笑福亭鶴瓶、有村架純、橋本マナミ、原田美枝子ら登壇! ユネスコ認定“映画の街”にて「山形国際ムービーフェスティバル2019」

笑福亭鶴瓶、有村架純、橋本マナミ、原田美枝子ら登壇! ユネスコ認定“映画の街”にて「山形国際ムービーフェスティバル2019」
『劇場版 そして、生きる』有村架純

山形が誇る映画祭が積み重ねてきた15年の歴史と実績

山形といえば山形国際ドキュメンタリー映画祭が有名だが、それだけじゃない! その両極ともいえる商業映画の祭典「第15回 山形国際ムービーフェスティバル2019」(以下、YMF)が2019年11月8日〜10日、ムービーオンやまがたで開催された。記念大会とあって、笑福亭鶴瓶に有村架純、地元出身の橋本マナミにお笑い芸人の永野まで、来るわ来るわの豪華ゲストの数々。山形の映画文化を守るべく2005年に始まった映画祭の魂は、健在だった。

山形市七日町には「シネマ通り」がある。最盛期には6つの映画館があったことから名付けられたが、今はもう1軒もない。2005年にYMFがスタートした時の会場で、80年以上の歴史を持つ老舗映画館「シネマ旭」も2007年に閉館し、2013年に取り壊された。

しかし、シネマ旭の精神受け継ぐムービーオンやまがたが2008年に山形市北部にオープンし、YMFの会場も同年からこちらへ。紆余曲折ありながらも積み重ねてきた15年の歴史と実績は、着実に実を結んでいるようだ。

地域発信型作品から女優・原田美枝子が実母を追った初監督作品まで

その一つが、招待作品の廣木隆一監督『海まで何マイル』(2019年)。吉本興業が行ってきた地域発信型映画プロジェクトのファイナルを飾った短編で、舞台に選んだのは山形市だ。廣木監督はこれまで、Netflixオリジナルドラマ『火花』(2016年)や『彼女の人生は間違いじゃない』(2017年)などを引っ提げてYMFに度々参加しており、山形の人々と触れ合ううちに「今、ここで生きている人を撮りたいなと思ったら、こんなことになってしまいました(苦笑)」という。

同作は2011年の東日本大震災で亡くなったであろう友人を偲んで仲間たちが再会し、甘酸っぱい日々を振り返る青春物語。繁華街の七日町や観光名所・文翔館など、山形市民にとってはお馴染みの場所がロケで使用されており、それは千鳥足で夜の山形を彷徨っている廣木監督にとっても新鮮な体験だったようだ。舞台挨拶に立った廣木監督は「皆さんも毎日見ているから気づかないと思うけど、綺麗な街なんですよね」と観客に問いかけると、会場からも賛同の声が上がった。出演者の一人で、今年のYMFのアンバサダーも務めた女優・菜葉菜も「毎年山形に来ていますが、まだまだ知らない美しさがありました。特に雪景色の中を走る山形鉄道フラワー長井線がすごく素敵で、あの美しさは写真を撮りたくなるなと思いました」と語り、写真家という役柄を超えて、撮影に没頭したことを明かした。

シンガーソングライターの長女・優河がYMFでライブを行なった縁で、製作・撮影・編集・監督・出演の5役を務めた『女優 原田ヒサコ』を引っ提げて初参加したのが、女優・原田美枝子だ。同作は、認知症が進んだ原田の実母・原田ヒサコが突然、「私ね、15歳の時から女優をやっているの」と娘・美枝子の人生を語り始めたことから生まれたドキュメンタリー。原田監督は「母はそれまで一度もそんなことを言ったことないのに、薄れていく記憶の中でほろっと。もしかしたら、そういう想いでいたのかな? と思い、ならばワンカットでも撮って公開したら、母の“女優になる”という夢が現実になると思って製作しました」という。かくして、YMFの上映をもって女優・原田ヒサコと、原田美枝子“監督”が誕生した。

新たな才能をフォローアップする1億円のスカラシップ制度

「才能よ、雪に埋もれるな」

それが、新人監督の登竜門コンペティション部門を持つYMFのキャッチコピーだ。これまで、NHK「100de名著」のアニメーション制作で知られるアニメーション作家・高橋昂也が、『レブン』で第4回のアニメ・CG部門でグランプリを受賞し、『チア男子!!』(2019年)の風間太樹監督、『カメラを止めるな!』(2018年)の上田慎一郎監督が入選を果たしてきた。また、第10回までは上限1000万円、第11回からは同1億円のスカラシップ制度を持ち、ここから三宅伸行監督『Lost & Found』(2007年)などが劇場公開されてきた。

今年の応募本数は187本。そこから1次審査を通過したノミネート作10本の中から、村川透監督、俳優・船越英一郎をはじめとする総勢12人の審査員によって各賞が発表された。ダントツの評価を得てグランプリに選ばれたのは、漫画家・イラストレーターとしても活躍している松尾豪監督の『グラフィティ・グラフィティ!』。シャッター通り商店街でのグラフィティに目覚めた女子高生と、その商店の家主との攻防戦が、次第に不思議な交流を育んでいくハートフル・コメディーだ。村川審査委員長は「映画の世界に入って60年になりますが、例えるならN.Y.派のジャズからフレンチ・ジャズへと変わったかのような、新しい発見だった」と興奮気味に講評したほどの惚れ込みぶりだった。

これにより松尾監督はスカラシップの権利を獲得。企画書がYMFの審査を通れば、上限1億円(製作費5000万円+P&A費5000万円)の中で、プロが製作から公開までをサポートするという、新鋭監督にとってはビッグチャンスだ。松尾監督は「1億円を使うために映画を作るのでは、絶対に良いものができないことは分かっています。今までストックしていたアイデアで『まぁ、これは30年後ぐらいかな』という、自分が今まで実現できなかった面白いものがあるので、それを具現化できるようアクティブに動いて行きたい」と、早くもやる気をみなぎらせていた。

将来が期待される俳優に贈られる船越英一郎賞(最優秀俳優賞)は、「どうしても一人に絞れなかった」(船越)ということで、今年は2人。『帝一の國』(2017年)、『飢えたライオン』(2017年)など出演作が相次ぎ、監督としても注目されている『Lemon & Letter』(梅木佳子監督)の主演俳優・品田誠と、『つむぐ』(2019年:片山享監督)に主演した地下アイドルグループ・仮面女子の涼邑芹だ。

品田は表彰式を欠席したが、涼邑には船越から「少女から大人への端境期の揺れる心模様を実に繊細に丁寧に、物言わぬ演技でも実に雄弁に心情を表していた。そして、この憂いをひめた存在感が映画に素晴らしいものを与えていた。将来、ご一緒するのを楽しみにしています」と俳優の大先輩から何よりの賛辞が贈られた。涼邑は「私自身、初主演の映画で、思い入れのある大切な作品です。これからもお芝居を頑張っていきたいと思っています」と決意も新たに喜びを語った。今年は同コンペティション出身者の風間監督『チア男子!!』と、甲斐さやか監督『赤い雪 Red Snow』(2019年)が招待上映されており、今年の受賞者の近い将来の“凱旋”を期待したい。

<ユネスコ創造都市やまがた>が日本の映画産業を牽引する

15年の間に、YFMを取り巻く環境も大きく変わった。その最たるが、山形市が2017年にユネスコ創造都市ネットワークに「映画」分野で加盟認定されたことだ。世界で映画都市に認定されたのは、アンジェイ・ワイダ監督や『蜜蜂と遠雷』(2019年)の石川慶監督らを輩出した名門・ウッチ映画大学のあるポーランド・ウッチや、伝統のチネチッタのあるイタリア・ローマ、アジア最大級の映画祭を開催している韓国・釜山に続いて13都市目。これにより、山形市は映像産業に一層力を入れており、招待作品『越年 Lovers』(グオ・チェンディ監督)のような山形市が協力した日本・台湾合作映画が製作され、YMFが日本初披露の場となった。

同作は作家・岡本かの子の小説からインスパイアされた3組の男女が織りなす恋愛模様を描いた作品。山形で撮影が行われた第2幕「追憶の風景」には、地元出身のミュージシャン・峯田和伸と橋本マナミ、お笑いコンビ「あがすけ」の吉村和彬が出演しており、開場前には長蛇の列ができるほどの盛況ぶりだった。峯田が体調不良で参加できなかったのが惜しまれるが、舞台挨拶では共演者から「峯田さんの山形弁はずうずう弁過ぎる」などの発言も飛び出し、ここでしか聞けない地元ネタで終始笑いに包まれた。

国内外で映画祭が乱立し、東京国際映画祭ですらアジア・プレミアどころかジャパン・プレミア作品を探してくるのに苦労している中、プレミア(最初の)作品を持ってこられるのは強みとなるに違いない。YMFは今後、ますます雪を溶かすほどのアツい場所となりそうだ。

文:中山治美

行定勲監督 コメント
僕も地元・熊本で「くまもと復興映画祭」を行っているので、映画祭を15年間も続けてきたことが無茶苦茶大変だったことが分かります。映画作りをしている人にとって映画祭は、パワーをもらって帰ることのできる大切な場所です。これからもぜひ続けてください。

甲斐さやか コメント
私は第10回YMF2014のコンペティションで、『オンディーヌの呪い』という作品で準グランプリをいただきました。その後、かなり変わった企画に取り組み、一緒に並走してくれる人が現れては消えてなかなか形にならず、もうこの作品で映画作りをやめてもいいかなと思いながら自分で資金を集めて『赤い雪 Red Snow』を製作しました。その作品を持ってYMFにまたこうして戻ってこられて嬉しいです。今回受賞した方々が、また次の作品を撮れるようにここにいらっしゃる方々が応援してくださることを願ってます。

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