『マリッジ・ストーリー』『トイ・ストーリー4』でアカデミー賞Wノミネート! 作曲家ランディ・ニューマンとは

『マリッジ・ストーリー』『トイ・ストーリー4』でアカデミー賞Wノミネート! 作曲家ランディ・ニューマンとは
『マリッジ・ストーリー』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ランディ・ニューマン
発売・販売元:Rambling RECORDS Inc.
品番:RBCP-3358

ディズニー/ピクサー映画で友情讃歌を歌っているオジサン。ノスタルジックなアメリカの風景を美しいオーケストラ音楽で彩るマエストロ。シニカルな歌詞で世の中を風刺する頑固オヤジ……。人によって、これほど印象が異なるアーティストも珍しいかもしれない。このように、アメリカを代表する作曲家/シンガーソングライターのランディ・ニューマンは、多才でユニークな人物である。

■独自のスタイルを持つ、天才肌のクセ者シンガーソングライター

伯父/叔父のアルフレッド・ニューマン(『慕情』『王様と私』ほか)、エミール・ニューマン(『我等の生涯の最良の年」『ジャンヌ・ダーク』ほか)、ライオネル・ニューマン(『紳士は金髪がお好き』『ハロー・ドーリー!』ほか)は映画音楽界の伝説的存在で、従弟らのデヴィッド・ニューマン(『ギャラクシー・クエスト』)、トーマス・ニューマン(『007 スカイフォール』)、ジョーイ・ニューマン(『チョコレートドーナツ』)も映画音楽家。さらに従妹のマリア・ニューマンは作曲家/ヴァイオリニストという、名門音楽家一族“ニューマン・ファミリー”の一員であるランディは、ソングライターとしてキャリアをスタートさせた。

1968年にデビューアルバムをリリースし、今日まで11枚のスタジオアルバムを発表。ユーモアとペーソスを交えて世の中(特にアメリカ社会)を風刺してみせる独特な作風と、優れたメロディセンス、伯父/叔父譲りの編曲テクニックでファンに長年愛されている。

「セイル・アウェイ」や「ショート・ピープル」など、ランディの辛辣なユーモアが炸裂する歌は、発表当時物議を醸すこともあったという。しかし、彼は“あえてイヤな奴を演じて歌う”というスタイルで、アメリカの「影の部分」に鋭く迫ったり、シニカルな歌詞を通して「人間というのは(自分も含めて)こんなものです」と自虐的に分析したりする、人間観察力と洞察力に優れたストーリーテラー的なアーティストと言えるだろう。

プーチン大統領を題材にした「Putin」や、テレビシリーズ『名探偵モンク』(2002年〜2009年)のテーマソング「It’s a Jungle Out There」を収録した2017年のアルバム「Dark Matter」でもランディのシニカルなユーモアは健在なので、辛口のジョークと数々の示唆に満ちた詞の世界を是非一度味わって頂きたいと思う。

■『マリッジ・ストーリー』と『トイ・ストーリー4』で第92回アカデミー賞の作曲賞・歌曲賞にノミネート

シンガーソングライターとしての活動がメインのランディではあるが、映画/テレビドラマの分野でも優れた実績を上げている。今日まで30本前後の作品で音楽を担当し、アカデミー賞の作曲賞・歌曲賞に20回以上ノミネート。『モンスターズ・インク』(2001年)と『トイ・ストーリー3』(2010年)で歌曲賞を受賞している。

近年はディズニー/ピクサー映画の仕事が多かったランディを、久々に実写映画の世界へ呼び戻したのが、『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』(2017年)の鬼才ノア・バームバック監督だった。

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この作品でコラボレートして意気投合した二人は、今回『マリッジ・ストーリー』(2019年)で再びタッグを組み、作曲賞を含む6部門でアカデミー賞にノミネートされた。そしてランディは『トイ・ストーリー4』(2019年)の挿入歌でも歌曲賞にノミネートされている。

■室内オーケストラの演奏で、登場人物の内面を細やかに描く

『マリッジ・ストーリー』は、ある夫婦の離婚のプロセスを描いた物語ということで、ランディはパーソナルな内容に合わせて、慎ましやかな室内オーケストラ音楽を作曲している。『トイ・ストーリー』シリーズなどでのスケール感のある音楽に比べて、ストリングスや木管楽器などが少人数で演奏されているため、チャーリー(アダム・ドライヴァー)とニコール(スカーレット・ヨハンソン)の内面がデリケートに描かれたスコアになっている。

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ランディの音楽は、夫婦の言い争いのシーンなどではほとんど使われておらず、日常の何気ないシーンで流れることで、そこに特別な意味を与えているように聞こえるのが興味深い。日常の穏やかな時間に交わされるやり取りや、ちょっとした行動の中に、チャーリーとニコールの心の優しさや、息子への愛情が現れているのだと示唆しているかのように――。自身のソロ作でロマンティックな曲も多数発表しているランディらしい、ベテランの技が光る美しいメロディのスコアである。

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第92回アカデミー賞では、ランディと共に従弟のトーマスも『1917 命をかけた伝令』(2019年)で作曲賞にノミネートされている。ニューマン・ファミリーの従兄弟同士が顔を揃える作曲賞の行方にもご注目頂きたい。

文:森本康治

『マリッジ・ストーリー』はNetflixで独占配信中

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