意識していて、今回も普段と変わらないように臨んでいました。主演の役目として意識したのは、みんなが気持ちよく撮影ができるように、気になるところを相談していくことでしょうか。現場全体を良くしていくというか、芝居以外のケアを一緒にできるのが主演俳優でもあるのかなと。結局、作品の中で考えると主演とか脇役とかって言葉はない世界なので、そこでのテンションはあまり変わらないかもしれません。 多分、僕の性格なんだと思いますが、基本的に物事全体を見るタイプで、気を遣っちゃうんです。いい選択をするために引いた目を持っておかないと、と思っている部分もあるので、俳優部以外の皆さんの動きも気になります。ここにカメラがあって、カメラに映ったら自分はここにいるのかな、とか。映画作りをしている時は目の前に仮想空間ができて、そこで色々と判断しているような感じでしょうか。

取材・文:稲田浩 撮影:大場潤也 ヘアメイク:佐藤友勝 スタイリスト:齋藤良介

■kenichiのシャツ ¥24,000(サカスPR ☎︎03・6447・2762)、DISCOVEREDのニットベスト ¥39,600(ディスカバード ☎︎03・3463・3082)、All Bluesのブレスレット ¥53,900(エドストローム オフィス ☎︎03・6427・5901)、その他スタイリスト私物

『ビリーバーズ』は2022年7月8日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次公開

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