森口博子、「ガンダム」に救われた歌手人生 紆余曲折経てのいま「夢に締め切りはない」

森口博子、「ガンダム」に救われた歌手人生 紆余曲折経てのいま「夢に締め切りはない」

アルバム『GUNDAM SONG COVERS』がヒット中の森口博子(C)oricon ME inc.

森口博子のアルバム『GUNDAM SONG COVERS』が、8/19付オリコン週間アルバムランキングで自己最高位の3位に初登場し、28年2ヶ月ぶりにTOP10入りとなった。近年は、『ガンダム』テーマ以外にも自身がMCを務めるアニメソングをテーマとした音楽番組『Anison Days』(BS11)でもさまざまなアニソンを歌唱するなど、その実力が改めて注目されている。1985年にアニメ『機動戦士Zガンダム』主題歌でデビュー後、事務所スタッフのリストラ宣言や歌えない時期もあった。紆余曲折経て再注目される森口博子の歌手人生について語ってもらった。

◆カンダムカバーがヒットし、“夢に締め切りはない”と改めて感じた

──まずは『GUNDAM SONG COVERS』のヒットおめでとうございます。8/19付オリコ週間シングルランキング初登場3位にランクイン。そして28年と2ヶ月ぶりのベスト10入りし、「アルバムTOP10入りインターバル記録」では、女性アーティスト歴代1位を記録しました。CDの売れない時代のまさに快挙、歌手・森口博子の波が来ていますね。
森口博子 ありがとうございます。昭和にデビューして平成を超えて、まさか令和にこんな奇跡が起こるなんて! 本当に驚きました。私ひとりでは何にもできません。何十年と楽曲を大切にして下さっているファンの皆さん、ずっと信じて支えて下さっているスタッフの皆さん、たくさんの方の出逢いがあってこそです。歌い続けてきて心から良かったと。アニソンを通じて、たくさんの方々と繋がることができて幸せです。そして皆で積み上げた歴史のなかで、“夢に締め切りはない”と改めて感じました。心から感謝の気持ちでいっぱいです。

──ご自身がMCを務めるテレビ番組『Anison Days』(BS11)でも、共演の方々から祝福されて涙を溢れさせていたのが印象的でした。
森口 この34年間大変なこともあったけど、今、すべてが喜びに包まれていると思ったら…号泣しちゃいました。それと、アニソンを愛する皆と一緒に作っている番組なので、やっぱり思い入れはあります。この番組でいろんなアニソンを歌わせていただいてきたおかげで、今回のアルバムのレコーディングでも力になりました。
アニソンは難解な楽曲が多く、特に平成の楽曲は音の畳みかけやキーの展開など、歌いこなすのに苦労することが多いんですね。なかでもガンダムのテーマソングは、世界観が壮大で、1曲歌うだけでもエネルギーを使うので、自分の楽曲はまだしも、他のアーティストの方のガンダムテーマを歌うのは、なかなかハードルが高いなと思っていました。でも、いざレコーディングに臨んだところ、この番組に鍛えられてきたんだなということを改めて実感しました。

それと9月20日に番組のフェスが行われましたが、エネルギッシュな影山ヒロノブさん、ほぼ準レギュラーのオオイシマサヨシさんはじめ、豪華なアーティストの方々が出演。ゲストの方々とのこの番組ならではのコラボレーションも実現しました。

◆高校卒業を直前にリストラ宣言も…34年間の活動のなかでは歌えないことへのジレンマも

──来年デビュー35周年を控えてなお、ボーカリストとして成長されている。バラエティ番組でも活躍される森口さんの歌手としての存在感を改めて示したアルバムにもなりました。
森口 おかげ様でどのCDショップでも売り切れ続出で感激です!大きく取り上げて頂いたコーナーがすっからかんになったり、色々なショップの方々が「入荷しては即完売の繰り返し」などSNSでつぶやいて下さっているのをエゴサーチでたくさん目にしました(笑)。

昨年、NHK『発表!全ガンダム大投票』でガンダム40年の歴史のなか、361曲のなかから私のデビュー曲『機動戦士Ζガンダム』のテーマソング「水の星へ愛をこめて」が1位に!曲『機動戦士ガンダムF91』のテーマソング「ETERNAL WIND 〜ほほえみは光る風の中〜」が3位にランクインされたことがきっかけで、国民の皆さまが選んだベスト10を、カバー&セルフカバーさせていただききました。ファンの皆さんと色々な時代を乗り越えてきた絆が詰まっています!皆で一緒に作ったアルバムです。多くのファンの方々に今の歌声や新しいアレンジ、感動しましたと言っていただき嬉しかったです。

豪華ミュージシャンの方々との同時レコーディングはそれぞれ刺激的でした。ドラマティックな寺井尚子さんのヴァイオリン、アグレッシブでカッコイイ押尾コータローさんのギター、情熱的な田ノ岡三郎さんのアコーディオン、透明感あふれる塩谷哲さんのピアノ、オシャレで温かい猪野秀史さんのフェンダーローズ、ハーモニクスが美しいTSUKEMENのヴィオラ、ヴァイオリン、ピアノ。ガンダムファンの皆さんは勿論、作品を知らない方々も良かったと言って下さって感激しました。

私は歌の仕事があってもなくても、日常生活は歌うことにすべての焦点を置いています。朝起きたらまず喉の調子が気になるし、そこからお白湯を1杯いただいて「よし、今日も歌えるぞ」と確認して1日が始まるんですね。外出しても無意識にエアコンの風が当たりすぎない席を選んでしまいますし、職業病なんでしょうね。こういう習慣だけは一生変わらないだろうなと思います。

──「歌の仕事があってもなくても」とおっしゃったように、この34年間の活動のなかでは歌えないことへのジレンマもあったのではないでしょうか?
森口 歌手になりたくてレッスンを受けながらチャンスを待って、17歳のときについに「水の星へ愛をこめて」(アニメ『機動戦士Zガンダム』主題歌)でデビューさせていただきました。その楽曲はガンダムの力で結果を残させていただきましたが、その後、事務所のスタッフから「この子は才能がないから九州に帰したほうがいい」とリストラ宣言をされてしまいました。それも高校卒業を直前にして──。

◆仕事・恋愛・人間関係がうまくいかず四面楚歌な情況も…『ガンダム』に助けられた歌手人生

──今や「水の星へ愛をこめて」は数あるガンダムソングでも人気です。しかし、週間シングルランキングで16位が最高位でした。
森口 今のようにアニソンがフィーチャーされる以前の時代でしたから。それでも歌うことを諦められなくて、泣きながら「どんな仕事でもやります、地元に返さないでください」とお願いしたら、バラエティの仕事をいただけるようになりました。これは絶対に歌に繋がるんだと信じて、与えられた仕事を全力でやっていくうちに、23歳で「ETERNAL WIND〜ほほえみは光る風の中〜」(劇場版アニメ『機動戦士ガンダムF91』主題歌)を歌わせていただくことになりました。その曲で初めてオリコンTOP10に入りました(最高9位)。それで『紅白歌合戦』に出場させていただいたら、「えっ、森口博子って歌手だったの!?」「歌声聴いて感動しました」という今のような現象が起きました。

──まさに昭和から平成の日本の音楽史ですね。「水の星へ愛を込めて」はいわゆるドーナツ盤のレコードでした。そして「ETERNAL WIND 〜ほほえみは光る風の中〜」は8センチのCDでした。
森口 とてもCDが売れた時代でした。ところが30代になり、音楽業界的にもCDが売れない時代に突入。特に厄年の頃は歌手としても20代のように勢いでは勝負できない。かといってキャリアのある先輩のような説得力もない。そんな迷いがあるなかで、さらに体調も恋愛も人間関係も何もかもうまくいかなくなり、四面楚歌な状態に陥っていました。

──どのように乗り越えたんですか?
森口 母の「辛いときこそ笑っていなさい」という言葉でした。たとえ作り笑顔でも、ふてくされているよりは笑っているほうがいい“運気も上がる”と。そう言われたときは半信半疑だったんですけど、多少無理してでも笑っていたら、本当にいいことばかり見えてくるようになったんですよ。食べ物でも農家の方がいて漁師さんがいて、たくさんの方の手を通じてようやく食べられるんだと思うとなんでも美味しく感じられて心から感謝の気持ちが芽生えました。すると自然と体調も回復していきますよね。

そうこうしているうちに39歳、またまたガンダムに助けられました。「もうひとつの未来〜starry spirits〜」(ゲーム『SDガンダム GGENERATION SPIRITS』主題歌)をいただいたのをきっかけに、歌の仕事がどんどん舞い込んでくるようになったんです。40代でも「宇宙の彼方で」(劇場版『ガンダムTHE ORIGIN IV 運命の前夜』主題歌)、「鳥籠の少年」(SANKYO『CRフィーバー機動戦士Ζガンダム』搭載曲)と続き、さまざまな音楽サイトで1位をいただいて、流れが大きく変わりました。

◆エゴサーチすることで、自分を信じて歌っていこうと、逆にやる気になります

──いつも明るく元気なイメージの森口さんですが、多少無理してでも笑うのって効果があるんですね。
森口 本当に辛い時は、無理して笑う必要はないと思います。そんな日々のなかで、少しでも無理ができる日に笑ってみると、後から心が付いてくる。そのことを本当に経験しました。落ち込み続けるのも体力が奪われますし、そんな時はただでさえ体調が悪いのにね(苦笑)。そう気付いてからは、すごく前向きになりました。今ではエゴサーチで悪口を発見しても、落ち込まないです。

──お話を聞いていると、結構エゴサーチしていますね。
森口 面白くて、けっこうしちゃうんです(笑)。ちなみにまだネットがない時代の話ですが、雑誌『an・an』の「恋人にしたい女性タレント」にランクインしたことがあったんです。理由は「明るくて楽しいから」と。でもページをめくったら、「恋人にしたくない女性タレント」にもランクインしていて(笑)。理由は「騒がしいから」。捉え方の違いだけで、言ってることは同じですよね。つい最近もエゴサーチをしたら、私の声を「キレイすぎて面白みがない」という意見がありました。その一方で「声がキレイで好き」という人もいました。興味がない人もいる、だけど好きだと言ってくれる人がいるんだから、ブレることはない。自分を信じて歌っていこうと、この先も逆にやる気になります!

◆ここまで来たら80代でもガンダムのテーマソングを歌う

──ネットの意見に振り回されがちな今の時代に、とても貴重なメッセージです。最後に今後の活動についてお聞かせください。
森口 デビューから10・20・30・40代といろいろなシリーズごとにテーマソングを歌わせていただきました。ガンダムに支えられているそんななかで、昨年50代を目前に「鳥籠の少年」(SANKYO『CRフィーバー機動戦士Zガンダム』搭載曲)を歌わせていただきました。そしてこのたび再び、SANKYO『フィーバー機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』搭載曲、「追憶シンフォニア/果てないあの宇宙へ」で鮎川麻弥さんとのコラボが決定致しました。1985年『機動戦士Ζガンダム』前期のテーマソングを麻弥さんが、後期のテーマソング(デビュー曲)を私が担当させていただいた仲なので、この度のタッグは感慨深いですし、息もピッタリ!! 念願叶い50代でもガンダムのテーマソングを歌わせていただくこと、心から嬉しく思います。

さらに『機動戦士ガンダムSEED』の挿入歌「暁の車」のカバーがAmazon Musicで独占配信中です。この勢いで冬のライブ&ディナーショーなど色々な音楽活動、駆け抜けます! ここまで来たら60代、70代、80代でもガンダムのテーマソングを歌うんだと勝手に思い描いています(笑)。でも、あながち夢じゃないと思っています。“言霊パワーで!”ガンダムは永遠ですから。そのためにも私もいつまでも歌い続けられる身体でいようと、この夢は歌手としてのモチベーションにもなっています。

(文/児玉澄子)

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