不完全燃焼かと思いきや心地よいラスト!『先に生まれただけの僕』そのワケは、櫻井翔の爽やかさ?

不完全燃焼かと思いきや心地よいラスト!『先に生まれただけの僕』そのワケは、櫻井翔の爽やかさ?

日本テレビ系『先に生まれただけの僕』番組公式サイトより

 嵐・櫻井翔が私立高校の校長役を演じるドラマ『先に生まれただけの僕』(日本テレビ系)も今回でラスト。平均視聴率9.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録し、前回から1.4ポイントアップしての幕引きとなりました。

 前回の終了間際、鳴海涼介(櫻井翔)はフィアンセの松原聡子(多部未華子)から突然の別れを切り出され、出向元・樫松物産の専務・加賀谷圭介(高嶋政伸)からは会社に戻るか退社して校長職を続けるかの二者択一を迫られ、窮地に陥ってしまいました。

 聡子にメールも電話もつながらず、これまでほったらかしにしていたことを悔やむ鳴海。一方、学校では前回から取り組み始めた受験生を増やすための活動がうまくいかず、公私ともに停滞してしまいます。

 そんな鳴海の姿を見かねた副校長・柏木文夫(風間杜夫)は、将来性を考慮するならば本社に戻るべきだと助言。鳴海自身もその方が得策だと考え、聡子に直接会いに行き、本当はクリスマスにサプライズで渡す予定だった婚約指輪を見せてプロポーズ。そして、本社へ戻る決心をしたことを伝えるのです。

 しかし、京明館高校に愛着が湧いてしまった鳴海は、加賀谷に本社復帰を申し出る踏ん切りがつきません。そんな中、前回から教師たちが行っていた、受験生の個別相談受け付けのチラシ配布を生徒たちが自主的に手伝っていることが発覚。京明館高校を改革しようという鳴海の熱意が、いつの間にか全校に浸透していたのです。

 生徒たちの意識の変化に驚き、喜んだ鳴海は、改めて教育にやりがいを感じます。商社マンとして働いていた頃は、仕事を円滑に進めるためとはいえ時にウソをつく必要があった。しかし、教育現場ではウソは通じない。生徒たちと真正面から向き合わなければならない。そして、「正直でいられることがうれしかった」ことに気づき、校長職にとどまることを決意。加賀谷の机に社員証と社章を置き、その足で聡子の元へ向かい、本社に戻らないことを告げた上で再度プロポーズ。それに聡子が承諾してくれたため、鳴海は胸を撫で下ろすのでした。

 そして月日が流れ、受験シーズンも無事に終えて季節は夏に。鳴海は夏休みを迎える生徒たちに対して、常にあがきながらも様々なことを経験し成長していくことが大事だとアドバイス。校長としての佇まいもすっかり板につき、京明館高校の前途は明るいと感じさせる雰囲気でドラマは幕引きとなりました。

 さて感想ですが、前々回あたりから鳴海と聡子、そして現代社会の教師・真柴ちひろ(蒼井優)との三角関係がクローズアップされるようになり、“元・エリート商社マンが不採算・高校を再建する”という本道から外れがちになってしまったため、納得のいく締めくくりになるのか不安を感じていました。

 今回に至っても序盤は恋愛色が強く、イルミネーション輝く中で鳴海がプロポーズしたシーンは、こてこてのラブストーリーを見ている気分でした。また、保健養護教諭・綾野沙織(井川遥)を交え、聡子とちひろの3人で酒を飲みながらガールズトークを繰り広げる場面は、結婚に行き遅れた女性たちが主人公の別のドラマを見ているような錯覚に陥ってしまいました。

 同シーンでの、鳴海と聡子の結婚を知った時のちひろの切ない表情、そこから一転、酔っぱらったフリをして聡子に絡んでいき、それに対する聡子の敵意を抑えようとしつつも抑えきれないバチバチ感は見ていて楽しかった。今後、泥沼の三角関係を描いたドラマで多部と蒼井の共演を見てみたいとは感じましたが、少なくとも今回のドラマに恋愛のいざこざは不要だったと思います。

 そんな恋愛騒動にガッツリ時間が割かれただけに、このまま不完全燃焼で終わるのではないかと危惧したのですが、鳴海が聡子との結婚と校長職の継続を決断後、時の経過は早かったものの後味の悪くない終わり方を迎え、逆に少し驚いてしまいました。

 気持ちの良い着地ができたのは、ラストの演出と編集の妙なのか。あるいは夏という季節と櫻井翔の爽やかさがもたらした雰囲気がそう錯覚させたのか。思い返してみると、鳴海が具体的に行った改革といえばアクティブ・ラーニングの導入ぐらいなもので、それぐらいならエリート商社マンでなくても考えつくレベルです。

 ただ、鳴海は京明館高校に赴任後、生徒たちと真正面から向き合い、その場しのぎのウソをつかず、社会経験を積んだ分ほんの少しだけ生徒たちよりも目線の高い“先に生まれただけの僕”という立場を貫いて、真摯に校長職に臨んでいたことは事実。このスタンスだけに限れば、従来の学園ドラマにはあまりなかったものだと思います。本格的な再建はまだ果たしていないものの、鳴海校長ならこの先きっとやってくれる。そんな雰囲気が画面から伝わってきたため、心地よいラストになったのではないでしょうか。
(文=大羽鴨乃)

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