未公開シーン大量投入!『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』にスタローンが込めた良心とは? 生まれ変わった闘いのドラマに泣け!!

未公開シーン大量投入!『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』にスタローンが込めた良心とは? 生まれ変わった闘いのドラマに泣け!!
『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』©︎2021 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

■米ソ冷戦を反映しまくったオリジナル版

やっぱりスライは裏切らなかった。年間ベスト級の一作だ。要は『ロッキー4/炎の友情』(1985年)だろ、新作じゃないだろって? いや、この『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』は、限りなく新作に近い。大ヒット作『ロッキー4』をベースに、大量の未公開シーンを加えて監督・主演のシルヴェスター・スタローンが再編集。上映時間94分のうち、実に42分が未公開シーンなのだから印象が変わって当然だ(加えて4Kデジタルリマスター、ワイドスクリーン、5.1chサラウンド)。

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オリジナル版が日本で公開された1986年、筆者は中学2年生だった。映画館で見て夢中になった。ロッキーはもちろんだが、敵として登場するソ連のボクシング・マシーン、ドラゴがまたカッコよかった。闘うことしか知らない男。相手を倒すことしか許されない男。たまらないにもほどがあった、中2には。思わず筋トレに励みましたよ、ええ。

筋トレは三日坊主だったが映画はずっと見続けた。まあその頃から、大好きな『ロッキー4』が決して大傑作ではないことも分かってはいた。当時は東西冷戦の時代。アメリカの大統領はタカ派のレーガン。時代の波に乗って、ロッキーもソ連に乗り込む。家族を愛し、人情味たっぷりのロッキーが死闘の末に冷酷な相手をノックアウト。ソ連の観客もロッキーに声援。勝ったロッキーは大演説。「今日、2人の男が殺し合いをした。だけど2000万人が殺し合いをするよりましだ」

それまで徹底的にソ連を“敵”として描いておいて、その代表をぶっ倒してこれ。演説というより説教だった。ご丁寧にロッキーは星条旗を身にまとう。これでもかの“アメリカ万歳”は、田舎の中2にもウザかった。ゴルバチョフ似のソ連書記長までロッキーの演説にスタンディングオベーションって、そんな都合いいわけない。ドラゴがカッコよかったから、なおさら「そういうとこだぞ……」となった。
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■「当時の俺は何を考えていたんだ? って凹むこともあった」

そんなわけで『ロッキー4』は“80年代筋肉(バカ)アクション”の一つとして位置付けられることに。それでもこの映画は、自分たちの世代には特別だった。スタローンは『ランボー/怒りの脱出』(1985年)及び『怒りのアフガン』(1988年)も含めて調子に乗りすぎたのか、その後どん底の時期を味わう。

ドラゴを演じたドルフ・ラングレンも、一枚看板としては大ブレイクとはいかなかった(とはいえビデオショップの定番としてしぶとい人気はあったと、大学時代ビデオショップでバイトしていた筆者は感じる)。時代は巡り、スタローンは『ランボー 最後の戦場』(2008年)、『ロッキー・ザ・ファイナル』(2006年)で復権。『エクスペンダブルズ』(2010年)では筋肉アクションへの愛を高らかに歌い上げた。そして『クリード チャンプを継ぐ男』(2015年)での『ロッキー』シリーズ再構築。『クリード 炎の宿敵』(2018年)ではドラゴとその息子も登場し、ロッキーに敗れた男の屈辱を直視した。

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実は『ロッキー4』にも、ドラゴの胸中を垣間見せるシーンがあった。アメリカに乗り込んでのアポロ戦、極度にショーアップされたアポロの入場に戸惑い、徐々に怒りを感じ始めるドラゴ。簡単に言えば「試合ナメてんのか」ということだ。ジェームス・ブラウンのパフォーマンスは楽しいものの、感情移入するのはドラゴだ。ロッキー戦での「俺が闘うのは俺のためだ!」も忘れられない。

そこにスタローンの良心のようなものがあるんじゃないかと思ってきた。中2の頃からずっとだ。そして50歳になる今年、スタローンから『ロッキーVSドラゴ』という答え合わせが贈られてきた。そこに大量投入されていたのは、撮影はされていたが『ロッキー4』では使われなかったスタローンの良心だ。再編集を経て彼は言う。
ドラマの中身に重点を置きたかったんだ。登場人物の心に注目して、より感情的に、より責任感を持って。何故このシーンを使っていない? 当時の俺は何を考えていたんだ? って凹むこともあった。今考えると使うべきシーンは明確だから。当時の自分の人生観に疑問をもったよ(笑)。

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■こんな場面も撮っていたのか! ドラゴにも寄り添う『真ロッキー4』

アポロはどんな思いでドラゴ戦に臨んだのか。リングで死んだアポロの葬儀、ロッキーが涙ながらに語った感謝とは。やはりこれはアメリカとソ連の代理戦争なんかじゃなかった。編集が変わって浮かび上がるのは、男たちが闘う理由だ。闘わなければ生きていけない男たちがそこにいる。

もちろんドラゴも、だ。いかに冷酷でも、ファイターとしての心はある。アメリカでの記者会見、あからさまに“敵”扱いされる居心地の悪さをはじめ、映画はオリジナル版以上にドラゴに寄り添っていく。ファイトシーンの細かい編集の違いにも注目してほしい。そして試合後の場面でも、スタローンは丁寧に映画の意味を変えていく。ラストカットの違いは特に大きい。

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いや本当に「こんな場面撮ってたのか」という驚きの連続。『ロッキー3』の続きであるということも強調されていて、つまり今後はこの『ロッキーVSドラゴ』がシリーズの“正史”ということになるのかもしれない。それだけの重みを持った作品だ。ただリアルタイム世代としては、ダサくて無駄なシーンがあっても、80年代の空気感が伝わるオリジナル版も捨てがたい。こっちはこっちで見続けたいとも思うのである。もちろんそれは『ロッキーVSドラゴ』あってこそなのだが。

文:橋本宗洋『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』は2022年8月19日(金)より全国公開

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