ジブリの後継者はアイルランドにいた!『ウルフウォーカー』 アカデミー賞を巡ってピクサーと一騎打ち!?
2020年10月30日 17時30分 BANGER!!!
■あの細田守監督も激賞する注目作!
第93回アカデミー賞長編アニメーション部門の最有力候補『ウルフウォーカー』が、2020年10月30日(金)から公開されることとなった。
実はこの映画、公開翌日のハロウィンとも大いに関係があるのだが、作品を制作したカートゥーン・サルーンは過去三作しか長編をつくっていない上に、日本では公開規模が小さかったためほとんど知られていない。
しかし、海外では知る人ぞ知る実力スタジオであり、ジブリ以外の日本人で唯一アカデミー賞にノミネートされた細田守監督も、『ウルフウォーカー』公開記念オンライントークで興奮気味に同作について語っている。
■ハロウィンのルーツ“ケルト文化”を描く三部作の最終章!
『ウルフウォーカー』は、世界で最も美しい福音書である「ケルズの書」を描いた『ブレンダンとケルズの秘密』(2009年)、日本の人魚伝説にも繋がる『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』(2014年)に続くケルト三部作にして最終章となる作品であり、ケルト文化特有のファンタジー性や冒険要素が最も高い作品となっている。
ウルフウォーカーは「オオカミと共に移動する人々」と呼ばれている。アイルランドの森を開拓しようとケルキニーにやって来たイングランド人にとって、オオカミは単なる害獣でしかないが、町の人々にとっては侵略者から土地を守る聖なる存在だ。だから、オオカミ退治のハンターである父とこの地を訪れたイングランド人の女の子ロビンにとってもオオカミは敵でしかなかったのだが、ある事件がもとでウルフウォーカーのメーブと知り合い、それがきっかけとなり、寝ているときに肉体から霊体が離れ大地を駆け抜けるという神秘体験をする。そして、ロビンもオオカミという存在を深く知ることとなるのだった。
■アカデミー賞はピクサーとの一騎打ち!?
公開本数が少なかった今年こそ、カートゥーン・サルーンの『ウルフウォーカー』がアカデミー賞を獲得する確率は非常に高くなったが、その前に立ちはだかるのはピクサーの『ソウルフルワールド』(2020年11月全米公開予定)である。
ところが、その後、ディズニーはコロナ禍の影響を考慮して、200億円をかけたと言われる超大作『ムーラン』(2020年)と同じく、『ソウルフルワールド』も配信での公開にシフトさせた。劇場公開が前提のアカデミー賞だが、去年からアニメーション部門は配信作品もOKとなっており、『ソウルフルワールド』がノミネートされても全く問題はない。そして、その対抗馬となる有力作品は『ウルフウォーカー』だけなのである。
昨年、いきなり2つもノミネートされたNetflixにもめぼしいアニメーション作品はない。アカデミー賞受賞率52.6%のピクサー『ソウルフルワールド』が最有力なのは間違いないが、最近ピクサー・ディズニー作品が常連となっており(両方合わせると受賞率なんと68.4%!)、選ぶ方も多少食傷気味である。ノミネート率100%であっても、まだ受賞未経験のカートゥーン・サルーンの『ウルフウォーカー』は、おそらく審査員にも新鮮に映るだろう。やはり来年のアカデミー賞はこの2つの映画の一騎打ちである。
文:増田弘道
『ウルフウォーカー』は2020年10月30日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか公開