ノーランの「何度も観ろ」という声が聞こえてくる!? 『TENET テネット』は映画館のど真ん中で観たい体感型映画

ノーランの「何度も観ろ」という声が聞こえてくる!? 『TENET テネット』は映画館のど真ん中で観たい体感型映画
『TENET テネット』© 2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved

■そもそもノーラン作品ってどんな感じ?

クリストファー・ノーラン作品を観たことない人にどんな監督か簡単に説明しますと、客観的に「なるべくリアルに撮る」のが上手です。「本当にそこに人がいる雰囲気の画作り」ができるから、現実離れしたSFやヒーロー映画でも実際に起きていることのように見れる。人物にはあまり切迫しないから、キャラクターの人間味が薄いきらいはありますけど、だからこそ『ダークナイト』(2008年)みたいな「ヒーローものだけど暗い」映画が撮れたともいえる。暗いというか、ドライな感じ。

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もう一つ。脚本や設定がすごい緻密です。例えば前作『ダンケルク』(2017年)は戦争を舞台にした映画でしたが、陸・海・空の3つのそれぞれ異なる長さのストーリーが同時に進み、途中で交わるってことをやりました。『メメント』(2000年)は10分しか記憶を保てない主人公が犯罪を犯すところから始まって、時間を逆行して描いていくことで物語が明るみになる仕組みの映画でした。『インセプション』(2010年)は夢に潜り込んでいく際の階層毎の物理原則の変化設定が巧みでした。

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「写実的な画作り」と「新しいギミック」が作家性で、それを担保しながらスケール感のあるビックバジェット映画を撮るのがノーラン、だと思ってます、僕は。

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劇中で語られる言葉でもありますが、「あんまり頭で考えない」方が楽しめる。メインの筋はシンプルだから無理に追わず、「時間を逆行する」というルールを使ってノーランがどう遊んだか、どういう画を撮りたかったのか、それを観て感じて楽しむのが1番の醍醐味かと。一回ノれると、かなり気持ちよくなってきます。そこに、めちゃくちゃイイ音がドーーーーンと雪崩れ込んできます。低音えぐいです。絶対に映画館で、できれば真ん中の方の席がおすすめ。家では体感できないローを浴びられます。体感型映画かな。

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■もしかしたら人生って2時間に凝縮したらこんな感じかも? 過去作にはなかった後味

いわゆるシネフィルの皆さんには毎度ちょっぴりバカにされがちなノーランですけど、作家性からして、そこを重視して語ることがそもそもナンセンスじゃなかと僕は思ってます。画面とギミックを楽しめばいい。「そんなの映画じゃない!」って人もいるでしょう。正直僕もそう思うけど、今作は良かったです。

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まず、『007』ぽいところがとてもいい。開き直ったかな? と思った。スーツ姿のカッコよくて強い男が大活躍する御都合主義ストーリー。もう一つ良かったところは、見終わった時に「もしかしたら人生って2時間に凝縮したらこんな感じかもね」て思ったんです。今までのノーラン作品では感じなかった後味があった。

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もちろん普通に暮らしていたら時間を遡ったりテロリストと対峙することはないだろうけど、僕たちは同じ時間の中で過去を振り返ったり未来を考えたりするし、過去を知ることで物事の見え方が変わったり、未来を想像することで今どうするのか決めていたりする。つまり、実は時間の中を行ったり来たりしながら生きてる。そして、どんなに客観的視点を持とうとしても、所詮は主観だけで生きている。つまり、みんなよってたかって御都合主義。なるほど。だったらこんな映画もありかもしれない。

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文:夏目知幸

『TENET テネット』は2020年9月18日(金)より全国公開

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