「第三者」の思いがあふれてくる――ドラマ『パーフェクトワールド』第3話

「第三者」の思いがあふれてくる――ドラマ『パーフェクトワールド』第3話

フジテレビ系『パーフェクトワールド』ドラマ公式サイトより

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 恋愛ドラマにおいて、第何話あたりで主人公の恋が成就するかというのは、その先の展開を予想する中で重要な問題だ。

 最初から「付き合っている」という設定であれば、今後、ライバルが出現し、別れたりよりを戻したりという展開だろうし、中盤までいっても気持ちのすれ違いが続くようであれば、その「焦れる気持ち」を楽しむものだなと心構えができる。

 体感的なものではあるが、接近や誤解などを繰り返して、最後の最後に思いが通じるというのが多いパターンであり、王道といえるだろう。2人の恋が成就するのを見届けて、ハッピーエンドを迎えるのは、見ている方も気持ちよく物語を締めくくることができるというものだ。

 ドラマ『パーフェクトワールド』(フジテレビ系)では、第2話の終わりで、主人公の2人は気持ちを確かめ合い、“恋人”になってしまった。この展開は実に早い。この流れから、二つの意味合いを読み取ることができる。

 一つは、先に挙げた、“2人の気持ちのすれ違いによるエピソードを描く”といった波乱の展開である。それぞれに想いを寄せる人物の存在もあり、どんな関係性になっていくかは、興味深いところだ。

 もう一つは、“恋人となった2人が、文字通りの「障害」をどう乗り越えていくかを描いていくか”という点だ。恋人として、そして結婚した場合は夫婦として、その障害とどう向き合っていくのか、さらには、それぞれの家族の問題、職場の問題など、普通に生活していたら気づかないことを広く世の中に知らしめるという意味で、意義のあるドラマになっていくことだろう。

 

“恋人”となった2人だが……

 前回のラストでお互いの気持ちを確かめ合い、晴れて“恋人”となったつぐみ(山本美月)と樹(松坂桃李)。2人の交際は、職場でも知られるところとなり、周囲も温かく見守ってくれていた。

 休みの日、2人は江ノ島にデートへ出かける。つぐみは樹のために手作りのお弁当を用意し、樹はつぐみのためにプレゼントを用意する。お互いの相手を思いやる気持ちが見ていて微笑ましい。

 プレゼントのネックレスを受け取ったつぐみは言う。「大事にするね」。そして樹もつぐみに言うのだ、「大事にする」。もちろん、これはつぐみ自身のことを大事にするという意味だ。

 その頃、つぐみの妹・しおり(岡崎紗絵)は、レンタル彼女のアルバイトをしていた。そして、彼女を指名したのが、樹の同僚でもある晴人(松村北斗/ジャニーズJr.・SixTONES)だった。仕事とはいえ、デートを楽しんだ2人だったが、ふとしたことから、晴人が義足であることを知り、しおりはあからさまに嫌悪感を示す。

 もちろん、ドラマであるから、障害に理解のある人とそうでない人を極端に描いているという前提はあるだろう。ただ、障害や、病気の人を見た場合、心の中でいくばくかの異質感を感じる人は多いのではないだろうか。偏見をなくすというのは、一朝一夕にできるものではない。まずは、“障害に対し差別的な認識をする人がいる”ということを考慮した上で、考えをめぐらし、世の中での感じ方を変えていくしかないのだ。しおりの存在は、私達の心にある、“差別心”を表したものだと言える。

 ゴールデンウィークになり、つぐみと樹、そしてしおりは、実家のある松本に帰省することになる。つぐみのことを過保護なくらいに溺愛している父・元久(松重豊)には、まだ付き合っていることを話さない予定であったが、樹が家まで送ってきたところを見られてしまい、本当のことを話す。

 それを知った元久は、交際に反対する。母親の咲子(堀内敬子)からも、「子供は作れるのか」と問われ、つぐみは言い返せない。理解のない父親に業を煮やしたつぐみは、「実家には帰らない。このまま東京で暮らす」と話し、東京へと戻るのだった。

 樹の家に戻った2人だったが、そこではヘルパーの長沢(中村ゆり)が待っていた。

「彼が苦しみもがいてきた姿を私は見てきた」という長沢と、「長沢さんは俺にとって特別な人」という樹の関係に、つぐみは複雑な思いを抱く。

 事故に遭って入院していた時、看護師だった長沢は樹のそばにいて、励まし続けた。そして長沢もまた、樹に“特別な”感情を持っていたのだ。

 一方、つぐみの方にも昔から想いを寄せている人がいた。幼馴染みで高校時代の同級生・是枝(瀬戸康史)だ。毎日のようにつぐみとしおりの住む家に行き、つぐみの頼みごとはなんでも聞いてきた是枝だが、樹への想いを語るつぐみを見て、思わず抱きしめてしまう。

 長沢と是枝、2人は、樹とつぐみの恋愛にとっては、あくまでも「第三者」である。ただ、私は性格上、どうしてもこの2人の心情に共感してしまう。自分が想いを寄せている人が、別の誰かを愛してしまう。その切なくもやるせない気持ちは、想いの通じ合った恋人同士ではわからないような、つらいものではないだろうか。そして、この2人には、もう一つ、「相手の障害をどう捉えるか」という問題もつきまとう。

「障害を持っているから恋愛できない」とは思いたくないだろう。ただ、結婚は? 子供は? と考えたときに、好きな相手にとって、どうするのが最善なのか、考えあぐねることは間違いない。

 そして、今回衝撃的だったのは、樹とつぐみが「性的な結びつきが持てるのか」という点だ。つぐみの母親も心配したとおり、樹はそのようなことができるのかどうか、視聴者には提示されていなかった。これまでも、ドキュメンタリーなどで障害者の性を取り上げたことはあるだろうが、ドラマで語られるのは珍しいだろう。

 結論から言えば、樹に関しては「性的な関係は持てない」だった。もちろん、障害の状況はさまざまだから、車椅子の人が全てそうであるわけではない。ただ、このドラマで「性的な関係を持たない恋人同士」が描かれた意味は大きい。

 ドラマの中でどこまで語られるのかはわからないが、性的な関係を持てなくても、例えば、人工授精を試みるとか、養子を迎えるとか、そういった話も出てくるかもしれない。

 そして、ドラマを見て最終的に考えたのは、何か一つを取り上げて、それが全てであるように思い込むのは危険だということだ。樹は、脚が動かないと知った時、自ら命を絶とうとした。つぐみの母は、子供が作れないならば結婚すべきではないと心配した。しおりは、障害を持った人を見て「無理」と言い切った。

 これらの全ては、思い込みに縛られた、狭い考え方なのだ。

 脚を動かさずに生きたっていい。子供を作らずに結婚したっていい。障害を抱えたまま誰かと付き合ったっていい。まずは「思い込み」を外して、世の中を見てみるといい。きっと世界はもう少し生きやすくなっているはずだ。

 恋愛の問題に限らない。生きていく上で何か問題にぶつかった時、思い込みを外して、見てみる。このドラマが、そんな思いに気づかせてくれるきっかけになってくれればいいと思っている。

(文=プレヤード)

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