約50年を経て遂に真犯人に迫る!『マルコムX暗殺の真相』は過去もっとも核心に近づいた衝撃のドキュメンタリー

約50年を経て遂に真犯人に迫る!『マルコムX暗殺の真相』は過去もっとも核心に近づいた衝撃のドキュメンタリー
『マルコムX暗殺の真相』Netflixで独占配信中

■新発見のない“真相モノ”とは一線を画す“本物”のドキュメンタリー!

『マルコムX暗殺の真相』は、自身もムスリム信者であるアブドル・ラマハーン・モハンマド氏が徹底した調査のもと、マルコムXの死の真相を紐解いていく構成だ。「マルコムX自伝」など彼に関する書籍や数あるドキュメンタリー作品を鑑賞済みの人には新たな発見は少ないかもしれないが、ほのかにミステリー仕立ての演出によってぐいぐいと興味を惹きつける内容になっている。「内ゲバで殺された公民権活動家でしょ?」というざっくりした認識を改める機会としても、観ておいて損はない優れたドキュメンタリーだ。

もちろん世界中で盛んになっているBLM運動への言及もあり、マルコムXの死から50余年を経て鮮明な映像は残されるようになったものの、アフリカ系アメリカ人たちの境遇にはほとんど変化がないことがよく分かる対比だ。当時のマルコムを語る人々の中には、2020年5月に白人警官に窒息死させられたジョージ・フロイド氏(享年46)の追悼式で弔辞を読み上げた牧師アル・シャープトン氏の姿もある。

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しかし、その噂が真相から大きく外れてはいないというのが一番の驚き(というか恐怖)であり、唯一逮捕された殺害犯のひとり、タルマージ・ヘイヤー(旧名トーマス・ヘーガン)が殺害を懺悔する姿も映し出される(無期懲役を言い渡されたが2010年に仮釈放となった)。後に彼は同じく逮捕された信者2名の無実を訴えたが、そのうちの1人で存命の冤罪犯アジズ氏は20年の刑期を終え、彼と家族をいっさい援助しなかったNOIに恨みをぶつける。5名いたとされる実行犯のほとんどが逮捕されなかった裏には、人生を滅茶苦茶にされた彼のような人間がいるという事実が重く存在するのだ。

本作はNOIのダークサイドにもスポットを当てる。ニュージャージー州ニューアークはいまだマルコムの影響が色濃い街でありながら、指導者の殺害犯を産んだ地でもあるという闇に覆われている。そんな矛盾もあって犯人に関してはアンタッチャブルな話題だったようだが、優秀なスポークスマンだったマルコムに対する教団内部の“ざわつき”はなかなかグロテスクで、観ていてゲンナリしてくる。そして関与が疑われるFBIの手口は、もはや危険人物の監視どころではない、まるで政治犯を追い詰めるかのような狡猾で禍々しいものだった。

■信仰は救済か、目を曇らせる劇薬か……思わず背筋が凍る衝撃の事実の数々

マルコムは政治に無関心を決め込むNOIが許せず、キング牧師の徹底した非暴力無抵抗の信念にも同調できず一時は衝突もした。そんなマルコムとFBIと密会の録音テープまで出てくるのには驚かされるが、その会話の内容はFBIが教団内部からの瓦解を企てていたことを匂わせるものだ。カシアス・クレイ(後のモハメド・アリ)とのカリスマ同士の邂逅もポジティブな作用はなく、やがてマルコムは尊師ムハンマドを口撃するようになり、同時に死へのカウントダウンもはじまっていく。

マルコムXは自身も信仰によって救われ、多くの人々を導き、そして信仰によって命を落とした。本シリーズで触れられる講話の端々からは、なぜ彼が大きな尊敬を集めたのかがよく分かるだろう。かつては白人に服従し同化することでしか未来を想像できなかった、そう植え付けられてきた人々に、黒人の強さや美しさを説いたマルコム。エピソード後半ではついに本格的な容疑者追求パートに突入するのだが、ここでも驚きを通り越して呆れてしまうような展開が待っていて……その衝撃の内容は、ぜひ実際に観て確かめてほしい。

かなり苦い余韻を残すドキュメンタリーながら、“真相”と銘打つだけあって過去もっとも事件の確信に迫っているので、今後の“再捜査”の進展にも注目したいところだ。

『マルコムX暗殺の真相』はNetflixで独占配信中

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