濃厚解説! Netflix『サンドマン』 DCの原作コミックを理想的に映像化!! ドラマ版の推しポイントも

濃厚解説! Netflix『サンドマン』 DCの原作コミックを理想的に映像化!! ドラマ版の推しポイントも
Netflix『サンドマン』独占配信中
Netflixで配信されるやいなや大きな話題をさらったアメコミ原作ドラマの『サンドマン』。コミックは傑作中の傑作として極めて評価の高い作品で、それが作者が参加する形でついにドラマ化ということで大いに期待していたのだが、それを遥かに超えてくる本当に素晴らしい作品だった。

■原作コミック「サンドマン」とは

ドラマの話に入る前にまず、原作コミックの「サンドマン」について簡単に紹介しておこう。 「サンドマン」とは、1989年からバットマンやスーパーマンでおなじみのDCコミックスで刊行がスタートしたコミック・シリーズで、著者はニール・ゲイマン。今となってはドラマ化された『アメリカン・ゴッズ』(2017年~)や『グッド・オーメンズ』(2019年)でおなじみの作家だが、彼を有名にしたのはこのコミックシリーズだった。

ニール・ゲイマンの「サンドマン」はアメリカの著名な漫画賞である<アイズナー賞>を多数受賞しただけでなく、小説などを対象としたアメリカのファンタジー文学賞である<世界幻想文学大賞>をコミックとして異例の受賞を果たしたほどの作品で、普段コミックを読まない人たちの間でもヒットしベストセラーとなった。 The Sandman: The Deluxe Edition Book One 「サンドマン」は1989年から始まったものの、サンドマンという名前を持ったキャラクターの歴史は長く、DCコミックで初めて登場したのは、1939年のAdventure Comics誌だった。こちらのサンドマンはヨーロッパの伝承に登場する睡魔(ザントマンとも)から名前を借用しているものの、グリーンのスーツに中折れ帽、ガスマスクというパルプ小説風の姿で催眠ガスでもって悪と戦う男だった。そのデビューはバットマンより1ヶ月早いので、(一応)先輩ヒーローだ。 このサンドマンはその後、ジャスティス・リーグの前身で、2022年12月2日公開の『ブラックアダム』にも登場するDCコミックスのスーパーヒーローチーム、<ジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカ>の創設メンバーとなる。決してニール・ゲイマン版ほど有名ではないものの、以降のコミックにも度々登場している(ゲイマン版の中でも言及があるが、そのあたりはドラマでは割愛されている)。 それから2度ほど新たなサンドマンが登場した後、ニール・ゲイマンが“夢”を擬人化した、それまでとは別人のサンドマン“ドリーム”が生み出される。彼は死、欲望、絶望など自然の力を体現した“エンドレス”と呼ばれる者の一人で、人が神を創造する前から存在し、計り知れない力を持つ。 そんなドリームを主人公としたニール・ゲイマンのシリーズ「サンドマン」は、他のDCコミックス作品と世界観は共有しているもののスーパーヒーロー要素は非常に薄めで、史実や神話・伝承を巧みに絡めながら、人にとって“夢”とはなんなのか? ということを掘り下げていくダークファンタジーである。

先述の通りシリーズは大好評で、1993年に一度完結するものの数多くのスピンオフが展開され、2018年からは「サンドマン・ユニバース」と銘打ってニール・ゲイマン監修のもと、様々な作家によるタイトルが展開されている。

■ドラマ版『サンドマン』は原作ファンも納得のクオリティ

今回のドラマは原作者ニール・ゲイマンが企画段階から関わり、製作総指揮として名を連ねている。近年のコミックの映像化作品では原作者は蔑ろにされがちなので、実は比較的珍しい体制。映像化作品も好評な人気作家の代表作ということもあり実現したのだろう。

ちなみに『サンドマン』の映像化企画は今に始まったことではなく、90年代から長らく続いていたが、どれもうまくいかず、ニール・ゲイマンはかつて「『サンドマン』のダメな映画が作られるくらいなら、いっそ映画化されないほうがいい」という発言もしていた。 そんな中でやっと実現した企画だけあり、このドラマ『サンドマン』は本当に素晴らしい映像化だ。ストーリーとしては、永遠の命を求める人間に召喚され100年間も幽閉されていたサンドマンが、ついに脱出を果たし、幽閉されていた間に荒廃してしまった夢の世界を修復するために力を取り戻しながら、長らく忘れていたものを思い出していく様子を描いていく。

コミック版でいうところの第一巻「Preludes and Nocturnes」と第二巻「The Doll’s House」に相当する部分を、本当に見事にドラマにしている(最終11話で第三巻「Dream Country」からも引用されている)。 特にドラマ第5話の「24/7」は、サンドマンから盗んだルビーを持つ男がダイナーに逃げ込み、そのルビーの力を使って人々から“嘘をつく”能力を奪ったことで巻き起こる悲劇をゆっくりと不気味に描く閉鎖空間ホラーで、このシーズン中で特に良く出来たエピソードだった。コミック第6話「24 Hours」がベースだが、再現と改変の塩梅が絶妙で、コミックを読んでいるとより楽しめる。

また、ストーリーだけでなくビジュアルに関しての再現度も高い。コミックで描かれた幻想的な風景を凄まじいクオリティで実写化し、破綻しないギリギリのラインでコミックの不思議な雰囲気を映像に落とし込んでいるのだ。

■キャラ設定の変更やキャスティングなどドラマ版ならではの楽しみも

コミックの「サンドマン」といえば、アーティストのデイブ・マッキーンによるコラージュアートの表紙が有名なのだが、このドラマ版ではエンドクレジットをマッキーンが担当している。各エピソード毎にテーマに合わせて作られていて豪華なのだが、イッキ見しようとするとNetflixの仕様でスキップされてしまうので、ぜひスキップをキャンセルしてチェックしてもらいたい。 また舞台を現代にしていることもあり、30年前から色々なところをアップデートしている。それはビジュアル面だけでなく、一部のキャラクターの性別・人種に変更が加えられており、より現代的になっている。これらの変更は原作者のニール・ゲイマンの監修のもとで行われたもので、そもそも「サンドマン」が80年代のコミックとしては先進的で、登場するキャラクターは性的指向を含め多様性に富んでいたので当然のことだ。

その変更で言えばこのドラマでは、映画やドラマ版でも有名なDCコミックスのキャラクターであるルシファーやコンスタンティンが女性として登場するのだが、どちらもキャスティングの妙もあり、素晴らしい描かれ方だった。原作通りに今後を作っていくとしたら、もうコンスタンティンは出てこない気がするのだが、あまりにももったいないのでスピンオフを制作してほしいところだ(きっとルシファーはこれからも出てくるだろうけどね)。

他のキャストも素晴らしく、ドリーム役のトム・スターリッジも起用当時はそんなに原作キャラに似てないのでは……なんて思っていたが、解放されたばかりのドリームのまだ本調子じゃない未熟な感じ(超高齢だけど)と、傷ついた悲しい雰囲気を見事に掴んでいた。

加えて、コミックよりも出番が多くなりメインの悪役という位置づけだったコリント人を演じるボイド・ホルブルックは、生ける悪夢の殺人鬼を目を使わずに(彼は目が歯になっており終始サングラスをしている)、恐ろしくかつ魅力的に演じきっていた。こちらもどうにかもっと出てきて欲しい……!

■コミック作品の映像化における理想形の一つ

と、どうしてもコミック・ファンとしては“コミック原作のドラマとしてどうか?”という目線で語ってしまうが、それはそれとして本当に出来のいいダークファンタジーになっていると思う。DCコミックス作品との繋がりはなく、難解でもなければ、全11話で比較的キリよく終わっているので、ちょっとでも気になる人はまず見てみて欲しい。

アメコミ原作ではあるがスーパーヒーローものではなく、ファンタジーだがデカい剣を振り回したり魔法のビームが飛び交ったりもせず、バトルといえばせいぜい知恵比べ的なものくらい(とはいえ最高のシーンの一つだ)なので地味と言えば地味な作品だが、各エピソードにアイデアが光る短編集のようなドラマが好きな人は本当にハマれるはずだ。 アメコミ映画の大ブームによって本当にいろいろなことが起こり、いろんな企画が生まれてきたが、この作品に多額の予算が投じられてこのような形でその完成したものを見られたのは、トップクラスに良かったことだろう。

「サンドマン」のドラマ化は難しいだろうなぁと思っていただけに、ここまでのものが見られるとは想定外だった。原作コミックに敬意を払って映像化しつつ、ただ動く絵になっているわけではない“プラスα”のある映画/ドラマが、これからも多く生まれることに期待したい(そしてシーズン2の製作が決まることにも大いに期待したい)。

文:傭兵ペンギン Netflix『サンドマン』独占配信中

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