今夜最終回!『コウノドリ』が描いた「新型出生前診断」の苦悩と“決断”の行方は……?

今夜最終回!『コウノドリ』が描いた「新型出生前診断」の苦悩と“決断”の行方は……?

TBS系『コウノドリ』番組サイトより

 周産期母子医療センター(出産の前後を通し、産科と新生児科で連携した医療体制のとれる病院)を舞台に、医師や妊婦の喜びと悲しみ、生命の誕生の素晴らしさや難しさを描く医療ヒューマンドラマ『コウノドリ』(TBS系)。

 残すところあと2回となり、クライマックスを迎えた第10話は11.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、やや下落。しかし最終回に向かって細部までかなり濃い、見応えのある内容。振り返ります。

 

■新型出生前診断とは

 

 高山透子(初音映莉子)とその夫・光弘(石田卓也)は、親に言われてさほど考えず受けた新型出生前診断(NIPT)により、生まれてくる子に21トリソミー(いわゆるダウン症候群)の陽性反応が出ていることを知る。しかし、その診断を受けたクリニックに電話で問い合わせても、郵送で結果を送りつけた以上の説明は行っていないようで、親身になってくれない。慌てた2人は、ペルソナの周産期センターにやってくる。

 産科医の鴻鳥(綾野剛)は、確定のためには羊水検査が必要であることだけでなく、その結果を踏まえ、どう受け止めていくか考えてほしいと伝える。

 新型出生前診断とは、21トリソミーを含む3つの染色体の疾患を調べることができる検査で、採血だけで手軽なため広まってきているが、結果のみを突きつけられて親が不安になったり、その後ちゃんとした診断を受けず安易に中絶を希望するケースも増えるなど、賛否あるようだ。ちゃんとケアしているところもあるのだろうが、わずかな手間でそこそこの金額を取れるので、診断を行う側にうま味があるのだろう。

「きちんとした遺伝カウンセリングを行わず、出生前診断を行う医療機関があるのは問題」「出た結果だけを伝えて、あとの判断を患者の丸投げするなんて」と、産科医の四宮(星野源)もかなり否定的だ。

 医師の間でも意見は分かれるようで「たった10ccの血を採って検査すればいいって気楽さが、そういう親(すぐ中絶希望)を生んでる」という反対派の急先鋒・四宮に対し、「罪悪感・嫌悪感を抱く人が多いですけど、親になる前に我が子の情報を集めるのは悪いことなんでしょうか」「もっと生まれてくる我が子の情報を知る権利について理解してほしい」と産科医・倉崎(松本若菜)は疑問を呈する。

 四宮は、その権利は当然だとしながらも「だが、その情報を知った後でどうするかを決めずに、出生前診断を行うのは無責任だ」だと言う。

 この四宮論と倉崎論が、世の新型出生前診断に対する反対派と賛成派の意見なのだろう。ソーシャルワーカーの向井(江口のりこ)も「赤ちゃんが置いてけぼりにならないように、夫婦できちんと話し合ってほしい」と安易な決断に慎重な意見を述べる。

 鴻鳥は、検査結果を受けての中絶についても「ご家庭の事情もあると思います、お2人で現実に向き合って決めていくことになります」とし、「僕たちはどんな結論になっても高山さんの決断を支えていきます、これからのこと一緒に考えていきましょう」と不安がる夫妻に向き合おうとする。

 

■もう一組も21トリソミーが発覚

 

 そして今回もう一組、辻明代(りょう)、夫・信英(近藤公園)夫妻も、ペルソナでの羊水検査でお腹の子どもに21トリソミーが発覚。こちらは悩みつつも中絶を希望している。

 夫婦で小さな稼業(お弁当屋)を営んでいたり、手のかかる小さい長女がいたりして、疾患を持つ子どもを抱えきれないというのがその理由だ。

「疾患のあるお子さんを育てる自信が最初からあるご家族なんていないと思います」「人がそれぞれ違うように、ダウン症のあるお子さんも一人一人に個性があります。育ててらっしゃるご家族にも、それぞれの思いがあるでしょう」と、中絶だけでない道も示す新生児科医・今橋(大森南朋)。

 しかし、「私たちがいなくなったあと、あいり(長女)に全部任せるなんてできないよ」と苦渋の決断をする。

 おそらく辻夫妻が上げたこれらのいくつかの理由が、中絶を選んだ人々に多くある理由なのだろう。

 

■ここだけドキュメント

 

 そして妊婦ではないが、たまたま長男の風邪の診察でペルソナに来ていた木村弓枝(奥山佳恵)が、次男とともに登場。同じくダウン症候群の次男を育てている弓枝だが、いろいろな人やデイケアなどの力を借りて仕事復帰していると明るく語る。

 実は奥山自身が同じ症状を持つ子どもの母親である。その奥山が「(新型出生前診断では一部の染色体疾患だけしかわからないのに)なんでこの子たちだけが弾かれるの?」「このまま生まれる前に検査するのが当たり前になって、どんどんダウン症のある子いなくなっちゃうんじゃないかなって……」と語る様子は、リアルな気持ちがこもっており、このキャスティング自体、実生活を踏まえてのものだろうから、セリフ(言葉)にも本人の気持ちが強く反映されているのだろう。こういうある種「ドキュメント」のようなドラマの作り方には賛否あるだろうが、それだけリアリティを大事にしているのだろう。

 

■苦しむ母親たち

 

 高山透子の羊水検査の結果は、21トリソミー・ダウン症候群。どうしていいか、まだ頭がついていかない透子に、夫も、双方の親も、子どもを諦めるように勧める。みな、苦労させたくないからという意見だ。

 しかし、なかなか子どもができず不妊治療を受けていた透子は割り切れない。果たして自分に育てられるのか? という葛藤。

 そんな中、知的な発達の違いや心臓病、呼吸器疾患の可能性、生まれてからも数回手術が必要な可能性があることなどと共に、「ただ、ダウン症のある子どもたち自身は、悩まずに幸福を感じて生きていけることも多いというデータがあります」と伝えられた透子は、うれしそうに見えた。

「……そうなんですか?」と何気ない言葉の中に、希望が芽生える瞬間が見える、いい表情。やはり、産みたいという気持ちが滲み出ていた。だからこそ悩みが深い。

 一方の辻明代。

 中期の人工中絶は、身体だけでなく心にも負担がかかるという鴻鳥の言葉など、周囲の心配に対し「私のことはいいんです」「大丈夫です」「我慢できます」と、自らを罰するかのように、苦しさを受け入れようとするのが印象的だった。

 布団の中で「お腹、蹴ったの……」と夫に報告する姿からも、決して望んで中絶するわけではないからこその苦しさが溢れていた。

 次の日、誘発剤を使っての苦しそうな処置の最中、「最後、この子、抱いてもいいですか」と頼む明代。その気持ちを案じ「わかりました」と笑顔で答える鴻鳥。

 無言で何も言わない(言えない)夫・信英の顔が、複雑な気持ちをよく表していた。

 その日の夜、抱っこした時の感想を「すごく小さくて暖かかったと」と涙ながらに語る明代の体を、無言でさすり続ける小松(吉田羊)。7話で子宮腺筋症のため子宮を摘出してる小松はどんな気持ちだったのか。

「寄り添うの、大切なあたしら(助産師)の仕事だよ」と、友人でもある同期の助産師・武田(須藤理彩)が語っていたが、それをひたむきに実践しているようにも見えた。

 

■決断

 

 産みたい気持ちが日増しに大きくなってきている高山透子。

「父さんや母さんがこう言ったからじゃなくて、私たち夫婦で話し合って決めたいの。どんな結論になってもいいから2人で一緒に考えようよ」と夫・光弘に訴える。

 中絶の意思を伝えに来た際も、エコーを見たいと言い出し、光弘は困惑する。

「今回は諦めよう、次は……っていうけど、それはこの子には関係ないよ」

 検査や診察が進むたびに、夫婦間での認識の差が浮き彫りになってきて、透子の気持ちに改めて気付かされた光弘は「ごめんな、最初に出生前診断を受けた時、俺たちには関係ないって思っていた。だけど子どもを持つって決めた時から、本当は関係ある話だったんだよな」「2人で出した結論だから、お前だけが背負う問題じゃないから」と、透子の苦しみに理解を示すようになる。

 そして中絶手術の日、直前で透子は「産みたい……」との気持ちが溢れ出し、膝をつき泣き崩れる。

「でも、怖い。自信がない……でも……」どうしようもなくなった透子に、実母が声をかける。

「大丈夫。あんたがへばっても母さんが一緒に育てる」

 それを聞き、安心したように、さらに涙を流す透子。おそらく夫からその言葉を聞きたかったのだろうが、それを見て光弘は、初めて透子の産みたいという気持ちの大きさを見誤っていたことに気づく。

 透子の気持ちを理解したつもりが、まだ理解できていなかったという展開。

「昔だったら救えなかった命が、医学の進歩で救えるようになった。それは喜んでいいことかなと思う。だけど、命が救えるようになったからこそ、苦悩する家族だっている。命を救うって、どういうことなのかな」

 これは今橋が新生児科医・白川(坂口健太郎)に語っていた言葉だが、今回のテーマの難しさを表していると思う。

 まだ透子が(夫主導で)中絶で話を進めていた時、やはり辻と同じように最後に子どもを抱っこしてあげたいと言っていた。

 その感情が理解できない、と研修医の赤西(宮沢氷魚)は言う。今後、出生前診断がメジャーになり、中絶が当たり前になった時、医師としてどう向き合えばいいのかわからないと。この時、赤西に向かって(というか全員に向かって)鴻鳥が言っていた言葉を、少し長いが書き出してみる。

「その質問の答えは僕にはわからない。命は尊い、赤ちゃんが生まれてくることは奇跡だ。平等であるはずの命を選別してはいけない、その通りだ。けど、僕はずっと迷ってる。命を選別、その言葉にみんなが囚われてしまっていて、お母さん、お父さん、家族の事情に目が向けられていない。それぞれの事情の上に命は生まれてくる。育てていくのは家族なんだ。出生前診断を受けた結果、中絶を選択する家族もある。心が重くなる。いつまでも慣れることはない。けど悩みに悩んだ上で僕たちに助けを求めてる。その手を払いのけることはできない。中絶を決めたお母さんが赤ちゃんを最後に抱きたいと願う。確かに矛盾してるかもしれない。だけどその葛藤に僕らが寄り添わないで、誰が寄り添う。検査を受けた人、受けなかった人、赤ちゃんを産んだ人、産まなかった人、どの選択も間違っていない。いや、間違ってなかったと思えるように、産科医として家族と一緒に命と向き合っていく。それが僕に、僕たちにできることなんだと、そう信じて僕はここにいる」

 もう、ぐうの音も出ないほどの「正解」を語る鴻鳥。舞台なら長台詞で拍手が起こるシーンだ。産科医として日々「中絶」という難題と格闘しているのがよくわかる。

 

■白川問題

 

 自分の力不足を痛感し、ペルソナを出て小児循環器を学び直したいと決断した白川。

 その面接で「どうして小児循環器科医として学び直したいのか」と問われた白川は、「新生児科に尊敬する先生がいます。その先生のような新生児科になることが恩返しではない。別の知識、技術を身につけて一つでも多くの命を救えるようになりたいんです。そのためなら研修医からやり直したってかまいません」と語る。

 その際「尊敬する先生って今橋先生でしょ? ずいぶん大きな目標だ」と言われ、思わず嬉しそうに微笑む白川。

 前日「NICUを卒業することがゴールじゃない。そのあとに続く赤ちゃんとご家族の人生に寄り添いたい。それが俺たちの仕事の目標だって、今橋先生が教えてくれました」と今橋に直接語っていた。

 自身過剰で危なっかしい白川はすっかりなりを潜めたようで、それはそれで少し寂しいが、今橋という大きなお手本を持ったことで以前のように彼が自己顕示欲にとらわれ、道を踏み外すようなことは無さそうだ。

 

■父の死

 

 父親の今後の話をするために、四宮の妹・夏実(相楽樹)が能登からやってきた。ステージ4の肺がんである四宮の父から渡すように頼まれたという「ヘソの緒」を手渡す。

 それを聞いた小松は「昔は女の子はお守りお嫁に行く時に渡されたり、戦争に行く時に持たされたりしたんだよね。あとは亡くなった時に、棺桶に入れてもらうと天国で迷子にならずお母さんに会えるとかね。お父さんの気持ちだね、しのりん(四宮)を守ってくれますようにって」。

 死を覚悟した父親から息子への、もの言わぬ「土産」。四宮は特に言葉を語ることはなかったが、何度か容器に入ったそれを眺めながら物思いにふけっていた。容器はもちろん輪島塗だ。

 そんなある日の勤務中、妹からの電話で父の死を知る四宮。しかし直後に緊急搬送の手術が入る。感情を殺して手術を終えた後、三たび故郷へと立つ四宮。

 

■今週の四宮と鴻鳥

 

 四宮が訃報のため再々度帰郷することになり「迷惑かけるな。カルテは……」と言いかけた瞬間に「大丈夫だ」と、すぐ送り出そうとする鴻鳥と「そうか」と受ける四宮。

 励まそうとしたのか「四宮……」と言いかけた瞬間、今度は負けぬ速さで「大丈夫だ」と答える四宮。武道の達人のようなやり取り。

「ペルソナのこと、頼むぞ」と伝える四宮が、いかに鴻鳥を信頼しているかがわかる。

 辻夫妻の中絶手術を終えたあと、一人佇む鴻鳥に、そっと暖かい飲み物を供する四宮。

 カンファレンスにて、中絶に対する苦悩や思いを熱く語ったあと、多くのスタッフの前で我に返り「すみません関係ない話をして」と謝る鴻鳥に、「関係なくない。必要な話だろ」とすかさずフォローを入れる四宮。

 危機が多ければ多いほどお互いを理解し、支え合う姿が目立つ。

 次回、最終回。高山夫妻の出産や、今回も登場していた小松の友達であり同期の助産師・武田を襲う危機など、最後まで詰まった内容。能登へむかった四宮や、その四宮の父親の訃報で曖昧になってしまった、小松が鴻鳥に伝えようとしていた内容も気にかかる。心して待ちたい。
(文=柿田太郎)

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