ちょっと仲よすぎ!? 綾野剛と星野源の“蜜月関係”が尊い『コウノドリ』に波乱はあるか

ちょっと仲よすぎ!? 綾野剛と星野源の“蜜月関係”が尊い『コウノドリ』に波乱はあるか

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 周産期母子医療センター(出産の前後を通し、産科と新生児科で連携した医療体制のとれる病院)を舞台に、医師や妊婦の喜びと悲しみ、生命の誕生の素晴らしさや難しさを描く医療ヒューマンドラマ『コウノドリ』(TBS系)。いつも以上にさまざまな人間模様が入り混じった第9話は視聴率12.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、今回も見事に安定。振り返ります。

■3度目の流産

 今回の妊婦は、過去2回の流産を経験している篠原沙月(野原麻帆)。3回目の妊娠をしたものの、今回も検査で子どもの心拍を確認できず、担当の産科医・鴻鳥(綾野剛)から流産を告げられる。

 過去の経験を引きずっている沙月は、どこかで覚悟もしていたのだろう「……はい」と、力なく、それでいて自分を納得させるようにうなずく。うれしいはずの妊娠がわかるたび、流産に怯えながら過ごす毎日は想像できないほど不安だろう。

「3回も流産するのって、私のせいですか?」と自らを責めるように言う沙月に、鴻鳥は、初期の流産はほとんどが母親が原因でないこと、さまざまな偶然が重なり起きたのだという見解を伝える。

 助産師の小松(吉田羊)も、自分のせいにしてしまう母親が多いが、そんなことはないと声をかけるが、3回目の流産ということもあって、沙月は不育症の検査を希望する。

 不育症とは、妊娠はするが流産や死産を繰り返し、結果的に子どもに巡り会えない状態。しかし、検査を受けても原因がわからないことが多いので、余計にストレスを抱えてしまう患者が多いという。

 カンファレンスにて、意見交換を行う医師たち。

 産科医・四宮(星野源)は、流産が珍しいものではないと知ってもらうのが重要だと訴える。実際、妊娠女性の15%は流産になってしまうらしく、さらに沙月の年齢の35才だと、それは25%にもなるという。

 確かに、こういう前知識があることで沙月のような女性が過剰に自分を追い込み、精神的に苦しんでしまうことの予防にはなるのかもしれない。

 しかし小松(吉田羊)は「確率の話をしたところで、お母さんの悲しみは埋まらないよ」と反論する。

 人一倍患者に寄り添う小松は、数字やデータとはまた違う、人と人との関わりにおいての意見が多い。翌日の手術前に「またさよならしなきゃいけないんですね……」とお腹をさする沙月を見て、手術中にそっと沙月の手を握る小松。

 後日、不妊治療外来の岸田医師(高橋洋)に、「ストレスをためないことが一番の薬」だと言われたのも辛そうだ。

 もちろん岸田の言っていることは正論なのだろうが、沙月が「別にためたくてためてるわけじゃないんですけどね」と小松に漏らしたように、一歩間違うと「ストレスをためた」沙月を責めているようにも受け取れてしまうのかもしれない。

 沙月は3年前に初の妊娠が発覚した時の母子手帳も捨てられずにいる。当時、眩しかったその「思い出」が、今は重く沙月にのしかかる。しかし、うれしかったその手帳を捨てることができず、忘れられないと。

 小松は、その沙月の気持ちを肯定する。

「無理に忘れる必要ないよ、だって今まで宿った子、みんな篠原さんの子なんだから」

 沙月に響いたようだが、闇の中を一人歩くような沙月を完全に照らすことはできないようだ。

■夫も悩んでいる

 精神的にかなりかなり参っている沙月をなんとか励まそうと、夫の修一(高橋光臣)は「俺はさ、子どもがいない2人だけの人生もいいと思ってる。2人なら好きなことできるし……」と語りだすも、すぐさま「全然うれしくないよ、慰めになってない」と沙月に遮られ、どう接していいのかすらわからなくなってしまう。

 修一は悩んで鴻鳥を訪ねる。

「苦しんでる妻に何もしてやれないんです」

 そして「自分の役目は今までのことを忘れさせてあげることなんでしょうけど」と語る修一に「忘れなくていい、忘れる必要はないと思います」と語る鴻鳥。

「僕は、出産は奇跡だと思っています。こんなに医学が進歩したのに、いま篠原さんご夫婦が悩んでる問題は、未だに原因がはっきりしていません。医者の僕たちでさえ、できることが少ない……。でも修一さんが『奥さんに寄り添って笑顔にしてあげたい』『近くでなんとかしてあげたい』って必死に頑張ってる姿は、奥さんにとって一番の治療になるんだと思います。そしてその思いは、きっと明日につながります」

 鴻鳥の言葉に後押しされたのか、沙月の好きなBABYの曲をピアノで練習しだす修一。それを見た沙月は、どんな医師のアドバイスや検査よりも励まされたようで、自分の味方がすぐ近くにいたことを再確認し、心が軽くなって涙を流す。

 後日、不育症の検査結果は異常なし。つまり原因はわからない。戸惑う篠原夫妻に、鴻鳥は言う。

「不育症の原因がわかって治療した女性が出産できる確率は85%です。原因がわからなくて治療した女性が出産できる確率は85%です」

「つまり、篠原さんは次の赤ちゃんを妊娠して出産に臨めるということがわかったんです。……でも不安ですよね、怖いですよね……」

 これを聞いた沙月は泣きながら気持ちを吐き出す。

「妊娠してないってことがわかると、少しホッとする自分がいて、一瞬でもお腹の中に赤ちゃんが宿ることが怖くて、こんなんじゃ母親になる資格ないですよね」

 子ども好きな夫に、子どもを産んであげられないのが一番つらいと謝る。修一も何もしてやれないことを詫びる。どちらも、もちろん悪くないのだが、お互いフタをしていた気持ちをさらけ出せたようだ。

「次はきっと大丈夫! 本当につらい経験をしたふたりだからこそ大丈夫。だって篠原さんには、こんな近くに世界一の味方がいるじゃないですか?」

 安易な励ましにも聞こえるが、しかし、底なしの不安に溺れる沙月のような症状の女性にとって、どんな専門家より、味方がそばにいることの心強さは勝るものなのだろう。

 ナレーションで鴻鳥が言う。

「人は必ず、誰かがそばにいて、誰かのそばにいる」

 結局、沙月はめでたく再度妊娠をし、子どもの心拍も確認、ここからまだわからないながらも、明るい未来につなげる結末を見せてくれた。

■下屋の成長

 産科、新生児科と研修をしてきた新人研修医・赤西(宮沢氷魚)は今週から救命科で研修を受けるようで、下屋(松岡茉優)と再度仕事をすることに。

 産科医師としてステップアップするために救命科に飛び込んだ下屋だが(第5話)、今でも加瀬(平山祐介)にどやしつけられている毎日。ついこの前まで産科医として指導してきた後輩・赤西の前でどやされ、使いものになっていない姿をさらすのはどれだけきついだろうか。

 そんなある日、妊娠高血圧症候群で倒れた妊婦が搬送されてくる。妊婦ということで、やや勝手の違いに戸惑う加瀬や救命部長の仙道(古舘寛治)を前に、下屋は緊急帝王切開を提案する。

「確かに血圧を下げることが母体には必要ですが、そうすると胎盤の血流も減少して赤ちゃんが低酸素になるリスクがあります」

 この時の下屋の気迫に押される加瀬や仙道。鴻鳥も四宮も来られない状況の中、元・産科、現・救命の落ちこぼれチームが緊急カイザーに挑む。この時の赤西が下屋を見る目が「尊敬」と「好意」が入り混じって、実によかった。

「加瀬先生、私はまだ救命医として使いものにならないこと、よくわかってます。でも赤ちゃんのことは任せてください! だから母体のことはよろしくお願いします」

 下屋の思いを「わかってるよ」と笑いながら受け止める加瀬。

 白川も小松も、いつもきつく当たってくる救命部長も見守る中、下屋の手術を行う。さながら「下屋の逆襲」だ。

 無事手術の終わった後、心配して駆けつけた鴻鳥に仙道が笑顔で言う。

「下屋先生がいてくれて、今回は助かった。言っとくけど『今回は』だからね」

仙道「彼女は救命医になれるかな?」

鴻鳥「どうですかね、ただ下屋は打たれ強くて図々しいです。それと、よく食べます(笑)」

 実際、「手術後なのによく食えますね?」と赤西に呆れられながら弁当を幸せそうに食べるシーンが、今回あった。

「ははは、じゃ、ここで使える駒になるかもな」と笑って立ち去る仙道に、きっちり頭を下げる鴻鳥。元・上司として、これほどうれしいことはないだろう。

 しかし、さんざん産科にきついことを言った仙道だが、急に優しくされると必要以上にキュンとしてしまう。DVの男がたまに優しさを見せる手口に通じるものがある。

■能登、ふたたび

 ステージ4の肺がんである四宮の父・晃志郎(塩見三省)が再度倒れたため、再び故郷の能登へ飛んだ四宮。ベッドで苦しそうにしている自分を心配する四宮(息子)に対し「俺は大丈夫だ。お前こそ自分の患者を放り投げて来たんだろ? すぐに帰れ」と強がる晃志郎。

 しかも、担当している妊婦の手術をすると言いだす始末。今の状態でできるわけがないと妹の夏実(相楽樹)が止めるが「できる! できるに決まってる!」と頑なに譲らない。

 しかも、そのタイミングで妊婦に早期胎盤剥離の疑いが発覚、緊急帝王切開手術の必要性が。あくまで自ら手術をしようとする父親の本気の姿を見て、四宮は決断する。

「わかった、俺がやる」「医院長に許可とってくれ」

 病をおしてまで現場に立とうとし、その町の出産を守ろうとする、父であり先輩医師である晃志郎の姿が、かつて患者を亡くして(前シーズン・9話)以来、塞ぎ込みがちだった四宮の心を溶かしていくようだ。

 だが、妊婦の夫は、急に現れた「東京の医師(四宮)」を受け入れられない。そこへ、夏実に支えられて現れた晃志郎が言う。

「うちの息子、信じてやってください。東京で立派に産婦人科の医者やってます、だから大丈夫です」

 表情は特に変わりはしなかったし、何も言わなかったが、四宮は、とてもうれしかったはずだ。

「春樹、頼むな」

『インディ・ジョーンズ?最後の聖戦』(1989)でショーン・コネリー演じる父親が、宝に目が眩んだ息子の目をさますために、ずっと「ジュニア」と呼んでいたのに「インディアナ」と呼ぶシーンを思い出した。

 四宮が勤めるペルソナに比べ、はるかに設備の足りない病院で行う手術。助手も専門の医師ではなく、慣れない整形外科医の年配の医師が担当。しかし四宮は、いつになく熱く燃えていたように見える。

 無事手術が終わったあと、晃志郎の病室で四宮が素直に言う。

四宮「父さん、よくここで医者続けてきたな」

晃志郎「ここが、好きだからな」

 この時、四宮は、自分が現場を離れ、大学で研究に専念すべきかどうかというということに答えを出したのではないか。

 帰ろうとする四宮に「春樹、まだまだ、お前には負けんぞ」。

 父の一言一句が四宮に響く。

「何言ってんだよ」、そう言い返すのが精一杯の四宮。

「ありがとな」と震える手を差し出し、握手をする親子。こんな時間が持てる親子は幸せだろう。

■白川へ送る言葉

 短いシーンだが、小児循環器科での研修のため、研修先が決まり次第出ていくことが決まっている白川(坂口健太郎)に、上司の今橋(大森南朋)が語った言葉が良かった。

 わがままを謝る白川に、「正直、羨ましいと思ってる。僕はずっとここ(ペルソナ)から出たことがないから、ここを出て勉強したいと思ったことはあるけど、白川先生みたいに行動に移せなかった。だから白川先生の考えはすごい勇気だと思っている。その勇気がきっと成長させてくれるはずです。……僕もわがまま言っていいかな? またここに戻ってきてほしい、その時は今みたいな先輩と後輩の関係じゃなく、同じ立場で小さな命を一緒に救いたい」

 この言葉で、自らの失敗をきっかけに出ていく後ろめたさを持つ白川の心がどれだけ軽くなっただろうか。原作ではもっとクセの強い今橋だが、今回は患者に寄り添いすぎる小松をさりげなく心配し飯に誘うなど、絵に描いたような「頼れる上司」だ。今回、特にそれが目立った回だった。

■今週の四宮と鴻鳥

 四宮は忙しい中、帰郷するその罪悪感からか、引き継ぎ事項を事細かく伝えようとするが、鴻鳥は、「僕は四宮ほど、患者のカルテを丁寧に書いてる産科医を他に知らない。だから心配するな」と送り出す。

 そう言われて「ありがとう」でも「すまん」でもなく、「わかった」と答える四宮。

 他にも、帰って来た四宮の報告に「うらやましいな」と寂しく言った鴻鳥を見つめる四宮もよかった。鴻鳥は父親も母親も知らずに育ったからだ。もう2人が対立することも、今シーズンは特になさそうだ。

 今回の最後、下屋が「私は絶対、2人を超えますから!」と宣言したのを受けて、

「下屋のくせに100年早い」

「でも楽しみだね」

 と、2人で肩を並べて去って行く姿は、まるでコンビで活躍する藤子不二雄やゆでたまごのようでした。

 また今回、四宮の同期である倉崎医師(松本若菜)の回想シーンにおいて、新人時代のあどけない2人も登場した。まだ四宮が心を閉ざす前で、仲が良かった頃だ。しかし、最近はその頃に近づいてきている、いやむしろそれ以上の蜜月関係にも見える。ちょっと仲よすぎな気もするので、もうひと波乱期待したい。

 今回は、不育症の話を軸に、今までの展開のその後を見せたり、四宮の決断への道筋を丁寧に見せたり、患者、医師、家族のそれぞれのドラマを描くなかなか入り組んだ脚本で、見ごたえのある回でした。ラストスパートに期待しましょう。
(文=柿田太郎)

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