完全に信用できるホラー職人・アジャ監督が放つワニワニパニック『クロール ―凶暴領域―』

完全に信用できるホラー職人・アジャ監督が放つワニワニパニック『クロール ―凶暴領域―』
『クロール ―凶暴領域―』Ⓒ 2019 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

溺れて死ぬか、ワニに喰われて死ぬか、それとも生きるためにあがくか、お前が決めろ!

とんでもなく巨大なハリケーンに見舞われたフロリダ。大学生で水泳選手のヘイリー(カヤ・スコデラーリオ)は連絡がつかない父親デイブ(バリー・ペッパー)を探しに、通行止めを突破して久方ぶりの実家へ帰省。すると、実家の地下に満身創痍で横たわる父親、そして元気いっぱいのワニが!

なんでワニ?というところは「フロリダですから」という一言で済むぐらい、フロリダの方々にとってワニは身近な猛獣。しかし、さすがに逃げ場のない地下で、目と鼻の先にワニがいるなんて前代未聞。この危機を脱するべく、ヘイリー頑張る! と思いきや、すぐにワニにガブッとやられ、満足に動けないほどの怪我をしちゃうヘイリー。なんてこった。本作にはヒロインを最後まで生かす気はないのかもしれない。いいのか? ヒロインだぞ?

……そんなピリついた雰囲気でいっぱいのなか、さらに父娘を追い詰めるのがハリケーンの影響で猛威を振るう暴風雨。街はすぐに冠水して川のようになり、父娘のいる地下にもガンガン雨水が浸入! 溺れるか、喰われるか。このままでは確実に死ぬ……。

緊張みなぎる展開、痛〜いゴア描写、戦えるヒロイン……良い意味で予想を裏切る完成度!

家の中という限定空間、登場人物はほぼ2人とワニ。ほうほう、この映画、かなり激安ですね? と推理した探偵さんも多いかと思うが、それは大間違い。ひっきりなしにダバダバ溜まっていく水がもたらす緊迫感はただごとじゃないし、最初から最後まで出し惜しみせずに迫り来るワニはちゃんと人を喰う。目に痛いゴア描写もバッチリ。

それに、ヘイリーはこの手の映画にありがちな、ただ巻き込まれてイライラさせるヒロインではなく、危機を脱しようと要所要所で機転を利かす人。筆者なら何もかも諦めて黙ってワニの餌になるところを、絶対に諦めないヘイリーがだんだんカッコよく見えてくる。

アレクサンドル・アジャ監督はそのフィルモグラフィからして完全に信用できる男!

こんな面白い映画を撮ったのは、フランスが誇るホラー職人アレクサンドル・アジャ。やりすぎなゴア描写とトリッキーな展開で話題を呼んだ『ハイテンション』(2003年)で世界に名を売り、ウェス・クレイヴンの『サランドラ』(1977年)をリメイクした全編パワフル・バイオレンスな傑作『ヒルズ・ハブ・アイズ』(2006年)でハリウッド・デビュー。

その後もジョー・ダンテの『ピラニア』(1978年)をリメイクした『ピラニア3D』(2010年)や、哀しみの頭皮剥ぎ男映画『マニアック』をイライジャ・ウッドを迎えてリメイク(2012年)したり、寺沢武一の漫画「コブラ」の実写化を虎視眈々と狙っていたりと、心の底から信用できる男。

そして製作には「『ハイテンション』を観た時からアジャと仕事がしたかった」と、さすが目利きな発言をした80年代ホラーの神様、サム・ライミ。88分間(上映時間)のライドに乗ったと思えば鑑賞料金は安いものだし、絶対にスクリーンで観ないと損するタイプの映画です!

文:市川力夫

『クロール ―凶暴領域―』は2019年10月11日(金)より公開

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