西野亮廣の世界観をSTUDIO4℃がバックアップ! 映画『えんとつ町のプペル』は西野が豪語する“ディズニー超え”の第一歩となるか?
2020年12月23日 11時30分 BANGER!!!
2016年に発表された絵本「えんとつ町のプペル」は、いま思えば今回の映画のためのプリプロダクション(Pre Production)であり、贅沢なストーリーボード作成のための作業であったように思える。
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— 西野えほん(キングコング) (@nishinoakihiro) December 22, 2020
正直に言うと、最初にこの絵本に触れたとき、緻密を極めた絵のタッチ、ゴージャスな色使い、そして日本離れしたスケール感に驚き、国内でのアニメーション化は不可能だと感じた。むしろ海外からの要望が強いのではと思っていたところ、2019年12月に映画化が発表され、どうやってアニメーションにするつもりなのだろうと訝(いぶか)しんだ。
■W・ディズニーを思わせた絵本「えんとつ町のプペル」
かねてより「ディズニーを超える」と公言している西野亮廣であるが、4年の歳月をかけ総勢35人のチームによって完成された絵本「えんとつ町のプペル」の作業工程を見ると、マジでウォルト・ディズニーに思えてきた。
その昔(1960年代)、日本テレビで「ディズニー・ランド」という番組を放送しており、そこでしばしばウォルト・ディズニーがアニメーションをディレクション(演出。本来はプロデューサーなのだが、番組を見る限りはかぎりなく監督に近い)するシーンが登場した。この番組はディズニーランドを建設するにあたって、その資金をアメリカ三大放送網のABCテレビから借りる見返りのために制作された番組なのだが、ウォルト・ディズニーがストーリーボード(ストーリー順につくられた詳細なイメージボード)の前で自分のイメージを伝えるために、アニメーターなどのスタッフに微に入り細に入り説明するシーンが多々あった。あるときはその作品の主人公に成り切り、身振り手振りの演技、そして言葉を尽くしてイメージを伝えていく。そんなウォルト・ディズニーに、本来個人でつくるのが当たり前の絵本制作をチームで挑んだ西野の姿がダブって見えたのである。
■日本の隠れた実力派スタジオSTUDIO4℃
そして2019年末のアニメーション化発表。そのとき、即座に思ったのは一体誰がアニメーション制作するのかということ。日本で「えんとつ町のプペル」レベルの絵をアニメーション化できるスタジオは数社しか思い浮かばない。スタジオジブリ、カラー(庵野秀明)、スタジオ地図(細田守)、コミックウェーブ(新海誠)ともう一社。そう、その一社こそが今回の制作を担当したSTUDIO4℃なのである。
正直、この名前を聞いてホッとした。あのアニメーション表現の頂点とも言える『海獣の子供』(2019年)をつくったスタジオであるからだ。
■煌めく才能が集結したSTUDIO4℃
STUDIO4℃にはその時々の煌めく才能が集結している。それは過去の作品を見れば一目瞭然。1995年『MEMORIES』の原作・統括監督は『AKIRA』(1988年)の大友克洋。全三話のオムニバス映画だが、脚本・設定に今敏、片渕須直、音楽に菅野よう子、石野卓球。作画も井上俊之、川崎博嗣、小原秀一といった超一流の才能が参加している。
2000年『アリーテ姫』は『この世界の片隅に』(2016年)の片渕須直監督のデビュー作である。音楽は千住明であった。2004年『マインド・ゲーム』では湯浅政明が監督デビューしている。2020年に「映像研には手を出すな!」、「日本沈没2020」で立て続けに話題作を提供している彼の才能をいち早く見抜いていた。
2006年『鉄コン筋クリート』は松本大洋初のアニメーション化作品。数多くの映画賞を受賞したが、驚くべきは二宮和也、蒼井優、伊勢谷友介、宮藤官九郎などを声優デビューさせていることだろう。
『えんとつ町のプペル』は日本のアニメーションを代表して、アカデミー賞にノミネートされる可能性も大いにあるだろう。もし今後も「ディズニーを超える」と常々述べている西野亮廣とSTUDIO4℃のコンビネーションがうまく機能すれば、王道を行くキッズ・ファミリーアニメーションとして、海外でジブリ以上の支持を受ける可能性も十分考えられる。製作委員会方式ではなく、あの吉本興業が単独で出資したのもその辺りの可能性を見据えてのことであろう。
文:増田弘道
『映画 えんとつ町のプペル』は2020年12月25日(金)より公開