ベテラン&若手刑事の“コンビの系譜”と“家庭描写”から見る『トレーニング デイ』と『WXIII 機動警察パトレイバー』

ベテラン&若手刑事の“コンビの系譜”と“家庭描写”から見る『トレーニング デイ』と『WXIII 機動警察パトレイバー』
『トレーニング デイ』
ブルーレイ ¥2,381+税/DVD特別版 ¥1,429 +税 ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
© 2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
『WXⅢ 機動警察パトレイバー』
税抜価格:¥7,800+税 発売元:バンダイナムコアーツ・東北新社 販売元:バンダイナムコアーツ
©2002 HEADGEAR/BANDAI VISUAL/TOHOKUSHINSHA

■主役を裏方に回し2人の刑事の地道な捜査を描いた『WXIII』
【アッチ(実写)もコッチ(アニメ)も】

『WXIII 機動警察パトレイバー』(2001年)は劇場版『機動警察パトレイバー』シリーズ(1989年〜)の第3作目。本来の主役である特車二課第2小隊の面々は脇に周り、ベテランの久住刑事と若手の秦刑事のコンビが主役を担当している。

『WXⅢ 機動警察パトレイバー』©2002 HEADGEAR/BANDAI VISUAL/TOHOKUSHINSHA

2人が追うのは、湾岸地域で発生する怪事件。その事件には“13号”と呼ばれる巨大生物が関わっていた―。

『WXⅢ 機動警察パトレイバー』©2002 HEADGEAR/BANDAI VISUAL/TOHOKUSHINSHA

あらすじからもわかる通り『WXIII』は怪獣映画であると同時に、“ベテランと若手のコンビの刑事もの”でもある。ベテランと若手の〜と言われると「ああ、ああいう感じね」と納得する人も多いのではないだろうか。そこで思い浮かぶ役者・キャラクターの顔は、世代によってそれぞれだろうけれど。

『WXⅢ 機動警察パトレイバー』©2002 HEADGEAR/BANDAI VISUAL/TOHOKUSHINSHA

こういう作品ではたいがい、ベテラン刑事は頑固で古風、若手刑事は軽くて“現代っ子”と相場が決まっている。そして、そこに作品それぞれの味付けが施されることになる。おもしろいことに、このパターンは洋の東西を問わず共通している。

『WXⅢ 機動警察パトレイバー』
税抜価格:¥7,800+税
発売元:バンダイナムコアーツ・東北新社
販売元:バンダイナムコアーツ
©2002 HEADGEAR/BANDAI VISUAL/TOHOKUSHINSHA

■刑事ドラマにおける“コンビの系譜”と“家庭”の描写

邦画を見れば、古くは『野良犬』(1949年)における村上(三船敏郎)と佐藤(志村喬)あたりまで遡ることができる。そのほかにも『張込み』(1958年)の下岡(宮口精二)、柚木(大木実)、『砂の器』(1974年)の今西(丹波哲郎)と吉村(森田健作)といった、邦画史に残る作品にもベテラン・若手コンビは登場する。

洋画に目を向けても、『ルーキー』(1990年)におけるニック(クリント・イーストウッド)とデヴィッド(チャーリー・シーン)、『セブン』(1995年)におけるサマセット(モーガン・フリーマン)とミルズ(ブラッド・ピット)ほか枚挙に暇がないし、正確には刑事ではないけれど『メン・イン・ブラック』(1997年)のK(トミー・リー・ジョーンズ)とJ(ウィル・スミス)もそれに当てはまる。

『WXIII』の久住は、昔気質でパソコンが苦手。一方、若手の秦は飄々としてパソコンも得意。この2人のコントラストは、見事に“コンビの系譜”の上に存在している。

こうしたコンビ刑事ものには、見逃せない要素がもうひとつある。それは“家庭”を感じさせるシーンだ。家庭とは、修羅の道である刑事の仕事とは正反対の場所にあるもの。それだけに、家庭は映画の中で特別な位置を占めていることになる。

例えば『野良犬』では、ベテランの村上が若手の佐藤を家に招いて家庭料理を振る舞うし、『セブン』では逆に若手のミルズが、ベテランのサマセットを家に誘う。どちらもベテランと若手の人間的な交流のポイントになる大事なシーンだ。『張込み』に至っては、ある家庭を張り込む話だし、そこに2人の刑事の家庭の事情が挿入されている。『メン・イン・ブラック』ではKが、自分が得ることができなかった家庭を追いかけるように、一人の女性の姿を追う。

ちなみに『WXIII』の場合はそこをひとひねりしてあり、秦が久住の家に誘われるものの、家族が出ていってしまった久住の家はとても寒々しい場所として描かれていた。

『WXⅢ 機動警察パトレイバー』©2002 HEADGEAR/BANDAI VISUAL/TOHOKUSHINSHA

■毒を喰らわば皿まで……コンビ刑事ものの定石を逆転させた『トレーニング デイ』

以上、コンビ刑事ものの注目点を書いてきたが、『トレーニング デイ』(2001年)がおもしろいのは、こうしたコンビ刑事ものの定石が見事に逆転した世界を描いているところなのだ。

『トレーニング デイ』
ブルーレイ ¥2,381+税/DVD特別版 ¥1,429 +税
ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
© 2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

ロス市警の麻薬取締課に配属された若手刑事ジェイク(イーサン・ホーク)がコンビを組んだのは、ベテラン刑事アロンゾ(デンゼル・ワシントン)。このアロンゾは「狼を倒せるのは狼だけ=悪を倒すには悪になる必要がある」という主張の持ち主で、犯罪摘発のために法を犯すだけでなく、それを言い訳に悪徳と不正を当たり前に生きているのだ。

『トレーニング デイ』© 2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

普通の作品ではベテランから若手への叱責となるところが、本作では正反対に「悪事の強要」に変奏されている。また、家庭を感じさせるシーンもあるが、そのうちのひとつがアロンゾの“愛人の家”というのも実に皮肉っぽい。そしてこの愛人の家は、最終的に銃撃戦の現場になってしまうのだ。

『トレーニング デイ』© 2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

こんなアロンゾに対し、ついに怒りを爆発させるジェイク。ちなみに映画の冒頭にも、家庭を感じさせるシーンがある。そこで描かれたジェイクの家庭は、暴力とは無縁の神聖なまでに幸福な空間として描かれているのだが、こちらのほうがコンビ刑事映画にしばしば出てくる“家庭像の系譜”に近い。そして、アロンゾとのこの災厄に満ちた1日(=トレーニング・デイ)を終えたジェイクは、この家へと戻っていくのだった。

『トレーニング デイ』© 2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

文:藤津亮太

『トレーニング デイ』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年2〜3月放送

関連記事(外部サイト)