韓国兵役の闇をエンタメで斬る! Netflix『D.P. -脱走兵追跡官-』チョン・ヘイン×ク・ギョファンでシーズン2も進行中

韓国兵役の闇をエンタメで斬る! Netflix『D.P. −脱走兵追跡官−』チョン・ヘイン×ク・ギョファンでシーズン2も進行中
Netflix『D.P. −脱走兵追跡官−』独占配信中

■2014年の韓国、2つの事件

この作品は設定が非常にユニークだ。脱走兵の追跡確保を任務とする部署「D.P.」が物語の舞台。「D.P.」はDeserter Pursuitの略で、「脱走兵追跡」という意味である。 したがってストーリーは、脱走兵を標的とした捕物だ。基本的に1話につき1人の脱走兵の追跡が描かれている。

作中で描かれる脱走兵の多くは、理不尽なイジメに耐えかねて脱走を実行する。徴兵制と軍隊内部のイジメという、韓国人男子の過酷な宿命が真っ正面から描かれていて、きっと彼らは非常に共感したことだろう。

物語は、2014年に主役のアン・ ジュノ(チョン・ヘイン)が入隊するところから始まる。この2014年に、韓国の軍隊内では大きなふたつの事件が発生している。 ひとつは、20歳の兵士が数十回にわたり暴行を受けて死亡した事件(漣川後任兵暴行致死事件)。もうひとつは、執拗ないじめを受けていた兵士が銃を乱射して5人を殺害した事件(江原道高城郡兵長銃乱射事件)だ。いずれも韓国社会に大きな衝撃を与えた。本作は、この2つの事件を意識して創作されていると思われる。

■あくまでエンタメ。チョン・ヘイン×ク・ギョファンの好相性

この物語のユニークな設定は、韓国社会が抱える非常に暗い現実から生み出されたと言える。にもかかわらず驚くのは、重い題材を扱いながら、作風は軽やかでエンターテインメントに富んでいることだ。

このドラマはエンタメ作品で、非常に楽しく鑑賞することができる。作品の軽妙さは、第2話よりアン・ジュノとバディを組む、ク・ギョファン演ずるハン・ホヨルが登場することで急速に加速する。作品の持つおかしみは、ク・ギョファンが元来持っているコミカルさに負うところが大きい。 また、この作品は追跡官が脱走兵を追いかける、いわば「チェイスもの」であり、「チェイスシーン」こそエンターテインメント作品の王道であり、設定自体が娯楽作品に合っているといえる。そして、チェイスシーンこそ近年の韓国作品が最も得意としている分野である。

本作品は「カーチェイス」ではなく「ランニングチェイス」が中心であるが、そのカメラワーク、舞台、画のアイディアなど、恐れ入りましたの圧巻の出来栄えである。

■兵役描写のディティールと韓国の若者文化

ストーリーの本筋と離れて、この作品において、私が興味を惹かれたのは、韓国の若者の暮らしぶりが垣間見られる点だった。 軍隊で兵隊たちが暮らす部屋。兵役経験がある出演者があまりのリアルさに舌を巻いたというその部屋は、プライベートなどないタコ部屋で、1人に当てられた就寝スペースも非常に小さい。

そのほか、脱走兵が身を隠すために度々登場する24時間営業のオンラインゲームカフェ。金持ちの若者が遊ぶ高級カラオケボックス。漫画オタクが集まるインディーアイドルのライブ会場。 兵役に就く若者が主役のドラマだけあり、若者の現代風俗が描かれていて、日本ととてもよく似ているけれど、どこか少し違う。そんな社会・文化の様子が面白かった。

■感涙メロドラマから社会派サイコ劇まで内包

前述した通り、この作品はエンターテインメント作品である。しかし各話によって、その様相はカメレオンのように変わる。その変化に違和感がないことが本作品の最大の個性であり、魅力なのかもしれない。

娯楽性の高いエピソードでは、メロドラマと言っていいほどの、感動の人情噺が収められている。一方で、破廉恥なイジメのシーンなどは、人間の暗部を描いたサイコホラー作品だ。そのイジメの問題を告発する、社会派作品としての意義も間違いなく備えている。

そして、2話にわたって同じ脱走兵を追う、シーズン1の最後のエピソードとなる第5~6話は、それまでの軽妙さを脱ぎ捨てて非常に陰鬱だ。そして背筋も凍る衝撃的なラストシーン! シリアスな分だけ、前のめりに作品に没入できること請け合いである。

シーズン1は、各50分あまりの6つのエピソードで構成されていて、基本的に1話完結なのも、とっつきやすい。連続ドラマシリーズ鑑賞にありがちな「挫折」もなく観られるだろう。

文:椎名基樹 Netflix『D.P. -脱走兵追跡官-』独占配信中

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