『ボヘミアン〜』&『グレイテスト〜』宣伝プロデューサーに聞く 音楽映画の大ヒットが続く背景

『ボヘミアン〜』&『グレイテスト〜』宣伝プロデューサーに聞く 音楽映画の大ヒットが続く背景

興収109億円を突破している『ボヘミアン・ラプソディ』(C)2018 Twentieth Century Fox

興収100億円を突破し、2018年のNo.1ヒットとなった『ボヘミアン・ラプソディ』、52億円を超えるスマッシュヒットとなったミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』。両作の宣伝プロデューサー、20世紀フォックス映画の柳島尚美氏と田中祐士氏が語るそれぞれのヒットの背景から、近年の音楽系洋画ブームに迫る。

■近年のミュージカル映画人気を若年層まで広げた『ラ・ラ・ランド』

 2018年の洋画シーンで大ヒットを遂げた『ボヘミアン〜』と『グレイテスト〜』。前者はクイーンというバンドの伝記に近い音楽映画、後者はミュージカル映画とジャンルは違うが“すばらしい音楽”という共通点がある。

 ミュージカル映画というとやや敷居が高く、それだけで敬遠してしまう人もいると思われるが、「実は日本でもヒット作は多く、受け入れられやすい土壌があります」と田中氏は語る。確かに、遡れば『シカゴ』(02年/35億円)、『オペラ座の怪人』(04年/42億円)、『レ・ミゼラブル』(12年/58.9億円)、『美女と野獣』(17年/興収124億円)など多くのミュージカル映画が成功している。

 そんななか、ミュージカル映画が若い世代に広くリーチしたのが昨年大きな話題になった『ラ・ラ・ランド』(16年/44.2億円)だ。映画宣伝の際、メインに想定するターゲットはもちろんあるが、戦略ターゲットとして若い世代への拡散を図ることは、作品をもう一段階大きくヒットさせるために必須になる。

 そこへの効果的なプロモーションとして武器となるのが“良い音楽”だという。『グレイテスト〜』のケースを、田中氏は「「This Is Me」というすばらしい主題歌がありました。この曲は“自分らしくいることが一番輝けるんだ。そのままの自分でいよう”というメッセージが込められています。若い世代にも刺さると思い、バブリーダンスで注目を集めていた登美丘高校ダンス部さんとコラボした動画を作ると大きな反響を呼び、映画が若い層に一気に広がっていくきっかけになりました」と語る。

■音楽と映像がリンクし映画館へ向かうリピーターを増やす

“良い音楽”に魅了されて映画に興味を持った人は、必然的に大きなスクリーン、良い音響の映画館で鑑賞したいという欲求が強くなる。さらにそういった観客は、作品に魅了されると、サウンドトラック購入や、配信サービスで曲を探す傾向がある。ここにも音楽映画のヒットの要因が隠されている。

 田中氏は「自宅に帰ってサントラを聴くと、曲のシーンがまた脳裏に浮かぶんです。そうするとその興奮や感動がよみがえり、また映画を観たくなる。リピート性が強くなる傾向があります」と分析する。確かに大ヒットした音楽映画はリピーターが多いという特徴がある。

 こうしたことが『ボヘミアン〜』にも当てはまる。柳島氏は「この映画は、いわゆるミュージカル映画ではありません。でも、あるバンドのドキュメンタリー色が強い伝記映画という捉え方をしてほしくなかった」とプロモーションプランを明かす。ミュージカル映画同様、入り口は楽曲。一度は聴いたことがある曲をフックに“音楽”をメインに展開していった。

 公開前は、メインターゲットである40〜50代のクイーン世代へのリーチには手応えはあったが、戦略ターゲットである若者へのプロモーションはチャレンジングだったという。しかし、公開を迎えると、多くの熱いファンが、その思いをSNSなどで爆発させた。さらに、多くのアーティストや著名人らが作品を絶賛。一気に若い世代にも『ボヘミアン〜』熱が広がっていった。

■“音楽映画”が洋画シーンを語る重要なキーワード

 とくにリアルタイム世代ではない若年層は、観賞後にクイーンというバンドや、フレディ・マーキュリーという人物をもっと知りたいという欲求が高くなる。動画のアクセス数や楽曲のダウンロード数も、映画公開前と後では、まったく違う。そして、より深く知識を得た人たちが「映画を観直してみよう」とリピートする。劇場での調査によると、10〜20回もリピートしたファンもいるそうだ。

 長年、洋画宣伝に携わっている柳島氏も、ここまでの広がりは「想定外」と正直な胸の内を明かす。「映画の持つ力を最大限に伸ばすために、どこが魅力なのかを徹底的に吟味し、伝える努力をしていますが、今回はそこに音楽の力が加わったことで、想定以上の大きなムーブメントになり、世代を超える爆発的なヒットになりました」と振り返る。

 田中氏は「いまやミュージカル映画や音楽映画は、ひとつの人気ジャンルとして、日本の映画シーンに定着していると思います」と語る。洋画シーンを見ると、ディズニー作品やビッグタイトルのフランチャイズといったブランドではない、オリジナルのミュージカル映画も多くヒットしていることが、それを証明している。

 さらに実写ばかりではなく、『アナと雪の女王』(14年/255億円)や『SING/シング』(16年/51.1億円)、『リメンバー・ミー』(17年/50億円)など、アニメーション映画でも音楽を主軸にした作品の大ヒットは枚挙にいとまがない。今後も、洋画シーンを語るうえで音楽映画は重要なキーワードになっていくことは間違いないだろう。
(文/磯部正和)

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