今年もコナンの季節がやって来た!“国民的映画”となった『名探偵コナン』劇場版シリーズを考察

今年もコナンの季節がやって来た!“国民的映画”となった『名探偵コナン』劇場版シリーズを考察
『名探偵コナン 緋色の弾丸』©2020 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

■「名探偵コナン」は「フーテンの寅さん」を上回る“国民的映画”に!?

毎年、4月になると「『名探偵コナン』の劇場版を見られる!」と思う人が増えているのではないだろうか。1997年以来、四半世紀にわたって劇場版を見続けている熱心なファンにとっては当然のことかもしれないが、ここ数年の新作に対する期待感の高まりには目を見張るものがある。例えば、2020年の『名探偵コナン 緋色の弾丸』(4月17日公開予定/24作目)には、劇場版アニメシリーズとして初の興行収入100億円超えの期待がかかるが、ここまでくるともう“国民的映画”のレベルである。

『名探偵コナン 緋色の弾丸』©2020 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

そんな大げさな、と思うかも知れないが、かつて国民映画と呼ばれた『男はつらいよ』シリーズ(1969年〜)を『コナン』はとっくに超えてしまっているのである。『男はつらいよ』シリーズの平均観客動員数は163万人、それに対してコナン劇場版は310万人。またトータル動員数では『男はつらいよ』が8,130万人と、『コナン』の7,130万人(23作)を1千万人ほど上回っているが、昨年の『紺青の拳』の動員数(700万人)を考えると、2021年には追い抜くことは間違いない。以上のことを考えても、『コナン』がすでに国民的映画の領域に達していることが理解できるはずだ。

『名探偵コナン 緋色の弾丸』©2020 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

■永遠のライバル!?  国民的キャラクター『ドラえもん』との対決

とはいえ、まだ日本映画で1番というわけではない。“寅さん”以上に強力なライバルが存在する。それが映画『ドラえもん』シリーズである。そう言われてみれば、確かに“ドラちゃん”も国民的存在である。以下の図は、『コナン』劇場版がスタートした1997年以降の『ドラえもん』との興行収入比較である(『STAND BY ME ドラえもん』[2014年]、『ルパン三世VS名探偵コナン』[2009年]は除外)。

図1:<名探偵コナンとドラえもん興行収入比較>(映画製作者連盟発表データをもとに筆者作成)

当初は大きく差を付けられていた『コナン』だが、2000年代からは差が縮まり、2002年の『ベイカー街の亡霊』で遂に逆転し、その後は伯仲状況となる。通算での『ドラえもん』VS『コナン』の興収勝負は、『コナン』の10勝12敗1不戦勝(2005年に『ドラえもん』映画がお休みしたため)。ところが、2016年から『コナン』が永遠のライバルである『ドラえもん』にぶっちぎりの差を付けるようになり、年ごとにその幅は広がる一方なのだが、一体どうしてなのか?

■マンネリ対策が功を奏し三代目の監督で大ブレイク!

2000年代以降の『コナン』と『ドラえもん』の興行収入の差は、最大でも10億円台。それが2016年 22.1億、2017年 24.6億、2018年 38.1億、そして2019年には43.5億というように、年を追うごとに大きな開きが生まれるようになった。その要因は幾つか上げられるであろうが、大きいのは監督の起用に成功したからであろう。

『名探偵コナン 緋色の弾丸』©2020 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

『ドラえもん』もそうだが、『コナン』や『ポケットモンスター』『クレヨンしんちゃん』といった長期劇場シリーズで最大のリスクは“マンネリ”である。したがって、それを避けるため、劇場版『コナン』の場合、スタート当初からきっちりと監督のローテーションが組まれていた。1〜7作目は1949年生まれのこだま兼嗣、8〜14作目が1961年生まれの山本泰一郎、15〜21作目までは1972年生まれの静野孔文が務め、22作目からは1981年生まれの立川譲といったように、7作ずつ担当して一世代下の後継監督にバトンタッチという見事なパターンである。

『名探偵コナン 緋色の弾丸』©2020 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

これらの監督の中で現在の大ヒットパターンをつくり、『コナン』に“国民的映画”の地位をもたらしたのは、三代目の静野監督の貢献によるところが大きい。2011年の初監督作品『沈黙の15分(クォーター)』でいきなり見せた、スケボー&スノーボートのスピード感溢れる展開は観客の度肝を抜いた。ハリウッド映画に少しも見劣りすることはないスケールのアクションは、ファンだけでなくより幅広い層へのアピールに成功し、キャラクター人気と相まって大ブレイクへの道を開いた。『コナン』本来の明察な推理を好むファンからの評価が低かった側面はあるものの、床にポップコーンを散乱させるほどの衝撃をもたらす静野アクションは『コナン』初体験者でも十分楽しめるものとなり、これによって観客層が広がったのは間違いない。その道筋をつけた静野監督の7年目以降の起用もあり得ると思っていたところ、先ほどのローテーション通りあっさりと立川監督に交代したのであった。

『名探偵コナン 緋色の弾丸』©2020 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

■あり得ないでしょ!? な展開すら楽しめるライブ・エンターテイメント!

ところが、立川監督は『ゼロの執行人』(2018年)1作だけで交代。現在は劇場版『コナン』の演出を務めていた1983年生まれの永岡智佳監督にバトンタッチし、『緋色の弾丸』も彼女が監督した。現在のアクション路線を築き上げた静野監督交代の際に、興行収入への影響が懸念されたが、『ゼロの執行人』は前作を23億円も上回る91.8億円というメガヒットとなった。さらに、永岡監督に変わった『紺青の拳(こんじょうのフィスト)』(2019年)も記録を更新し、懸念が杞憂に終わったのは、静野監督が確立した予測不能の王道パニックアクション路線をうまく踏襲できたからであろう。

今や頭ではなく身体で事件を解決するようになった『コナン』のアクションシーンは、もはやファンタジー領域ではないかという声さえ聞かれるが、床に落ちたポップコーンが物語るように、劇場版『コナン』がある種のライブ・エンターテインメント的なダイナミズムを持つようになったからであろう。コンサートや2.5次元ミュジーカルの動員が増えているというトレンドにも見事に合っている。ここ数年、劇場でコナンを見ながら「あり得んだろー!?」「その手でくるか!」と心の中で突っ込むのも、楽しみのひとつとなっているようだ。「発言自由上映」があれば、さぞかしにぎやかになると思うのだが。

しかし、特に「あり得んだろー!」と思った『紺青の拳』におけるコナンの“出国手段”が、何とカルロス・ゴーン氏によって実現されたのには心底驚いた。『緋色の弾丸』はどんな手でくるのか? 公開が待ち遠しい。

文:増田弘道

『名探偵コナン 緋色の弾丸』は2020年4月17日(金)より全国公開

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