「こんな病的なジョーカー役を楽しんだ僕はどこかおかしいのかも(笑)」ホアキン・フェニックスが語る

「こんな病的なジョーカー役を楽しんだ僕はどこかおかしいのかも(笑)」ホアキン・フェニックスが語る
『ジョーカー』ホアキン・フェニックス© HFPA

「出演を躊躇ったのは、作品が妥協の代物になることを恐れていたから」

―もともとジョーカーというキャラクターに思い入れはあったのですか?

特にないな。14才のときに『アーカム・アサイラム』というグラフィックノベル(※1989年刊『Arkham Asylum: A Serious House on Serious Earth』)を読んで、気に入ったくらい。これは今でも傑作だと思う。

―アメコミ映画に関しては、これまでもオファーがあったと思うのですが、今回、引き受けた決め手はなんですか?

実はここ数年、出演の決断を下すのは難しくなってきているんだ。昔はすぐに決めることができたのに、いまでは6週間とか8週間もかかる。この映画に関しても、果たして自分にやってのけることができるのか分からず、すぐにイエスと答えることができなかった。

―懸念事項は何だったんですか?

単純に、たくさんのことを理解しなくてはいけなかったんだ。それに、どんな映画監督と仕事をするにしても、相性の良さが僕にとっては最も大事になる。3ヶ月も一緒に過ごすことになるわけだからね。たとえば相性の悪い監督だったら、「それでも一緒に仕事をすべきだろうか?」と悩んだりする。正反対の性格でも、一緒に仕事をすることで大きな力を発揮できる場合もあるから。ただ、これまでの仕事で、監督とそりが合わなくてトラブルになったことが何度かあるから、そうした事態だけは避けたかった。

トッド(・フィリップス監督)の場合、最初のミーティングはわずか10分ほどで、脚本を受け取っただけだったんだけど、2度目にきちんと話し合いをしたとき、彼のことを人間として気に入った。それでも出演をためらったのは、自分でもよく分からない。おそらく、僕らが目指す映画が果たして実現可能なのか? と疑っていたからだろう。メジャースタジオの映画からしばらく離れていたので、妥協の代物になる展開を恐れていた。結果的には、ワーナー・ブラザースほどファッキン・クールなスタジオはないことが分かるんだけどね。

「毎日、すべてのシーンで新しいことに挑戦していた。ほとんどゲームのようにね」

―アーサーは社会で見過ごされている憐れな存在として描かれていますが、役作りで参考にした人などはいますか?

キャラクター作りで、ちょっとだけ影響を受けた人はいる。あとは、いろいろリサーチをして作り上げていった。ただ、見過ごされているからといって、彼のことを憐れな存在だとは思っていない。同情できる点もあるけれど、嫌悪すべき存在だと思う。複雑な感情を抱かせるからこそ、演じたいと思ったんだ。彼の心境は理解できるし、同情できるけれど、完全にイノセントというわけでもない。典型的なナルシストだ。世界が彼のことを認め、彼の声に耳を傾けるべきだと信じている。こうした考えはひどく危険で不適切だが、演じるぶんには楽しい。本当に複雑なキャラクターで、この映画が問いかける質問に容易な答えが存在しない点が気に入ったんだ。

―あなたはこの役のために劇的に体重を減らしましたが、キャラクターを演じることで日常生活に異常をきたすことはありますか?

それはないよ。他の役者が「役を演じるようになったら、悪夢を見るようになった」とか言うよね。とても格好いい。そこまで役作りにのめり込んでいるということだから。僕の場合、正直に言うと、役作りで悪夢を見たことなんて一度もない。もしかしたら、この仕事を8才のころからやっているからかもしれない。ただし、役を演じることが自分の人生になるのは確かだ。映画を作っているあいだ、映画の人たちとしか交流しなくなるから。ただ、今回ほどキャラクターを演じるのが楽しかったことはなかった。こんな病的なキャラクターを演じるのを楽しんだということは、僕の何かがおかしいということなのかもしれないけれど(笑)。

―(笑)。

このキャラクターを演じるのが楽しかったのは、常に新しいことを試すことができたからだ。これは誇張なんかじゃなくて、毎日、すべてのシーンで新しいことに挑戦していた。「今日はどんな新しい台詞を思いつけるかな?」とか、「どうやったらもっとファニーにできるか?」と、ほとんどゲームのように挑戦していた。現場にやってきて、用意された台詞を読んで、言われたとおりに動くだけの仕事じゃなかった。だからこそ、これまでのキャリアで一番の満足感を得ることができたんだ。

取材・文:小西未来『ジョーカー』は2019年10月4日(金)公開

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