瀧内公美インタビュー 廣木隆一監督に抜てきされ体当たり演技「脱ぐことに抵抗はなかった」

瀧内公美インタビュー 廣木隆一監督に抜てきされ体当たり演技「脱ぐことに抵抗はなかった」

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『さよなら歌舞伎町』『ヴァイブレータ』などを手がける廣木隆一監督が、自身の処女小説を映画化した『彼女の人生は間違いじゃない』は、仮設住宅に住みながら、週末は上京しデリヘル嬢として働くみゆきと、彼女を取り巻く未来の見えない日々を送る者たちが、光を探し続ける姿を描いた物語。

本作で、主人公・みゆきを演じているのが女優の瀧内公美。役柄同様に答えを探し、もがきながらも過酷な撮影を乗り越えた彼女に被災地で身を以て感じたことや、共演者とのエピソード、そして廣木組の現場について振り返ってもらった。

■脱ぐことに「抵抗はなかった」

ーー瀧内さんは、福島の仮設住宅で暮らしながら、週末は上京し、デリヘル嬢として働く主人公・みゆきという難しい役柄を演じられています。オーディションで決まったとのことですが、オーディションを受けようと思ったきっかけから教えてください。

瀧内:これから先も、ずっと世に残っていく作品だと思ったからです。私はいつもどこかで、残っていく作品に関わりたいという気持ちがあって。それに、震災が起こって6年。世の中がぐるぐる回ってきて…今こそ、これを作品として残すことが、とても意味のあるものだなって感じたんですよね。


ーーもともと廣木監督の処女作でもある原作小説は読んでいたのですか?

瀧内:映画化するかもしれないというお話を聞いて、読ませていただきました。『彼女の人生は間違いじゃない』というタイトルにもすごくインパクトがあって、面白そうだなと。


ーー読んでみて、いかがでしたか?

瀧内:読んでみて、やっぱり出たいと思いました。知り合いの方が助監督をされるとのことだったので、「オーディションはないんですか?」と聞いたら、「オーディションはあるけど、脱ぎのシーンとかもあるよ?」って。


ーー脱ぐと聞いても迷いはなかった?

瀧内:はい。でもそれは、みゆきの心の整理のために必要なことだと思ったから。心の何かを表現したくて脱ぐシーンがあるわけで。作品を読んでいても、デリヘルという仕事じゃないと意味がないと感じていたので、脱ぐことに抵抗はなかったです。どういう風に受け取られるかも、観る人によって印象は変わると思うんですけど、そこにはちゃんとした理由があるし、私がしっかりと表現できたら、伝わるんじゃないかなって。


ーー撮影に入る前に、現地の方へ取材もされたとのことですが、自ら足を運んで?

瀧内:そうですね。撮影前から福島に入って、被災地の方にお話を伺いました。


ーー実際に会って、お話を聞いてみてどんなことを感じましたか?

瀧内:お会いする前に、図書館にある福島の民報新聞で下調べをしていったんです。でも、実際に自分の目で見ると全然違いました。復興に向かっているという明るい兆しと、現実とのギャップがすごかった。みなさん明るい方で、悪いほうのギャップばかりでもないのですが、やはり戦っているなと。自分たちではどうすることも出来ない大きな問題がたくさんあることを知りました。


ーー例えばどんな問題が?

瀧内:撮影で使わせていただいた仮設住宅が、3月31日でなくなっちゃったんです。住んでいた人たちは、4月から自分たちの家に戻ったり、どこか生きる場所を探さなきゃいけない。自分たちで決めて行動しているわけではなく、流れとしてそうするしかない状況なんです。でも、東京まではそういった情報が行き届いてないというか、知っている人が少ない。世の中には有り余るほどの情報が流れているけど、いまはみんな、知りたいと思ったことしか見ないのが当たり前になっているから…。


ーー時間が経つにつれて、問題への関心が薄れてしまっていることは確かかもしれません。

瀧内:そんな中で、実際に現地の人たちとお会いできたのは、本当に大きかったです。紹介していただいたおばあちゃんの家に行って、仮設住宅の中を見せてもらったり、どういう暮らしをしているのかを教えてもらったりもして。みゆきがそこに存在するように見えるためには、どう演じたらいいのか、より深く考えることができました。


ーー取材をしたことで、撮影に入ってからは、みゆきというキャラクターをスムーズに掴めたのでしょうか?

瀧内:…いまも正直、掴めていたのか分からないというのが本音です。でも、私がみゆきとして居られるように、廣木組のみなさんがサポートしてくれたんです。私がかけ離れそうになったときには、ちゃんと表現が出てくるまで待ってくれるし、相手役の方も協力してくれる。廣木組の常連の方ばかりだったので、みなさんの手厚いサポートのおかげで、なんとかみゆきとして乗り越えられた…という感じです。


ーー特に助けられたシーンなどはありましたか?

瀧内:毎日ですよ(笑)!父親役の光石さん(光石研)とは、何回も何回も、気持ちを確かめていく作業をしましたし、監督もその間ずっと待っててくださった。デリヘルの送り迎えをしてくれる三浦役を演じられた高良さん(高良健吾)とご一緒した東京編は、後半の方に撮影したので、私も口から「辛い」という言葉が溢れていて。三浦という役としてなのか、高良さんとしてなのか分からないんですけど、ずーっと黙って聞いてくださっていたんです。本当に傍で聞いてくださるだけで有り難かったです。


ーー本当に過酷な現場だったのですね…。完成披露試写会のときも撮影中に「帰りたくなった」とお話されていましたよね。

瀧内:帰りたくなるというか、どう考えても実生活のほうが全然楽だよなって(笑)。現場も、作品へ対する愛があって、ちゃんと伝えるものにするために厳しい目を持っていたので、その重圧に耐えられなくて、折れそうになることもありました。でも、終わるまで逃げちゃいけない!って言い聞かせて。


ーーそこまで追い詰められて居ると、撮影が終わったときには、何かから解放されたような気分になりそうです。

瀧内:撮影が終わってからは、痩せて体力もなくなっていたので、とにかくずっと寝ていましたね。もぬけの殻でした(笑)。


■「瀧内が愛してあげなきゃ」心に刺さった監督の言葉

ーー映画を拝見させていただいたのですが、バスの中での瀧内さんの表情が印象的でした。

瀧内:バスの中では、流れる空気みたいなものをどう表現するかを考えました。福島と東京では、必ず何かが起きている。でも、バスの中だけは何も起こらないんです。感情を確かめているのか、生きていく場所に戻るのか、生きる場所を探すのか…。わくわく、楽しみという気持ちはないですけど、何かが見つかるかも知れないって、微かな希望みたいなものを持ちながら、バスの中に居ましたね。


ーーバスの中はみゆきにとって、唯一落ち着ける場所だったのかもしれませんね。

瀧内:自分だけの空間ですよね。どういう自分でいても良いし、何も考えずにいられる場所でもあるので。どこか安心できる場所だったのかもしれません。


ーーどのシーンの撮影も大変だったかとは思うのですが、瀧内さんが一番苦労したシーンを教えてください。

瀧内:元彼・山本(篠原篤)とのホテルのシーンは、とても難しかったです。みゆきが初めて言葉を溢れさせる瞬間でもあるんですけど、自分とのギャップが激しくて。


ーーギャップが激しいというのは?

瀧内:ポロポロ泣くんですけど、泣くなよ!って思っちゃいました(笑)。自分で決めたことなんでしょ?って。


ーーなるほど。そこには、あまり共感できなかったのですね。

瀧内:溜まって溜まって、蓄積したものがあって、そういうみゆきの気持ちを考えると、涙が出てくるのは分かるんですけど、自分で1回みゆきの気持ちをシャットダウンしてしまったんです。そしたら、監督に「みゆきちゃんかわいそうだよ。瀧内が愛してあげなきゃ、かわいそうじゃない?」って言われて。私、みゆきのことちゃんと愛してあげてなかったなって。彼女が救われて欲しいという思いが、私には全然足りなかったんだなって感じて…そのときが一番辛かったんじゃないかなぁ。


ーー監督からのその言葉は、心に刺さるものがありますね。

瀧内:刺さりましたね。もうその頃は、本当に喉に思いがたくさん詰まっていて、何を食べていても味がしなかった(笑)。いろいろな思いが重なって、いっぱいいっぱいだったんですよね。被災地で起きていることを目の当たりにして、いかに自分が楽に生きていたかというのを思い知らされていったこともあって。


■目の前で刺激を受けたのは、やっぱり高良さん

ーー共演者のみなさんには毎日のように助けられたとのことだったのですが、お芝居の面で刺激を受けたことはありましたか?

瀧内:お父さんの海のシーンは、本当に伝わってくるものがあるなぁと感じました。あのシーンに共感できる人って、たくさんいると思うんです。だから、あそこでお父さんが光を見る瞬間というのは、救われるというか。そう思わせてくれる光石さんの演技にも、感動しましたね。


ーー海のシーンは、辛いことが多い物語の中でどこか救われるシーンですよね。高良さんともご一緒されるシーンが多かったと思うのですが、高良さんはいかがでしょう?

瀧内:目の前でお芝居をしていて特に刺激を受けたのは、やっぱり高良さん。三浦という人物の空気感をちゃんと作って、持ってきて、そこに存在するということを成立させてしまうんです。そこに存在して、目の前の人に言葉を伝える、ということが、自然にできる方だと思いました。あとは、お父さんと一緒にいる毎熊克哉さんも、そこに存在する、ということが自然とできる方だなって。それに、試写を観たあとに言ってくださった感想が、自分が引っかかっていたところと一緒で…。


ーー引っかかっていた部分とは?

瀧内:「私できます!」と事務所で脱ぐシーン。あれがどうしてもできなかったんです、私。辛すぎて、どうしても脱げなかった。でも、毎熊さんは、そこで私が躊躇っている姿がすごい印象的だったって言ってくださって。繊細なところをしっかりと見ていただけたんだなと思うと、1人の女性として嬉しかったです。


ーーたくさんのメッセージ性が詰まった本作。観た人に、どんなことを感じてもらいたいと思いますか?

瀧内:いま、伝わるものだけじゃなくて、何年後に観ても、何かを感じていただける映画だと思います。こういう状況が5年も6年も続いていて、復興していますよと言われていることが本当に正しいのか。そして、そういう状況の中で微かな光を信じて生きている子が、こういう職業をすることが本当に否定的な側面しかないのか。いろんな意見があるとは思うけど、観てもらえば何かが伝わると思うので、迷いのある方にはぜひ観て欲しいと思います。


映画『彼女の人生は間違いじゃない』は、7月15日(土)より東京・ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

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