「別れさせ屋」「スクープ記者」を完全再現!『99%ノンフィクション』で、逆に浮かび上がった“狩る側のリアル”

「別れさせ屋」「スクープ記者」を完全再現!『99%ノンフィクション』で、逆に浮かび上がった“狩る側のリアル”

テレビ朝日公式YouTubeチャンネルより

 23日深夜、テレビ朝日で、少し変わったタイプのドキュメンタリー(風)番組が放送された。『99%ノンフィクション』と題されたこの番組は「ワケあって世間に顔を出せない人物を役者が演じ、その実態を完全実写化するというノンフィクションに限りなく近いドキュメンタリー番組」とのこと(MC談)。

 あえて雑に言わせてもらうならば、顔を出せない特殊なプロフェッショナルたちの仕事っぷりを、多少豪華な役者を使って再現VTRにして見せる番組だ。

 しかし、この番組が他の再現ものと違うのは、プロフェッショナル本人から「再現VTR」の元となるエピソードを聞き出すインタビュー取材の部分も役者が再現をし「密着ドキュメンタリー風」に演じて見せるというところだ。最近日本でも増えてきたフェイクドキュメンタリーの一種と言えるかもしれない。

 役者は、元となる取材映像を事前に「顔出し」で見ており、それに寄せて役作りをしているので、普通はモザイクがかかるはずの表情がわかり、見やすくなる。

 同じように顔出しできないディープな状況の人物を紹介する番組『ねほりんぱほりん』(NHK Eテレ)が、対象をぬいぐるみとしてキャラクター化し、表情を見えるように(見えているかのように)したのに対し、この番組は影武者に対象を演じさせ、模倣とはいえ本物の表情を与え可視化した。

 そして、ネタ満載な職種にもかかわらず、過剰な演出やドラマ仕立てにはあえてせず、どちらかというと、その変わった仕事内容を淡々とドキュメンタリータッチで見せることで、その特殊性を浮き立たせ、さらにそれらを当たり前のように語る人物そのものに焦点が当たるようになっている。

 今回焦点が当てられたのは、2組の特殊なプロ。

 

■数百組の男女を別れさせた「別れさせ業」工作員

 

 この仕事は、依頼されたターゲットに近づき、男女関係を壊すプロ。「別れさせ屋」という仕事があるとのウワサくらいは聞いたことがあるかもしれない。多いのは不倫や浮気がらみの案件で、今回もある妻(依頼主)からの、「夫が不倫してるから相手の女性と別れさせて、元の結婚生活に戻してほしい」という依頼。

 探偵や興信所なら実態を調査し、報告して終了なのだが、「別れさせ屋」は実際にターゲットに接触、あの手この手で「別れさせ」を実行、もちろんそれが依頼主の差し金であることに気付かれることなく秘密裏に行わねばならない。

「依頼主から吸い上げた情報を元にして、対象に合わせた効果的な作戦を立て、私たち工作員が近づいて……」

 女優・相楽樹は、この工作員歴7年だという橋本未来(仮名・27)になりきってインタビューを受け、取材されているがごとく仕事内容を説明する。

 このあと実際に、どのようにターゲット(夫)に接触し、不倫相手と別れさせたかという手口が、インタビュー取材を元にした「密着ドキュメンタリー風」で再現されるのだが、相楽演じる橋本以外にはモザイクがかかったり、時に隠しカメラの映像っぽく撮影するなど、リアルな臨場感がよい。

・ターゲット(夫)と不倫相手の女性がデート中のスポーツバーに入店、試合の盛り上がりに乗じて、さりげなく会話する(ただし女性側としか話さない)

・後日、その女性だけを誘って飲みに行き、そこに仲間の工作員である男性(おそらくイケメン)を連れて行き、その女性とくっつくように仕向ける

・その女性の気持ちを完全に工作員の男性に向けさせ、ターゲットの夫から「剥がす」ことで、夫は妻のもとに戻る

 という段取りらしい。

 途中途中で、実際に橋本本人が取材で語った内容を、相楽がなりきって語る様子が差し込まれたりして、まさにドキュメンタリーぽい。

「これって今回は失敗なんですか?」

「いえいえ、全然失敗じゃないですよ、私、今まで失敗したことないですから。大門未知子(ドクターX)じゃないですけど(笑)」

「女性としか話してませんでしたよね?」

「だって今回は女性の方と仲良くなる目的だったんで。今回、私は橋渡し的な、つなぐ役割ですね」

 冗談の入れ具合が生々しいのは、まさに本人がインタビューで語ったままを台本に入れ込んでいるからだろう。時折、本人(モザイク付き)のインタビュー取材時の映像も差し込まれるが、同じようなことを言っている。

 他にも、元彼がストーカー化し、いわゆる「リベンジポルノ」で脅してきて復縁を迫って来るという厄介な案件では、その元彼に女性(橋本)がさりげなく接触、本気で好きにさせてから、その後「橋本が嫉妬し、怒ったフリをして」依頼主の写真などを消去させるという手口が紹介される。『インファナル・アフェア』(2002)も真っ青な潜入捜査だ。

 単に「警察に行けば?」との意見もあるかもしれないが、見られたくない写真を証拠として警察に提出したくなかったり、警察が動くことで元彼にヤケになって写真をばら撒かれたりすることがないようにしたいので、別れさせ業に依頼してくるケースが少なくないという。その手口も生々しい。

・自転車のチェーンが外れたフリをしてうずくまり「たまたま」通りかかった「元彼」に助けを求め接触

・背後から近づいてくる「元彼」にタイミングよく振り返り声をかけられるよう、仲間の工作員が車からハザードで合図を出す

・その時はあえて連絡先を聞かず、後日偶然を装い仕事帰りに「たまたま」再会し、「運命」を意識させる

・写真を消去してしばらく後、また別の女性工作員が「元彼」に近づき、親密になり橋本とは別れる、こうやって依頼主の存在をどんどん過去に追いやってから、完全に別れる

・依頼料金は1件につき数十万から

 そして、もう一組の顔出しできない人物の仕事とは……。

 

■現役の芸能スクープ記者

 

 こちらは先ほどの別れさせ業に比べると想像しやすく、ある意味「身近」な職種なのかもしれない。しかし、記事になる前の細かい様子は、さほど知られていないだろう。

「今日はね、クラブへ行こうかと思って、うん、実は某有名俳優が女遊びしてるってウワサがあって、今からその現場を確かめてみようかなって」と、記者歴11年の現役記者・下山明雄(仮名・35)に扮して語るのは役者・福士誠治。

 信頼できる協力者(女性)とクラブに行き、VIPルーム付近で取り巻きにナンパされるように協力者に指示、見事に協力者はナンパされ、ルーム内に潜入。ターゲットの俳優の女遊びの有無を確認する。

 先ほどと同じく、これをこっそり密着取材してる風に再現化。そこにリアルな情報を散りばめる。

・メイクやスタイリスト系の人はネタ情報の宝庫。競合タレントを失墜させるため、他社マネジャーからもネタが入る

・通話のふりしてスマホで撮影、車のワイヤレス・キーに見立てた隠しカメラで撮影などの手口紹介

・各編集部によって触れられないネタがあるので、他の編集部に売ることも

・ヘルメットと作業服を車内に置くことで、張り込み中に警戒されにくくなる

・撮られたタレントの事務所との駆け引きで、ちゃんとしたメイクやスポンサーに配慮した持ち物で撮り直しすることもある(スマホやドリンクなどのCMに出演している場合)

・大きいスクープで1本15万から20万の報酬(経費やカメラマンへのギャラはそこから捻出)

 別の案件では、男とホテルで密会しているある女優への突撃取材中、わざと仲間割れのごとくカメラマンと揉め出し、撮影をやめるよう指示、さも自分は味方のような顔して接することで相手の態度を軟化させ、自分にだけ真相を語らせる手法も再現されていた。

 この手口は、取り調べなどでもよく用いられる懐柔術だが、編集部によっては遠くから刺激しないように撮影するなど、それぞれ方針が異なるという。

 

■他人の人生を動かせるという力

 

 別れさせ業の際にも言った通り、要所要所で、顔にモザイクのかかった「プロフェッショナル」本人の取材映像が、わずかながら盛り込まれており、その本人テイストを垣間見せつつ、役者演じる再現を見せる。

 両者を見比べても、髪をさわる癖だったり、しゃべり方だったり、外見的な部分を役者が意識的に演じていることがわかるのだが、今回もっとも印象的だったのは、どちらの本人映像からも、その「業績」を語っている快感のようなものが垣間見られたこと、そしてその点だけは演技のプロである役者の芝居が追いついていなかったことだ。

 これはもちろん想像だが、どちらの「本人」も「人の人生を手玉に取れる」「自分次第で他人の生活に大きな影響を与えられる」という性質が強い行為を生業としているため、お金以上の喜びをもって働いていると思われる。

 仕事柄、おおっぴらに「語る」ことが許されない立場だけに、禁断の「語り」を許可され、しかもその「業績」を面白がり、ありがたがってくれる状況下で、その快感に酔う姿がより多く映し出されてしまったのではないか。

 記者の方(本人)にいたっては「スクープを撮ることはセックスよりも気持ちいいと思っている」と明言していたほどだ。

 しかも、他人の生活を手玉に取れるほどの「力」を持つ仕事をしていながらも、自分自身にスポットが当たることには慣れていないため、普段の職務中には出さないであろう「自分」へのガードが下がる。

 MCやゲストの芸能人(バカリズムや伊集院光など)も、多分に「影響力」や「快感」を持ち合わせる仕事である。

 だが、彼らは同時に「見え方」に対する警戒心や、チヤホヤされながらも、むしろ「狩られる側」であるという認識も強く持ち合わせているはずだ。

 以下は、別れさせ業の橋本(本人)がこの仕事をしていての罪悪感を問われた時のインタビュー受け答えと、相楽が演技でそれを模した受け答えだ。

・相楽演技「……でもあまあ、仕方がないですよね……世の中の人たちって、全員が全員ハッピーでいられるってことは、そんなにないと思うんですよ……」

・橋本本人「仕方がないですよね。それで成り立ってる世の中なんで、全員がハッピーで回ることは無理だと思います」

 ちょっとした匂いの違いが気になった。

 相楽の芝居の甘さと言ってしまえばそれまでだが、芝居では出せない、この仕事を経験しているからこそ特有のアクのような、自信のようなものが断定口調の中から沁みでていた。

 同じくこの仕事への罪悪感の有無を問われたスクープ記者(本人)は、

「撮られるようなことを、まずするな!」

「自分自身で罪悪感を感じろっていう風に(芸能人に言いたい)」

 と強い口調で断言。そう思っていないとできない仕事なのだろうし、むしろ意図的に自身を鼓舞しているのかもしれない。

 役作りのため記者本人の「顔出し」インタビュー映像を見たという福士は、スタジオでのアフタートークで「ほんのちょっとだけなんですけど」と前置きしながらも「腹立たしいんですよ」「狩る側で、追われてる側じゃないんで、態度も大きめ」だとコメント。確かにそれを踏まえ意識して演じていたようだが、比較するように挿入される本人部分と見比べると、残念ながらその「腹立たしさ」は本物より劣ってしまっていた。

 おそらく役者のなりきりぶりを対比させる尺度として「本人映像」は差し込まれたと思うのだが、結果的にはオリジナルの持つ、模倣しにくいアクのようなものを際立たせる結果となった。

 本人のみの従来のドキュメンタリーだとしたら、さほど気にならなかったかもしれない部分だけに、興味深く見せて頂いた。この企画は『笑×演』の特別枠としてお試し的に放送されており、これ自体を番組化するのかはまだわからないが、次回からも演じ甲斐のあるアクの強い「ご本人」に登場して頂きたい。
(文=柿田太郎)

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