てらさわホークが選ぶ旬の“悪役”は『ミスト』のババア! 不安に満ちた2020年の世界を蝕む“邪悪さ”とシンクロする狂信者

てらさわホークが選ぶ旬の“悪役”は『ミスト』のババア! 不安に満ちた2020年の世界を蝕む“邪悪さ”とシンクロする狂信者
『ミスト』©2007 The Weinstein Company,LLC.All rights reserved.

■ミセス・カーモディ、人呼んで「『ミスト』のババア」

今回は映画の悪役を誰かひとりピックアップして書くようにとのこと。さて誰にしたものかと思い悩む。つい最近こちらで紹介したスタローンの『コブラ』(1986年)の敵役、ナイト・スラッシャーについて書いてもいいかもしれない。『ターミネーター』(1984年)の冒頭で惨殺されたチンピラ役でも知られるブライアン・トンプソンが熱演した狂人、ナイト・スラッシャー。久しぶりに見ると汗だくのヨダレまみれで何だか実に頑張っており、たいへん好感が持てた。

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■人々の心の奥底に眠る卑しい悪意を煽り加速させ、それを弱い者たちに向けさせる『ミスト』のババア

ババアのロジックを信じた先にはどう考えても破滅しかないのだが、また人々がそういうおかしな理屈を頭から呑み込む。むしろそれを信じない者こそが異常なのだという圧力を、この勢力がグイグイかけてくる。たとえば新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、同じような行為に精を出す人間が引きも切らない今の状況を、ふと思い出す。すると、理屈に合わないことを言い立てて大衆を煽動する「『ミスト』のババア」ことミセス・カーモディの手に負えない邪悪さが、やけに実感を帯びてくる。

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『ミスト』©2007 The Weinstein Company,LLC.All rights reserved.

社会に不安が満ちたタイミングを鋭敏に捉え、人の心の奥底に眠る卑しい悪意を煽りに煽って加速させ、それを弱い者たちに向けさせるミセス・カーモディ。考えてみれば今の現実社会ではそういう邪悪が大手を振っているわけで、これを嫌というほど生き生きと描いてみせた『ミスト』は13年早かったなあと思うのである。

映画史に残る、死ぬほど後味の悪いエンディングで知られる『ミスト』。しかしその終局の手前で、大悪役たる「『ミスト』のババア」は見事な最期を迎える。映画がここで終わっていればぐうの音も出ないハッピーエンドなのだが、なかなかそうもいかないのが世の中の難しさではある。初見のときを除いては、この悪いオバハンが絶命するところで再生を止めて、超スッキリして眠りにつくようにしている。

文:てらさわホーク

『ミスト』はNetflixほか配信中

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