やっぱり“悪いマ・ドンソク”もイイ! ヤクザ、刑事、殺人鬼の血みどろバイオレンス『悪人伝』

やっぱり“悪いマ・ドンソク”もイイ! ヤクザ、刑事、殺人鬼の血みどろバイオレンス『悪人伝』
『悪人伝』© 2019 KIWI MEDIA GROUP & B.A. ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED.

■全身刺青! 鈍器の如き拳をフル活用するヤクザなマブリー!!

我らがマブリーことマ・ドンソクがヤクザを演じ、警察と協力して連続殺人鬼をとっ捕まえようと文字通り腕を振るう! 映画『悪人伝』は、連続殺人鬼に襲われた屈強なヤクザが暴力刑事と組んで犯人探しに乗り出すという、ひさしぶりに“ガチで悪いマブリー”が拝める嬉しいバイオレンス・アクションだ。

『悪人伝』© 2019 KIWI MEDIA GROUP & B.A. ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED.

本作の強烈な映像を事前にチラ見して、戦々恐々としている人も少なくないのではないだろうか。しかし、そこまで直接的にエグい描写はないのでご安心を。韓国のサスペンス映画に慣れていれば、目を背けたくなるほどでは……と言いたかったが、序盤でマブリーが結構アレな暴力を振るうので、血を見るのが苦手な人にはキツいかもしれない。そもそもヤクザと連続殺人鬼が登場する映画なのだから、ある程度の覚悟はしておいたほうがいいだろう。

『悪人伝』© 2019 KIWI MEDIA GROUP & B.A. ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED.

ただし本作は日本の某ヤクザ映画と違って「バカヤローコノヤロー」みたいな大声での罵り合いが少なく、ヤンチャな下っ端よりもボス=チャン・ドンス(マブリー)のほうがフィジカルに怖いというバランスが大きな魅力。マブリーの肉体はもちろん、ドンスの「刺されて轢かれてなお死なない」というタフさの演出にも繋がっていて、サスペンス要素が強いわりに一定の安心感もある。そこに暴力刑事のチョン・テソク(キム・ムヨル)をぶつけることで人間くさいやり取りを発生させ、バイオレンスだけでなくドラマ部分の強度もしっかり確保しているのが見事だ。

『悪人伝』© 2019 KIWI MEDIA GROUP & B.A. ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED.

■荒唐無稽な設定と思いきや……殺人事件もヤクザの抗争も実話ベース!?

ヤクザと警察が組むと言っても、チョン刑事からすればドンスに犯人をみすみす殺させてはメンツが丸潰れである。屈強な男たちが、お互いの懐を探り合いつつ繰り広げる鍔迫り合いは観ていて燃えるが、そこに殺人鬼という異物を混入させることによって、なんともヒリヒリとした緊張感を醸成。ここで重要になってくるのが、キム・ソンギュ(和牛のツッコミ似)演じる殺人鬼のキャラ造形だ。

『悪人伝』© 2019 KIWI MEDIA GROUP & B.A. ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED.

なにしろ腕力では絶対に勝ち目のないマ・ドンソクを相手にするのだから、殺人鬼の精神力、というか狂人ぶりもハンパじゃない。ヤクザと警察、双方の敵として不足のないキャラクター像として、このフィクショナルなまでの“強さ”は必要不可欠だったのだろう。とはいえ劇中の連続殺人は2005年に天安市で実際に起こった事件がモチーフになっているとのことで、その不気味な存在感は近年の猟奇モノのなかでも際立っている。

『悪人伝』© 2019 KIWI MEDIA GROUP & B.A. ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED.

そんな犯人の凶悪さやドンソクの豪腕ぶりに目を奪われがちだが、ヤクザ同士の乱闘シーンもスタント俳優たちがかなりイイ仕事をしていて、身体が心配になるレベルの激しさ。しかも、こちらのドタバタも00代初頭にギャンブル(成人ゲームセンター)業界に進出したヤクザ同士の利権争いがベースになっているそうだ。一見すると突飛なシチュエーションのようだが、同時期に起こった事件を映画の中でぶつけることで、ここまで説得力が生まれるものかと驚かされる。

『悪人伝』© 2019 KIWI MEDIA GROUP & B.A. ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED.

■殺人鬼にどうオトシマエをつけさせる? 最後の最後までケレン味たっぷり!

署内でも現場でも寄る辺のないチョン刑事のキャラの弱さが少し気の毒になってくるが、ついに腹を括ってヤクザと協力体制をとり、ここぞというときに場を引き締める終盤の展開は鳥肌モノ。そして双方の立場を超えたほのぼの展開から、ドンスとチョンの関わった“ある出来事”をきっかけに、一気にクライマックスへとなだれ込んでいく。これは2人の“善”の心の発動のようにも見えるし、切れ味の悪い刃物で刺された鈍い苦しみから解放されたいがための懺悔のようにも見える。

『悪人伝』© 2019 KIWI MEDIA GROUP & B.A. ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED.

ちなみに映画冒頭、ドンスの組事務所にドドンと飾ってある絵画はダンテの<神曲>にインスパイアされた「地獄のダンテとウェルギリウス」。地獄に追放された男がもうひとりの男の喉元に噛み付き、背後では悪魔がニンマリと満足そうに腕を組んでその光景を眺めている……という、人間の“憎しみ”を強烈な構図で表現した作品だ。この小ネタが意外やラストシーンに繋がってくるものだから、思わず「うわ〜!」と笑顔で叫びたくなること間違いなしである。

『悪人伝』は2020年7月17日(金)より全国公開

関連記事(外部サイト)