「たまたま生きてる私たち……」大杉漣の急死に立ち会った松重豊が演じる所長のセリフが感動的『アンナチュラル』

「たまたま生きてる私たち……」大杉漣の急死に立ち会った松重豊が演じる所長のセリフが感動的『アンナチュラル』

TBS系『アンナチュラル』番組サイトより

 石原さとみが法医解剖医役を演じるドラマ『アンナチュラル』(TBS系)の第8話が2日に放送され、平均視聴率10.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。前回から1.2ポイントアップとなりました。

 ある日、雑居ビルで火災が発生。10体もの焼死体が不自然死究明研究所(通称・UDIラボ)へと運ばれてきます。遺体はいずれも丸焦げ状態で身元不明。三澄ミコト(石原さとみ)は、これまでの経験上、「他殺体が紛れ込んでいる可能性がある」と考え、慎重に解剖を進めていきます。

 すると案の定、1体だけ後頭部に殴られたような痕、腰にロープで縛られたような痕があるのを発見。その遺体の身元が、前科者の町田三郎(一ノ瀬ワタル)であることが判明したことや、火災事故の唯一の生存者・高瀬(尾上寛之)の背中に横一文字にロープで縛られた痕があることから、殺人事件の可能性が浮上します。

 三郎の遺体に直面した父・雅次(木場勝己)は、三郎のせいで火災が発生し、関係のない人々を巻き添えにしたのだと決めつけ、息子を罵倒。その姿を目の当たりにしたUDIラボのアルバイト・久部六郎(窪田正孝)は、医者一族の中で落ちこぼれ扱いされている自身と三郎との姿が重なり、死者の尊厳を取り戻すために事件の真相追求を決意します。

 奇しくも、生存者・高瀬が入院しているのは、父・俊哉(伊武雅刀)が勤める病院。三郎は、“医者以外、人間じゃない”という極端な偏見を抱く父親に冷遇され、肩身の狭い想いをしつつ高瀬の意識が戻るのを待ちます。

 一方、三郎の遺体に残ったロープ痕の究明に取り掛かっていたミコトは、それが“子豚搬送”という消防士が被害者を救助する際に用いる縛り方であることを突き止めます。さらに、火災の原因は、ビル内のスナックで映画上映していたプロジェクターの発火によるものだったということが発覚。そして、後頭部の殴打痕については、スナックのドアを開けた瞬間、強烈な爆風に吹き飛ばされ、階段の手すりに頭を打ち付けたことによるものだということも判明するのです。

 また、意識を回復した高瀬からは、前科のために両親に顔向けできず故郷へ帰れなかった三郎が、雑居ビル内のテナントの店員や常連客を家族のように想っていたという証言を得ます。以上のことから殺人事件の可能性は消え、火災発生時、三郎は一酸化炭素中毒で倒れている人々を救助しようとしていたのではないか、という仮説が浮上します。

 その仮説を俊哉に伝えたところ、消防士である俊哉自身が昔、三郎に子豚搬送のロープの縛り方を教えたことを告白。ミコトや六郎の活躍によって、死者の尊厳と親子の絆を回復することに成功したところで一件落着となったのでした。

 今回のサブタイトルは“遥かなる我が家”ということですが、これは若い頃の度重なる親不孝の結果、故郷へと足が遠のいてしまった三郎についてだけでなく、六郎にも当てはまるワードだと感じました。

 というのも六郎は、医者のエリート家系に生まれ育ったものの3流の医大にしか進めず、現在は休学中。そのため父親からは、「敷居をまたぐな」と、勘当同然の扱いを受けてしまっている。実家は東京にあり、地方出身の三郎とは違って物理的には“遥かなる”ではありませんが、精神的にはまったく同じ境遇といえるのです。

 そして、実家以外で家族同然の存在を見つけたという点も同じ。六郎にとってのそれは、UDIラボのメンバーたちなのです。今回、終盤で父親に冷たい言葉を浴びせられた後、UDIラボに戻りミコトたちの姿を見た瞬間、涙ぐむ場面があったのですが、事件を通じて自身の“我が家”がどこかを実感したのでしょう。窪田正孝の演技の上手さと、米津玄師が歌う主題歌「Lemon」との相乗効果で、とても感動的なシーンに仕上がっていました。

 感動的といえば、UDIラボ所長・神倉保夫(松重豊)も今回はグッとくる見せ場がありました。長年連れ添った妻の急死を受け入れられず、遺骨の受け取りを拒むヤシキ清(ミッキー・カーチス)という老人に対して、「たまたま生きている私たちは、死を忌まわしいものにしてはいけない」と説得するシーンがあったのですが、いつもはおとぼけ演技をしているだけにギャップがあり、胸に迫るものがありました。

 また、松重は先月21日、俳優・大杉漣が急性心不全で他界した際、その場に居合わせたとのことで、その事実を重ね合わせるとそのセリフにはさらに重みが増しました。ドラマの撮影は大杉さんが急死する以前におこなわれたのでしょうが、なんだか関連付けずにはいられない印象的なシーンでした。

 そんな六郎や神倉ら脇役陣を引き立たせているのが、主役・石原さとみの抑えた演技ではないでしょうか。残すところあと2話となってしまいましたが、同ドラマは人気シリーズ化し、石原にとって代表作になる予感がします。
(文=大羽鴨乃)

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