「ウィレム・デフォー抜きでこの映画を撮るなんて考えられなかった」 狂気の天才画家ゴッホの半生『永遠の門 ゴッホの見た未来』

「ウィレム・デフォー抜きでこの映画を撮るなんて考えられなかった」 狂気の天才画家ゴッホの半生『永遠の門 ゴッホの見た未来』
『永遠の門 ゴッホの見た未来』ジュリアン・シュナーベル監督、ウィレム・デフォー

「ウィレム抜きでこの映画を撮るなんて、僕には考えられなかった」

―監督はいくつかのインタビューで「この役を演じられるのはウィレムだけだった」とおっしゃっていますね。ウィレムのどんな部分から、そう思ったのでしょうか?

ジュリアン・シュナーベル監督:ウィレム抜きでこの映画を撮るなんて、考えられなかった。他の取材で「他の役者は考えなかったのですか」と聞かれたが、そんなこと1ミリも思わなかった。

僕たちが映画を制作中に、奇妙なことがあったんだ。撮影に取り掛かる前に自然の中を歩きながらウィレムを撮った。その10日後くらいに僕たちが同じ野原を歩いていたとき、10日前に撮った映像が使えないことに気付いたんだ。どうしてかと言うと、ウィレムが全くの別人になっていたからなんだよ。彼のことはよく知っているはずなのに、誰だか分からなかったんだ。

同じ映像の中で、ウィレムが目に見えて違う人間に“変わった”から、気に入っていた映像だったけど使えなくなってしまった。彼がそうするために何をしたのか僕には分からないが、とても満足したよ。そんなことが出来るのは彼の才能なのかもしれないし、あるいは魔法なのかもしれない。

―本作に参加された経緯を教えていただけますか?

ウィレム・デフォー:画家でもあるジュリアンが絵画を題材に映画を作ることに興味が湧いたんだ。僕とジュリアンは30年来の仲で、彼がスタジオで何かを制作しているときや、絵を描いているとき、撮影所で映画を撮っているときも、私は彼のそばにいた。彼と一緒にいるのが好きなんだ。

ジュリアンの作品に参加するというのは、彼が大切だと思っている世界に、僕がその一部として入っていくことを意味するんだよ。ジュリアンは、ただファン・ゴッホという人物を描くだけでなく、自然の中に出て絵を描いてファン・ゴッホの人生を体験することを重視している。ジュリアンが考えることすべてが僕にとって魅力的だった。

そして、映画の中では絵を描く場面が多いから、絵を描く姿にある程度信ぴょう性がないといけないんだ。私が実際に絵を描く場面を観客は見るから、それはとても大きな挑戦になると思っていた。そして演技を通してジュリアンの思考に触れて、ファン・ゴッホはこんな人物だったかもしれないと想像しながら、ファン・ゴッホの生きた道を体験していくことにワクワクしたんだ。

「俳優たちと自由に“実験”ができた。そんなふうに仕事をするのが好きなんだ」

―『ミラル』(2010年)以来、8年ぶりに一緒にタッグを組まれて、いかがでしたか?

ジュリアン:8年ぶりに再び仕事してみてどうか? と聞かれてもね。実のところ……僕は仕事とすら思っていないんだ。最初に作った映画『バスキア』(1996年)でも、ウィレムは電気工のグレッグを楽しんで演じてくれた。素晴らしかったし、素敵な時間を一緒に過ごした。

ウィレム:『ミラル』ではあまり目立たない役だったけれど、撮影に取り組むスタンスはどんな役でも変わらないんだ。僕はジュリアンの作品の一部になろうと思ってる。ジュリアンは型にはまったやり方はしない。常に本気で物事の真髄を見つけ出そうとしているんだ。

ジュリアン:ウィレムといるときは私は常に守られている気分になるんだ。自分の背後を守ってくれて頼れる。常に私を助けてくれるし、彼が困ったときは私が彼を助る。信頼出来ているからこそ、私は他のことを考えられるんだよ。彼が『ミラル』でオファーを受けてくれると知って、僕は「この映画がうまくいく」と確信したんだ。ウィレムがその役柄にスパイスを加えてくれると思っていたから、彼がどう演じようと、満足だった。

僕たちは一緒に仕事をすることを楽しんでいるんだ。オスカー・アイザック、マチュー・アマルリック、エマニュエル・セニエ、マッツ・ミケルセンとも同じ。僕たちは一緒にいるのが好きで、気の置けない仲間だ。作品作りを通して、自由に、一緒に“実験”ができた。そんな風に仕事をするのが好きなんだ。だから以心伝心できる仲間といるのはとても居心地がいい。“おとな”はセットに入場禁止なんだよ(笑)。

『永遠の門 ゴッホの見た未来』は2019年11月8日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー

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