ウォンが急下落した通貨危機の裏を描く衝撃作『国家が破産する日』ユ・アイン、キム・ヘス、V・カッセル共演

ウォンが急下落した通貨危機の裏を描く衝撃作『国家が破産する日』ユ・アイン、キム・ヘス、V・カッセル共演
『国家が破産する日』© 2018 ZIP CINEMA, CJ ENM CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED

約20年前に韓国がヤバい状況だったって、知ってましたか?

1997年に韓国を襲った経済危機を赤裸々に描き、政府の姿勢を痛烈に批判した映画、その名も『国家が破産する日』が2019年11月8日(金)より公開中だ。なんとも衝撃的なタイトルだが、本作はアジア通貨危機として広く知られる史実を基にしたフィクションである。

90年代後半といえば日本はバブル崩壊後の不景気真っ只中、就職氷河期と呼ばれていた世代にとっては懐かしくも、そう古い記憶ではないだろう。いわゆるロスジェネど真ん中の人たちにとっては恨みがましい時代だが、本作を観ると似たような時代感覚が呼び起こされるかもしれない。

1987年の民主化と共に急速な経済成長を遂げた韓国。しかし、90年代に入り韓宝鉄鋼や起亜自動車などの大企業が不渡りを出し続けたことによってウォンが急下落し、国家破産まであと7日という未曾有の状況に陥っていた。そんなヤバい事態にいち早く気づいたのが物語の軸になる人物、韓国銀行の通貨政策チーム長ハン(キム・ヘス)だ。彼女はこの危機的状況を国民に知らせるべきだと主張し、IMF(国際通貨基金)の介入を推し進める財政局次官のパク・デヨン(チョ・ウジン)と対立する。

そしてもう一人、この事態を察していた金融コンサルタントのユン(ユ・アイン)は早々に会社を辞め、2人の顧客からの資金をもとにウォンの大暴落に投資して大儲け。一方、小さな町工場を営むガプス(ホ・ジュノ)は大量発注を受けた大手デパートが経営不振に陥り、紙切れ同然となった手形を握りしめ呆然と立ちつくす……。この3人の視点から通貨危機が描かれるわけだが、それぞれの立場が異なるため難解な用語をそれほど気にせず内容が理解できるようになっていて、特にユンの客観的な視点のおかげで状況が飲み込みやすくなっている。

今の視点で過去を描き現代社会に警鐘を鳴らす

金融・経済・証券云々の難解なテーマが扱われているだけにボンヤリしていると置いていかれそう……と思いきや、説明的になるギリギリまでセリフでフォローしてくれるので意外なほど没入することができるはず。もちろんハンもユンも“希望”としての存在でありフィクションだが、IMF専務理事役のヴァンサン・カッセルも、その怪しい魅力でエンタメ性の維持と集中力アップに貢献している。

ハンは「女は理性的に判断できない。すぐ感情的になる」など酷い言葉を浴びせられるのだが、この骨太な物語の主人公を女性にしたところにも製作側のメッセージが込められているはず。ミソジニーであり、コネのある財閥を優遇し庶民を足蹴にするハンは忌むべき象徴として描かれていて、まるで性犯罪への理解を欠き、大企業や富裕層への優遇が取り沙汰されるどこかの国の擬人化ように見えてきて、色んな意味で憤りを覚える。

やはり我々一般庶民としては、直接の被害者であるガプスの状況が最も身につまされるだろう。ただし過去の過ちを描くことはもちろん、本作が本当に訴えたいのは、現代の視点から当時を振り返っても何ら改善されていないという点ではないだろうか。最後の最後に、かすかな希望と終わらない腐敗との戦いが示されるところからも、現代社会に警鐘を鳴らすことが監督や脚本家の狙いなのだと思えてくる。

リーマンショックの裏側で繰り広げられた実話をベースにした『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2015年)も想起させる本作。結論が分かっているうえに笑いもゼロ、実害を被った人たちの記憶にも新しいだけに、チェ・グクヒ監督も公開までは不安もあったそうだが、結果的には大ヒットとなった。やはり韓国映画には、自国の恥部を作品で批判できる/受け入れられるという強味を感じる。

『国家が破産する日』は2019年11月8日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー

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