富裕層と貧困層がいかに共生不可能か、完璧なエンターテインメントで描く『パラサイト 半地下の家族』

富裕層と貧困層がいかに共生不可能か、完璧なエンターテインメントで描く『パラサイト 半地下の家族』
『パラサイト 半地下の家族』© 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

■アカデミー6部門ノミネートのポン・ジュノ最新作が世界を揺るがす!

2019年のカンヌ映画祭で韓国映画初のパルム・ドールを受賞して以後、『パラサイト 半地下の家族』(2019年)の快進撃が続いている。各国の映画批評家が選ぶベスト10、ベスト20に必ず選定されるばかりでなく、2020年1月6日に第77回ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞、同12日に第25回クリティックス・チョイス・アワード外国語映画賞を受賞。さらに13日に発表された第92回アカデミー賞ノミネートでは6部門(作品賞、監督賞、編集賞、脚本賞、美術賞、国際長編映画賞)にノミネートという快挙を達成した。世界中をこれほど熱狂させている韓国映画『パラサイト 半地下の家族』とは、一体どんな映画なのだろうか。

『パラサイト 半地下の家族』© 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

舞台は現在のソウル。家賃は安いが昼間も暗い半地下住宅に暮らすキム一家は、全員失業中。数々の事業に失敗し続けた父ギテク(ソン・ガンホ)には、やる気も計画も希望もない。そんなある日、息子のギウ(チェ・ウシク)に思いがけない“おいしい話”が舞い込んでくる。兵役時代の友人でエリート大学生のミニョク(パク・ソジュン)から、家庭教師を代わって欲しいと頼まれたのだ。

『パラサイト 半地下の家族』© 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

その家庭教師先は、丘の上の豪邸に住むIT企業のパク社長(イ・ソンギュン)の娘ダヘ(チョン・ジソ)。パク社長の美人妻ヨンギョ(チョ・ヨジュン)にすっかり信頼されたギウは、ダヘの弟ダソン(チョン・ヒョンジョン)の絵画教師を探してくれるように頼まれ、妹ギジョンをアメリカ帰りのジェシカ先生と偽って推薦する。ついで、父ギテク、母チュンスク(チャン・ヘジン)も雇われ、キム家によるパク家への“パラサイト”が完成するかと思いきや、とんでもない事態が起きて、ストーリーは想像を超えた結末へと突き進んでいく。

『パラサイト 半地下の家族』© 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

■世界中で広がる悲劇的な経済格差を“寄生=パラサイト”という視点で斬る

一握りの富裕層と大多数の貧困層に二分され、格差が広がっている現代社会。ケン・ローチ監督の『家族を想うとき』(2019年)も、ポン・ジュノ監督の『パラサイト』も、格差社会の悲劇を貧困層の側から描いている。だが『パラサイト』には、これまでのポン・ジュノ作品にはない、どこか突き抜けた面白さがあった。

『パラサイト 半地下の家族』© 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

ポン・ジュノは、富裕層と貧困層という2つの階層がいかに共生不可能かというテーマを“寄生”(パラサイト)という概念を使って描いてみせた。しかも、それを完璧なエンターテインメントとして。

『パラサイト 半地下の家族』© 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

始まりは喜劇、それがアッという間にサスペンスからホラーに変わり、最後は……。1つのジャンルに収まりきらない、優れたエンターテインメント。しかも、ストーリーの意外性とスピード感と、面白さのすべてが、台詞ではなくビジュアル化されているところが凄い(特に、カメラの自在な動きを可能にした、半地下と大豪邸の2つの完璧なセットには惚れ惚れする)。強いて欠点をあげるとすれば、あまりにも隙がないこと、かもしれない。

『パラサイト 半地下の家族』© 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

■舞台はアカデミー賞! 不遇の天才監督がついに正当な評価を得るか!?

ポン・ジュノは1969年生まれの50歳。2000年に『ほえる犬は噛まない』で長編監督デビュー。2作目の『殺人の追憶』(2003年)が大ヒットして注目され、長編3作目の『グエムル −漢江の怪物−』(2006年)でカンヌ映画祭監督週間初登場、ついで『母なる証明』(2009年)がカンヌ映画祭<ある視点>部門に正式出品と、国際的な評価を高めた。

ハリウッドに進出して撮った『スノーピアサー』(2013年)を経て、2017年にNetflixオリジナル映画『オクジャ/okja』でカンヌ映画祭初コンペ。2019年に長編7作目の『パラサイト 半地下の家族』でカンヌ映画祭パルム・ドールを受賞した。

とはいえ、これまでの歩みが順風満帆だったわけではない。カンヌ映画祭で言えば、『グエムル』が監督週間に決まったときには、フランスの映画批評家たちから「なぜコンペではないのか」という不満の声があがったし、『母なる証明』がコンペでなかったのも不思議だったし、Netflix問題が起こった年にNetflix映画『オクジャ/okja』で初コンペというのも不運だった。

本国でも、李明博政権から朴槿恵政権にかけてブラックリストに載せられ、国外での映画作りを模索した。けれども、外国資本での映画作りがポン・ジュノの映画言語をより“国際化”させたことは大きな収穫だった。そして、『母なる証明』以来10年ぶりの韓国映画『パラサイト 半地下の家族』で、ひと回り成長したポン・ジュノが悲願のパルム・ドールを韓国映画界にもたらしたことは、運命の巡り合わせのような気がする。

『パラサイト 半地下の家族』© 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

文:齋藤敦子

『パラサイト 半地下の家族』は2020年1月10日(金)より公開

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