『フライト・キャプテン 高度1万メートル、奇跡の実話』は英雄譚ながら“チーム”を讃えるリアル志向の航空パニック!

『フライト・キャプテン 高度1万メートル、奇跡の実話』は英雄譚ながら“チーム”を讃えるリアル志向の航空パニック!
『フライト・キャプテン 高度1万メートル、奇跡の実話』© 2019 Bona Entertainment Company Limited All Rights Reserved.

■超人的な英雄は登場しない正攻法な航空パニック

本国で大ヒットを記録した航空パニック『フライト・キャプテン 高度1万メートル、奇跡の実話』が2020年10月2日(金)より公開中だ。

『フライト・キャプテン 高度1万メートル、奇跡の実話』© 2019 Bona Entertainment Company Limited All Rights Reserved.

タイトル通り、2018年に実際に起きた事件の映画化だ。重慶からチベット・ラサに飛ぶ旅客機、その操縦室の窓が突然、大破。副操縦士の上半身が窓の外に投げ出されてしまう。

窓の外は氷点下30度。機内の気圧も失われる。極限状態の中で機長、クルーたちが取った選択とは?

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……というストーリーからも分かるように、非常にベーシックというか正攻法な航空パニックである。大がかりなセットを使って撮影されたという機内の大混乱ぶりは、かなりの迫力。自分が経験した乱気流による揺れを(体が)思い出したりもした。

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タイトルが『フライト・キャプテン』で原題も『中国機長』だから、主人公であるリュー機長(『マンハント』[2017年]のチャン・ハンユー)の超人的、英雄的な活躍を描くものだと思われるだろう。だが実際には、この英雄譚の英雄は1人ではない。

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■あくまで実話ベースでリアル志向! 航空業界の“プロ”たちを丹念に描く

『インファナル・アフェア』(2002年)で知られるアンドリュー・ラウ監督は、フライト前の様子を手際よく、かつ丹念に描き出す。機長の朝のルーティン、フライト前のミーティングや食事、機内での準備、それに管制室。

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ことが終わってからの描写も丁寧だ。たとえばタラップを降りる乗客の姿を映して「めでたしめでたし」ではない。調査員が操縦室を点検する場面もある。機長と同じくらい、客室乗務員も活躍する。

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つまり本作の主人公、英雄たる存在は航空業界に携わるチーム全員だ。乗客の命を最優先し、安全な運航のために全力を尽くすプロフェッショナルたちである。

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そうしたところからリアル志向であり、あくまで実話ベース。「機長が倒れCAが旅客機を操縦」とか、そういった突飛なことは起こらない。めちゃくちゃなトラブルを巻き起こす迷惑な乗客もいない。そうなりそうな場面はあるのだが、ほどよく収まる。それが実話というものだ。

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建国70周年記念、<中国の誇り三部作>の一本(『ブレイブ 大都市焼失』[2019年]ほか)ということで愛国的な感じに「あぁ……」となったりもするのだが(そういう中国映画は他にもある)、それはそれとしてというか、映画の“本線”を邪魔するところまではいかない。パニック大作ながら、抑えるところは抑えているのがこの映画の長所だろう。

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『フライト・キャプテン 高度1万メートル、奇跡の実話』© 2019 Bona Entertainment Company Limited All Rights Reserved.

文:橋本宗洋

『フライト・キャプテン 高度1万メートル、奇跡の実話』は2020年10月2日(金)よりシネマート新宿・心斎橋ほか順次公開

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