心を破壊する「これでもか!」な残酷描写 『呪餐 悪魔の奴隷』 傑作が多いインドネシアン・ホラーの“平等な”残虐性
2023年02月18日 12時00分BANGER!!!

■とにかく人が“平等に”死ぬ
全ての命が平等に大切であるならば、全ての命は平等に扱われるべきだろう。つまり逆説的に考えれば全ての命が平等に蹂躙されたとしても、文句はないだろう。……子供っぽい考えだろうか? だが、そんな考えでホラー映画を作っている国がある。―――インドネシアだ。 インドネシアン・ホラーの残虐性は好事家の間で有名だ。男だろうが女だろうが、子供だろうが老人だろうが、見た目が美しかろうが醜かろうが、生い立ちが不幸でも、金持ちでも、病人でも、妊婦でも、とにかく人が“平等に”死ぬ。そして“死”は、安寧なものではない。これがインドネシアン・ホラーの特徴なのだ。■心を破壊する残酷描写✕破綻しないストーリー
『呪餐 悪魔の奴隷』は、そんなインドネシアン・ホラーの獰猛な刃で観客を恐怖のどん底……いや、もはや地獄に落とし、精神/視覚に強烈な責め苦を味わわせる。 圧殺される幼女、串刺しにされる青年、転落死する多くの人々、無残に体を折りたたまれる女性といった残酷描写。残酷一辺倒ではなく、アジアホラー特有の“見え隠れする人影”や“一瞬だけ見える怪異”といったジャンプスケア要素。さらに『死霊館』シリーズ(2013年~)のヴァラク様も驚くような悪魔キャラも登場させる、まさに阿鼻叫喚の作品なのだ!■『悪魔の奴隷』の惨劇を引き継ぐ『呪餐』
『呪餐 悪魔の奴隷』は、『悪魔の奴隷』(2017年)の続編。前作の“ある惨劇”で母と祖母を亡くし、末っ子のイアンが行方不明になったスワノ家。彼らは禍々しい出来事があった一軒家を手放し、高層マンションに引っ越していた。■ジョコ、キモ、ギャレス「インドネシアン・ホラーギャング」
本作の監督ジョコ・アンワルは、幼いころ映画館の通風孔に忍び込み、映画を延々と見ていたという映画狂。とりわけホラー映画を好んで観ていた彼は、今となって立派なインドネシア映画界きってのホラー映画マニアとなった。 彼は過去の自国ホラー映画を現代風にアレンジし、リメイクする仕事をコンスタントに行っている。『悪魔の奴隷』が『夜霧のジョギジョギ』(1987年)のリメイクなのはご存じの通り。また2019年には、往年の血しぶきホラー『The Queen of Black Magic』(英題:1981年)の同名リメイク作の脚本にも携わっている。![夜霧のジョギジョギ [DVD]](https://m.media-amazon.com/images/I/51pXN35EvSL._SL500_.jpg)

■これでもか! これでもか! と叩き込まれる残酷描写
『呪餐 悪魔の奴隷』では、アンワルの真骨頂たる“全ての命に対する、分け隔てのない残虐性”が堪能できる。彼曰く「東南アジアは怪談のネタに事欠かない」そうで、あらゆる怪談話や都市伝説を“過大解釈”。より大げさに、より残酷にをモットーに続編に取り掛かったそうだ。それゆえ物語が始まるや否や、エレベーターの事故で大量の人々を死亡させ、大量の死体とともに嵐の夜を過ごさせるのだ。
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