佐藤浩市が初アルバム、器用な若手に“冒険”のススメ「何でもっと下手にやんねぇんだろうって」

佐藤浩市が初アルバム、器用な若手に“冒険”のススメ「何でもっと下手にやんねぇんだろうって」

宇崎竜童や木梨憲武ら、豪華メンバーが集結した無観客ライブ。「この時代に恵まれていると思えた日だった。プロのそれとは違う、気持ちのいい雰囲気が伝われば」=奥西義和撮影

 俳優として確固たる地位を築いた佐藤浩市が、歌手として初めてアルバム「役者唄 60 ALIVE」(ユニバーサル)を出した。「まさかやるとは思っていなかったですよ」と笑うが、渋く、哀愁たっぷりの歌声を聴かせる。(文化部 池内亜希)

■音楽の世界に呼び戻してくれた原田芳雄に焦点

 2年ほど前にも、新曲を中心にした作品を出す話があった。ちょうどコロナ禍の影響が大きくなっていった頃で、「本業もどうなるか分からない状況。モチベーション(意欲)が持てなくて」。レコード会社が改めて提案してきたのが、俳優・歌手の先輩、原田芳雄に焦点をあてる企画。「これで、リスタートが切れた」

 実は25歳頃、シングルレコードを出したことがある。当時、若い役者は当たり前のように歌手活動もした。「生まれて初めて歌ったようなもの。後悔しまくって、もう二度と歌うもんかって」。しばし音楽に距離を置いていた佐藤を、再びその世界に招き入れたのが縁の深い原田だった。「ライブ来いや」の一言で聴きに行くように。原田の死後行われた2012年の追悼ライブでは、客前で歌声を初披露した。それからしばしばライブに参加する。「出番を待つ間、吐きそうで。でもステージに立たなきゃって思いがわいたんだよね。終わってみると、疾走感みたいなものがあった」

■「僕ら、ワンシーンでもその映画を壊すつもりでいた」

 今作は主に、スタジオ録音ではなく、ジャズクラブ「ブルーノート東京」で行った無観客ライブの模様を録音した。収録曲は原田ゆかりのブルースなどが並ぶ。「ONLY MY SONG」は、歌い出しからずっしりとした武骨な声。どこか乾いた、カラッとした感じも受ける。ゲストに寺尾聰や江口洋介らを迎えた「横浜ホンキー・トンク・ブルース」は、不器用に語るようなボーカルが印象深い。意識したのは、セリフのように歌詞を響かせること。時に投げ捨てるように、時に小さい声で話すように……。「役者が歌えば、歌手が歌うのとは違うものが出来るんじゃないか。『役者の唄』が出たらいいなと」

 初めて作詞にも挑戦するなど、冒険を恐れない姿勢は、後進への刺激となるだろう。「今の若い役者は皆、歌が上手(うま)い。芝居も上手い。普通に上手い。逆に言うと、何でもっと下手にやんねぇんだろうって。僕ら、ワンシーンでも、その映画を壊すつもりでいた。それが楽しかった」

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