ヒョンビン vs チャン・ドンゴン! 泥沼権力争いに加えパンデミック・ホラーとしても二度おいしい『王宮の夜鬼』

ヒョンビン vs チャン・ドンゴン! 泥沼権力争いに加えパンデミック・ホラーとしても二度おいしい『王宮の夜鬼』
『王宮の夜鬼』© 2018 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & LEEYANG FILM & REAR WINDOW. All Rights Reserved.

絶望感がハンパない! 朝鮮王朝を舞台に描くパンデミック時代劇

もし大規模なゾンビパニックが、ろくな武器もない大昔に起こっていたら……? 考えただけでゾッとする設定を豪華キャストで映画化した韓国発パンデミック時代劇『王宮の夜鬼』が2019年9月20日(金)より公開中。タピオカドリンクみたいに粗製乱造されたおかげでちょっと食傷気味になってしまったゾンビものに、新たな刺激をもたらす快作の登場だ。

韓国のゾンビ時代劇といえばNetflixオリジナルシリーズ『キングダム』(2019年)が先駆けだが、倭寇の襲撃に関する台詞があることなどから、この『王宮の夜鬼』の時代設定も同じく高麗〜李氏朝鮮時代あたりと思われる。どちらも当時の宮中衣装で立ち回るアクションがカッコよく、ゾンビパニックと王位をめぐる争い、そして王子の成長を同時に描いている点も共通している。

また『キングダム』はドラマシリーズだけに国政の内情や階級制度による民の貧困などもじっくり描く時間があるが、『王宮の夜鬼』はほぼきっかり2時間。民の貧しさや貴族層の傲慢が生んだ悲劇という“深さ”は控えめだが、そのぶんバトル・アクションを華麗に仕上げており、夜鬼(ゾンビ)化する行程も序盤でテンポよく説明してしまう。いっさい出し惜しみなしの展開は爽快で、逆にクスッと笑わせるようなシーンも挟み込んでくる余裕すら見せてくるのは嬉しい驚きだった。

のどが乾いたから肉をくれ! 新鮮なゾンビ表現とベタかつ燃えるキャラクター設定

ゾンビに襲われた男が「のどが渇いた、肉をくれ」と言い、おばさんに「それなら水を飲みなよ」とツッコまれて初めて「あ……」と自分で異変に気づくシーンなどは、かなり秀逸なゾンビ化表現だ。なお、ゾンビたちに噛まれたら感染するのは定石どおりで、“夜鬼”という名からも想像できるように、昼間は暗がりで息を潜めているという設定も『キングダム』と同じ。ゾンビ化する際の脊髄ゴキバキ反り返りモーションは、もはやお約束といったところか。

本作の主人公は、兄の遺言を受けて清から朝鮮に戻ってきた放蕩者の弟王子イ・チョン(ヒョンビン)。女好きで自己チューだが戦闘力はバカ高いクールな王子とお喋りで世話焼きな付き人、という設定はマンガ的で非常に分かりやすい。そこに、ゾンビにはヘッドショットが効果的ということを知っているチーム=弓使いの娘、力持ちのクマ男、槍使いの僧兵、リーダー各の剣士ら、民を想って死んでいった兄王子を慕う部下たちが合流するという流れも燃える。

ヒョンビン&チャン・ドンゴンだけじゃない! 人間ドラマに深みを与える名バイプレイヤー集結

とにかく無責任なイ・チョンは面倒ごとから逃げようとするが、兄の死の真相やその裏で蠢く陰謀を知り、やがて王の運命(さだめ)に従い行動することになる。その最大の障壁となるのが、チャン・ドンゴン演じる兵曹判書(ピョンジョパンソ:朝鮮王朝の高官職)キム・ジャジュンだ。これがまた夜鬼の100倍くらい怖い男で、「あなたが好きだから〜!」とか叫んでいた頃の面影がまったくないドンゴンの熱演に称賛を贈りたい。

他にも、Netflix『麻薬王』(2018年)で入れ墨だらけの超怖いヤクザを演じたチョ・ウジンや、『息もできない』(2008年)でサンフンの先輩を演じたチョン・マンシク、『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)でゲスいサラリーマンを演じたキム・ウィソンなど、一度見たら忘れられない俳優陣がズラリ。韓国映画/ドラマではおなじみの面々だが、時代劇ということで新鮮な魅力を振りまいている。また、紅一点のイ・ソンビンも今後の活躍が期待できる注目の若手だ。

危険な夜鬼を政治利用しているうちに負の遺産が積もり積もって……という因果応報な展開は、現代社会にも通じる恐ろしさ。夜鬼よりもよっぽど醜い人間の姿を通して、国家=民主主義の根幹を示すラストも小気味よかった。なお、ストイックな剣〜弓矢アクションに終始するかと思いきや、最後の最後、ここぞというところでワイヤーアクションを持ってくるのでお見逃しなく。

『王宮の夜鬼』は2019年9月20日(金)よりシネマート新宿ほか全国ロードショー

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