SNS実話スリラー『Zola ゾラ』 「A24に太鼓判をもらえて夢のよう」新鋭ジャニクサ・ブラヴォー監督にインタビュー!

SNS実話スリラー『Zola ゾラ』 「A24に太鼓判をもらえて夢のよう」新鋭ジャニクサ・ブラヴォー監督にインタビュー!
『Zola ゾラ』© 2021 Bird of Paradise. All Rights Reserved
2022年で設立10周年を迎えるA24。本国ではミシェル・ヨー主演、『スイス・アーミー・マン』のダニエルズ監督による『Everything Everywhere All at Once(原題)』が史上最大のヒットを記録し、『Marcel the Shell with Shoes On(原題)』に絶賛評が相次ぐなど、ますますの成功を収めている。 日本では、AppleTV+と組んだ『マクベス』(2021年)に続き、『カモン カモン』(2021年)『X エックス』(2022年)『LAMB/ラム』(2021年)『アフター・ヤン』(2021年)『グリーン・ナイト』(2021年)等々、A24作品の公開が続く。2022年8月26日に公開される『Zola ゾラ』も、そのラインナップの1本だ。

本作は、ある女性が自分の体験談を綴った148のツイートから生まれた物語。ウェイトレス兼ストリッパーのゾラ(テイラー・ペイジ)はある日、知人のステファニ(ライリー・キーオ)から「大金を稼ぐ旅に出ないか」と誘われる。しかしそれは、悪夢の始まりだった……。 A24らしい攻めた内容と、社会性をはらんだスリラーを作り上げたのは、俊英ジャニクサ・ブラヴォー監督。<miu miu>もほれ込んだその才能の一端を、単独インタビューで語ってもらった。

■演劇ルーツの空間演出

―ジャニクサ・ブラヴォー監督は、ご自身の作風を「ストレスコメディ」と評されていました。非常に秀逸な表現だと感じたのですが、どのようにしてそのスタイルに行きついたのでしょう? 元々、大好きな演劇評論家のアーヴィング・ワードルがハロルド・ピンターの初期の戯曲および演劇作品を「脅威の喜劇(Comedy Of Menace)」と評したことを知り、感銘を受けたことが始まりです。「バースデイ・パーティ」「部屋」等に見られるピンターの作風を私自身の中に変換していったところもあるかなとは思いますが、自分の作品に出てくるキャラクターは何かしらの形で自分自身の断片ではあるし、ストレスコメディは無意識的に生まれたものだと感じます。 映画学校に通っていない自分が映画監督として何をやりたいか? となったときに、自然とたどり着いたのがコメディでした。私自身、たとえドラマティックな瞬間であってもユーモアがあるものが好きなんです。セリフによって笑えるものではなく、置かれている状況自体に笑ってしまうというか、ちょっと引いた目線の作品に惹かれるんですよね。

―いまのお話は悲喜劇や不条理劇にも通じますね。ブラヴォー監督はルーツに演劇の素養が大きいかと思いますが、2011年の初短編『Eat(原題)』から風刺コメディ『Lemon(原題)』、そして『Zola ゾラ』に至るまで空間演出も印象的です。『Zola ゾラ』でも引いた目線で居心地の悪さを生み出していましたし、<miu miu>の短編『House Comes With A Bird』もそうかと思います。 仰っていただいたとおり自分のルーツは舞台にありますし、最近の仕事は映像寄りではあるものの「演劇の監督だ」と自認しています。映像を作る際も、観客と役者の間にある壁は非常に薄いものだと思って演出をしていますね。演劇は観客の前で演じられるものですが、映像もまた流れる際に観客はそこにいる。人がいないシーンであれば別ですが、例えばその空間に「入っていく」ようなアプローチを入れたり、基本的には観客がその部屋にいる気持ちになれるように空間を演出しています。 空間はストーリーテリングの一部ですし、この空間があるからこそキャラクターが動ける。スペースが仮にないとしたら、それもまたキャラクターの行動に影響を与えますよね。

■補助的ではないナレーションの意図

―ドキュメンタリー性やリアルタイム性もありますよね。特に『Zola ゾラ』では、そのことがリアルな恐怖に繋がっていました。 観客の体感ということでいうと、実は最初のバージョンではナレーションはありませんでした。ナレーションがなくても観客が付いてこられるようにしたいと思っていて。 ただ、『天国の口、終りの楽園。』(2001年)のナレーションのように使う(第三者的な俯瞰の目線で状況を語る)と、少なくとも一人は生き延びたんだなということがわかって、観客が安心して解き放たれる効果があると感じたんです。

―なるほど。ナレーションで緩和するというか。 はい。それがないと、もっとキツい映画になっていたのではないでしょうか。今回はそういう意図でナレーションを使っていて、何かが足りないから補うような、バンドエイドや松葉杖のような補助的なものとは別物です。

■A24に言われた言葉が制作の原点に

―“キツい”部分に通じるかもしれませんが、本作が内包するテーマ性は非常に深刻なものだと感じます。例えば「ゾラがステファニより露出が多いのは、黒人はより“努力”を求められるからという皮肉」という記事も読みましたし、性暴力・搾取の問題もはらんでいる。そういったシリアスな側面のある作品の間口を広げたのはブラヴォー監督の手腕と、A24の存在ではないでしょうか。 間違いなくそうだと思います。A24の作品であるということで太鼓判が付いた状態になりましたし、観客の見方も変わったと感じています。私自身にとっても、「A24と仕事をした」と言えるのはとても大きな出来事でした。まさに夢のようでしたね。 『Zola ゾラ』に関しては、2017年の春に当初予定されていた監督が外れたことで、候補の一人に選ばれました。そこから私に決定したときに、A24のプロデューサー陣が言ってくれた言葉が本作の原点になりました。彼らは「他の候補者ではなく、『Lemon』を作ったジャニクサ・ブラヴォーによる『Zola ゾラ』が観たい」と言ってくれたんです。すごく嬉しかったし、自信にもなりました。A24とは美しいパートナーシップを築けましたね。

取材・文:SYO 『Zola ゾラ』は2022年8月26日(金)より新宿ピカデリー、渋谷ホワイトシネクイントほか全国公開

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