ボブ・ディランの名曲にのせて、苛酷な苦難を愛だけで乗り越える家族を描く感動作『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』

ボブ・ディランの名曲にのせて、苛酷な苦難を愛だけで乗り越える家族を描く感動作『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』
『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』©2018 FULL CIRCLE PRODUCTIONS, LLC, NOSTROMO PICTURES, S.L. and LIFE ITSELF AIE. ALL RIGHTS RESERVED.

ボブ・ディランのアーティスト人生と奇妙にリンクする群像劇

ピンチ! 何やってもうまくいかない。たまに「自分は不運につきまとわれてるんじゃないか?」と疑いたくなる瞬間はないでしょうか。数多くの名曲を生み出し、2016年にはノーベル文学賞を授与され世間を驚かせた、あのボブ・ディランも、決して輝かしい道のりばかり歩いてきたわけではありませんでした。

1962年にレコードデビューしてから80年代、彼が40歳にさしかかる辺りでキャリアに翳りが見え始めます。宗教への傾倒による音楽仲間との齟齬や、音楽的な意欲とは裏腹にライブの動員が伸び悩んだり、商業的に成功する作品を生み出せないでいる状況は、あらゆるコラボレーションやそれまでのスタイルを変えてもあまり好転せず、1990年、ついに彼はアルバムを作ることを止めます。

映画『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』のイントロでは、1997年リリースのボブ・ディランのアルバム「Time Out Of Mind」より“Love Sick”が流れます。

本作の主人公の一人、アビー(オリヴィア・ワイルド)は劇中でその7年ぶりのカムバック作について熱っぽく語ります。ボブ・ディランについて、自分の人生について、密接に関わる人について。そして劇中に登場する彼らの人生は、奇妙に交わります。

脚本を読んだディラン本人が楽曲使用を許可!

監督は『THIS IS US/ディス・イズ・アス』(2016年〜)などで知られるダン・フォーゲルマン。クライマックスで流れる、暗く内省的なアルバムと評される「Time Out Of Mind」の中で不似合いなほどきれいに咲く一輪の花のような楽曲、“Make You Feel My Love”に向かって、トリッキーではありつつも次第にパズルが埋まっていくような、ハッとさせられる展開で物語を進めていきます。

敬愛するタランティーノ作品へのトリビュートは編集の意図を伝えるスパイスになっており、見どころの一つにもなっています。なお、必要不可欠とも言える楽曲の使用はディラン本人が脚本を読み、許可したそうです。

生きていても、死んでも、無関係な人は居ない、そう力強く思わせてくれるメッセージが画面越しに伝わってくる、そんな映画でした。おすすめです。

文:川辺素(ミツメ)

『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』は2019年11月22日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほかロードショー

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